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偽善者と策略する日々 三十三月目
偽善者と弟子特訓 その11
しおりを挟む──オリジナル魔法“新機一填”。
彼女がキメラ種騒動を経て、新たに生みだした蘇生魔法だ。
ただし、この魔法理論は非常に高度で、またその特殊性から祈念者しか使えない。
「残機システムの導入とか……いつの間に、AFOはコンテニュー有りになったんだよ」
「偶然よ。あのイベントのボスが使った能力が気になって、いろいろとやっていたら閃いただけ」
「……あー。“再起再臨”だっけ? アレ、やってることを人に当て嵌めたら鬼畜の所業だし、そのまんまやらない方がいいぞ」
「…………。いろいろと聞きたいけど、師匠これだけは訊くよ? 師匠、あのイベントの時は何をしてたの?」
「いつも通り偽善だけど?」
アルカは直接見ていなかったので、イベント終了後の戦闘映像辺りで知ったのだろう。
バックアップキメラ──父体のアレは、特殊な能力で創られたスペシャルな能力だ。
俺はそれを【暴食】で喰らうことで、希少な能力だけ獲得している。
その中に例の能力は入っていて、解析班の眷属たちによってその全貌が暴かれた。
ちなみに仕組みはシンプルで、事前に捕食した存在の魂魄を加工しているだけ。
それを祈念者が死ぬ間際に起こす死に戻り現象と組み合わせ、蘇生しているのだ。
まあ、ある意味面白い結果を出してくれたことに間違いは無いのだが。
祈念者たちに限り、その完全版を持っているのだから今さら不要な能力である。
──俺には大変価値があり、眷属のためにこっそり研究をするつもりではあるけど。
「まあ、調べた限り祈念者には何ら価値の無い能力だったしな……だからアルカ、そんな穴が空きそうなほど凝視しないでくれ」
「…………分かったわよ」
「ユウ、二人の様子も確認したから、また俺は適当にどこかに行く。すまないが、アルカの面倒を見てやってくれ」
「面倒? えっ、どういうこと?」
平然としているアルカを見て、俺の言っている意味が分からないのだろう。
だが、俺がこの場から居なくなれば分かることなので、あえて説明は無しだ。
「アルカ。それ、使うにしてもちゃんと完成させろよ」
「……使うな、とは言わないのね」
「そりゃあ祈念者でも不味いのは分かるが、そう言っても止まらないだろ? たぶん、鍵は特典だな。新規で一匹、アルカならその程度余裕だろ?」
「言ってくれるじゃない……いいわ、やってやるわよ。ただし、完成させた暁には……楽しみにしておきなさい」
全然楽しみにできないので、いかにもな感じで後ろを向いて手を振るだけに留めた。
見た感じ肯定しているように見えるが、一言も『YES』とは言っていないからな!
◆ □ ◆ □ ◆
赤色の世界 紅蓮都市
弟子とは明確に定義できないが教え子ではあるので、確認しておきたい者たちが居る場所へ転移してきた。
夢現祭りを経て、自由世界とも僅かばかりの交流が生まれた赤色の世界。
現在、世界の中心として大王が統治するこの都市に、彼らは現在住んでいる。
「先に集めてもらっているからな、アルカとの戦闘で遅れた分ぐらいは急がないと」
ただ、それを頼んだ際にウィーから頼まれたことが一つ。
正直、ヤる気は無かったが……アルカと戦い、たぶん倫理観が軽く緩んだな。
「うん、やるか──“空間開扉”」
意図して魔力を大量に出し、彼らの待つ場所に飛ぶ。
今回使ったの“空間開扉”は、向かう先に魔力の圧が生まれるのですぐに分かる。
「“泥人間”を改変して──『熔人間』」
これまたアルカと会った影響か、即興の改変をなんとなくしたくなった気分。
泥を人型にして動かす魔法の代わりに、マグマを人型にする魔法を発動。
火属性の性能が強化される世界なので、本来の魔法よりも性能はお高め。
それらを扉の先へ送り込み、しばらくただ待機……具体的には、破壊されるまで。
「って、もうかよ。いつの間にここまで強くなったんだ……まあ、会うのが楽しみだな」
なんてことを呟きながら、俺もまた扉を潜り目的地へ。
切り替わる視界、最初に映るのは──禍々しい剣気を帯びた斬撃。
「死ねぇえええええ!」
「よう、久しぶりだな──ライア」
「ぼくはお前なんかに会いたくなかった……でも、ルミンがどうしてもって言うから来てやったんだ」
「ふーん、まあいいけど。ルミンも、兄貴を連れて来てくれてありがとうな」
「は、ひゃい!」
うんうん、顔を真っ赤にしてイイ反応をしてくれるのは、赤色の『守護者』にして世界で三人しか居ない【初心者】就職者ルミン。
出会った当初はかなりの病弱だったが、今ではすっかり元気いっぱいだ。
兄であるライアがシスコン全開なので、苦労しているのは相も変わらずらしいが。
「オウシュ、ナーラも久しぶり。あれから仲の進展はどうなんだ?」
「お久しぶりです、メルスさん。その、ナーラとは──」
「ええ、久しぶりね! 順調よ順調、でも別に言う必要なんてあるかしら? ええ、無いわよね、言わなくてもいいわよね!? ワ、ワタシとオウシュは最高の仲なんだから!」
「……こっちもこっちで相変わらずだな。それが分かっただけで充分だよ」
隠そうとしているのか自慢しようとしているのか……まあ、両方みたいだけど。
苦笑するオウシュだが、最後に聞きたい言葉が聞けて嬉しそうだ。
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