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偽善者と策略する日々 三十三月目
偽善者と弟子特訓 その05
しおりを挟む闇の中、暗視スキルだけを頼りに戦いを続ける八人の少女たち。
新人三人組も暗視スキルはちゃんと最初の内に覚えさせたので、いちおうは戦える。
だが、俺が生みだした闇の暗さは尋常ではなく、通常の視界はまだ確保できない。
なのでお嬢(仮)、ござる(仮)はクラーレの補助で視界を取り戻す。
そして花子(仮)なのだが……習得していた自前の光魔法で、どうにかしていた。
暗闇耐性や盲目耐性など、目が見えない状態に対する耐性も揃えているようだ。
そうして自力ですべてを何とかしようとする辺り、あっぱれと言えよう。
だからこそ、なんでこうなっているんだろうなとも思うが……まっ、気にしないさ。
「じゃあ、次行くよ──“光速転下”!」
オリジナルの光魔法によって、俺の体は高速化する。
しかも光属性の魔法なので、修道服の効果だけでなくガーの杖の補正にもあやかれた。
「速く来ないなら、こっちから行かせてもらうよ──“恒常治癒”!」
これにて準備は完了。
超速度で動ける“光速転下”は、その代わりとして体を壊す……それを“恒常治癒”で強制的に治すというやり方だ。
最初の狙いは盾持ちのディオン。
意図して殺気を送ると、一瞬で気を引き締めて盾を構える。
「それじゃあ、まずは──」
「──“光盾”!」
「無駄──“武具包魔”」
武具に魔力を付与し、魔法に干渉できるようにする支援魔法。
それを籠めたうえで、身力操作で性能を強化──核を見定めて破壊する。
そのまま攻撃しても良かったが、間が空いたことで武技を重ね掛けされていた。
攻撃の反射もあるようだし……仕方ない、引き下がろう。
「ますたー、横槍は入れないでよ」
「メルこそ、邪魔しないでください」
「ふーん……ならいいや──“闇幕渡航”」
「! ──ノエル、行きました!」
闇の中を移動するこれまたオリジナルの魔法なのだが、霊呪を介して俺の座標を掴むことで狙いを掴んでいるようだ。
実際、狙いはござる(仮)と同じく忍者系統の職業に就くノエル。
苦無を握る彼女もまた、その職業性質から影に潜む俺の場所が分かるようだ。
「甘いわよ──“忍法:影分身”!」
「闇に沈め~──“蔓延混手”!」
暗闇を介して伸びてくる無数の触手、増えた分身体たちを絡めとるように動き出す。
すぐに回避行動を取るが、何体かの分身が捕縛されて姿を消した。
彼女本人には重点的に触手を向けていたのだが、それは分身を身代わりに躱される。
時間が経てば周りの者たちも対応に動き、触手はどんどん屠られていった。
「はい、次──“冥呼波紋”」
「させません──“煌呼波紋”!」
「ますたーは厄介だな~。でも、そろそろ他の人も試したいんだよ──“神域”」
神なる領域、その効果は多岐に渡る。
加護を持つ神の権能によって変わる効果だが、俺もまた現人神──権能はまだ決まっていないので、効果もまた未定だ。
なので意図した効果を選べる。
定めていないと性能は低いが、ほんの一瞬であれば問題ない。
「選ばれし者以外、全員排除!」
『っ……!』
「五人は頑張って結界を壊してね。身力操作で力を集中させれば……もしかしたら、できるかもしれないね。──さて、それじゃあ三人とも、いろいろ試させてもらうよ」
簡単にとはいかないが、絶対壊せないわけでもない仕様にしておいた。
だが、これで時間は充分……新弟子の力を確かめさせてもらおう。
「い、行きなさい──“操進人形”!」
「まずはお嬢ちゃんだね。そういうやり方なら、こっちは──“下位天使召喚”!」
「師よ、某とも一勝負願う!」
「うん、いいよ──“偽戦乙女”」
お嬢(仮)の人形たちには下位天使を派遣して戦わせ、向かってきたござる(仮)には自身を『戦乙女』とする魔法を掛けて対応。
天使の羽とやや神聖さを帯びた鎧を身に着け、これまた生成された槍を握る。
ござる(仮)もまた、苦無を──聞こえてくる回転音に首を捻った。
「不意打ちとはなかなかやるね……でも、それでこそ忍者だよ」
「恐縮でござる」
「手裏剣か……うん、今の祈念者ならそういうのも作れるよね。ふっふっふ、いい職人がいっぱいいるんだね」
「え、えっと……」
おっと、ついうっかり。
忍具系のアイテムって、揃えられないから自前なんだよね……それをなんとかしようとするなら、過去は自力でやる必要があった。
だが今は、それができる職人も大勢いることが証明されたわけで……うっ、嬉しいな。
井島経由の情報かもしれないな……つまりは、物語が進んでいるわけだ。
「あははは……あはははははっ!」
「な、なんですの急に……って、急に天使が強くなって──!」
「くっ、圧が……」
「うんうん、特に意味はないけど、もう少しだけ強めに行くよ──“光折鏡”!」
光を屈折させ反射させる鏡を展開。
これにより、俺が使う光系統の魔法はすべてが軌道を捻じ曲げられる。
準備はできた、ノリに乗って手を上にかざして振り下ろす。
「──“崩壊之光”!」
一度だけ目にした魔法を、魔法陣を即座に構築して強制的に発動。
すべてを分子レベルで崩壊させる漆黒の光が、彼女たちに向けられた。
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