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偽善者と策略する日々 三十三月目
偽善者と弟子特訓 その04
しおりを挟むそんなこんなで、生産班のメンバーに関してはそこまで時間も掛からずに身力操作をできるようになった。
まあ、戦闘と生産とでは求められる技術に違いがある。
じっくりゆっくりやれる分、ノルマを満たすのも簡単だったと言えよう。
彼女たちには実際に身力操作を使い、何ができるのかを調べてもらうことにした。
だいぶ分かってはいるが、戦闘向けの情報が多い……生産にも意識を向けないとな。
「さて、こっちのみんなだけど……えっと、どうなってるのプーチ?」
場所を変え、戦闘班の六人と連れてきた三人組が居る訓練場にやってきた俺。
だが、そこで見たモノは──クラーレとシガンをトップにした、激しい戦闘だった。
三人組も花子(仮)とお嬢(仮)&ござる(仮)に分かれて、それに参加している。
例外はただ一人、傍観に徹している一人の魔女だけだ。
「えっとね~……見ての通りかな~?」
「それが分からないから聞いたんだけど……グループ対抗のバトルかな?」
「それもそうだけど~、ケンカかな~?」
「ケンカ? メニューには、ただ模擬戦で操作技術を体得してほしいとしか書いてないはずなんだけど……どうしてこうなった?」
生産班の方でも強引にやった俺だが、こちらもこちらで似たような方法を指示した。
必要に駆られれば否が応でも体得する、という仮説を基に戦わせてみたのだ。
組み合わせなどは特に決めず、自由にやってくれと書いたのだが……うん、予想以上に真剣な闘いとなっている。
「ところで、どうしてプーチお姉ちゃんは参加して無いのかな?」
「えっとね~、人数がちょうど~半々にならなかったし~、そもそも~、参加する理由が無かったんだ~」
「あっ、理由は分かってるんだね。それってどういう理由?」
「……お前みたいな変態のためだよ」
急に冷めた視線と口調で告げるプーチ。
彼女はかなりの男嫌い、メルの姿だったからまだ優しいが……昔、もっとヤバい視線ならぬ死線で見られたことがあったな。
言い終えると、パッと再び元の緩い感じの空気を醸し出す。
しかし、おそらく嘘は言っていない……だからこそ、どうしてなのかと謎が深まる。
「私が理由で、プーチが興味なくて……全然分からないよ」
「うわ~、本当にクズ~」
「……前に決めたよね? こっちのときは普通に話してくれるって。これって、それを破るぐらいに不味いことなのかな?」
「少なくとも~、私はそう思うよ~」
裏でそんなやり取りをしていた俺たちだったが、状況はかなり深刻なようで。
説明を促してもしてくれないと判断し、どうしようかと考え……思いつく。
「プーチお姉ちゃん、補助魔法とかいろいろと掛けてくれない?」
「何をするの~?」
「神眼で過去を視てもいいけど、理由が理由だと止められなくなるし……事情を知らない内に止めることにしたんだ。で、今は身力操作の練習中だし──私が行く」
「…………」
衣装は先ほど見せた修道服。
小さな掌を空にかざすと、どこからともなく光が集まり──錫杖となる。
「これって~」
「……ガー、ますたーのお手伝いをしてほしいって頼んだよね?」
《…………》
「……ハァ、いいよ。今回だけだよ」
本来はこの装備のオリジナルの持ち主──アイの持つ錫杖が生成されるはずだった。
しかし、同じ錫杖だからかそれとも別の要因か、ガーの眷属武装が出てくる。
問い詰めには無言だったが、その内心は伝わってきた。
僅かながらの後悔を感じ取り、渋々ながらそのままで居ることを了承する。
「プーチお姉ちゃん、準備は?」
「できてるよ~──“対招更撃”~!」
呪与魔法の“対招更撃”。
名前が意味する通り、敵対存在からの攻撃頻度を高める魔法……相手が強い意志を持っていない、無自覚の攻撃はだいたい来る。
あえてこの魔法を使う辺り、まだまだプーチからの好感は掴めていないな。
そんなことを思いながら、身力操作で身体強化を行い──突っ込む。
「みんな楽しそうだね、私も混ぜてよ」
『ッ!?』
「メル、邪魔しないでください!」
「理由は分からないけど、ちょっと過激すぎるよ……でも、特訓にはちょうどいいし、私相手なら全力でもいいよ──“黒牙”」
前に出て戦う者たちの影から、同色の牙が飛び出す。
あえて速度を調整した分、対処は簡単なので各々の手段で魔法を捌いていく。
「……どういうつもりなの?」
「ますたーとシガンお姉ちゃんが争っているのを見る辺り、ちゃんとわけはあると思うけどね。それに、シガンお姉ちゃんはそこまでやる気じゃない……後ろの花子ちゃんを庇っているのかな?」
「まあ……そうね」
「理由なんてどうでもいい。今の私は貸すんじゃなく課しているんだから、やり方も相応にね。さぁ、私を倒してみなよ。できればその人にはご褒美だよ──“闇幕・極大”!」
周囲を闇で包む魔法を、神代魔法の一つである<極大魔法>によって超化。
膨大な量の闇が俺を中心に吹き荒れ、一寸先すらも闇にするほどに濃厚な暗さを生む。
暗視スキルを起動し、すぐに視界を確保。
他の者たちも同様に目を光らせるが……ここで俺はもう一工夫。
「──“喪目”」
「……聞いたことないわね、それ」
「私のオリジナルのネタ魔法だよ。死んだ魚みたいな目なんだけど……それってつまり、目に光が灯ってないって意味だからね」
「…………ネタの割に、こういう局面だと使える魔法じゃない」
暗視スキル、そして魔眼系のスキルを使うと発生するエフェクト。
だがこの魔法を使うと、それらを極限まで抑え込むことができるのだ。
正直、作らせた本人としても予想外の出来に驚いたものである。
要は視覚で俺を捉えなくなったわけで……さて、彼女たちはどう対処するのかな?
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