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偽善者と策略する日々 三十三月目
偽善者と弟子特訓 その01
しおりを挟む始まりの街 クランハウス『ユニーク』
「「「…………」」」
「よく来てくれたな、三人とも、君たちをここに呼んだのは他でもない。とりあえず、先日のワールドクエストを経て君たちがどれほど成長したのかを確かめるためだ」
俺という妙な男が、どうして超有名クランの『ユニーク』に入れているのか。
そんな疑問を持っていそうな新弟子三人を無視して、説明を行う。
いやまあ、クエスト前にどうすればいいかと連絡を入れたかったかもしれないが……そういえば[フレンド]登録するのを忘れていたので、連絡できなかったんだよな。
「その前にさ、お前。なんで毎度毎度、ここで会合とかしてるんだよ。(対外的には)他所のクランだって分かって──」
「アヤメさん、彼に例の物を。迷宮の──」
「兄弟、困ったことがあったら助け合うのが当たり前だよな。また何かあったら、いつでも俺を頼ってくれ」
「……まあ、ナックルがそれでいいなら別に構わないんだが。チョロすぎないか?」
アヤメさんの方を一瞥し、同感とばかりに頷くのを確認。
まあ、通常の方法で、ナックルを満足させられる迷宮関係の情報は少ないからな。
逆に言えば、それがあると交渉の難易度が大幅に低下してしまう。
そこを突いている俺ではあるが、クランの将来が少し心配になるじゃないか。
三人娘たちもまた、似たような反応。
……特に花子(仮)の目が、なんとも冷めたものになっています。
「──アヤメさん」
「分かりました。ナックルさん、例の物は別の部屋に置いてありますので、そちらに向かいましょう」
「そ、そうだな……次を期待しているぞ!」
まあ、こんな状況でも俺の名前を明かさない辺り、ちゃんと理性はあるのだろう。
軽く溜め息を吐いた後、改めて教え子たちと向き合った。
「お嬢、ござる、花子。三人ともいろいろと頑張ったみたいだな。レベルを視ただけで分かるぞ。というか、お嬢とござるに関してはもう就きたい職業に就いているし」
「ふんっ、当然ですわ!」
「先輩方が攻撃を行う機会を下さりましたので。期間中に、前提となる職業のカンストも済ませられたでござる」
「やっぱり、好い人もいるもんだな……で、花子なんだが。お前、どこを目指してる?」
「……さぁ」
人形遣いを目指すお嬢(仮)、忍びを目指すござる(仮)。
二人は共に、『高位人形師』と『くノ一』に就職していた。
どうやらレベリングを祈念者にやってもらい、レベルはどんどん上げたようだ。
……まあ、固定ダメージの魔道具を使わせてなかったし、それぐらいはいいか。
そして、もともとそういった目標などは決めていなかった花子(仮)。
前回習得を目指していた異常耐性は獲得済みで、他にもいくつかスキルを取っていた。
「何があったら、【初心者】に就くような事態になるんだ。それ、特殊固有職っていう超レア職業だぞ」
「本当に知らない。とりあえずチュートリアルで出た六職を全部カンストさせたら、いつの間にか出てた」
「どう考えてもそれが原因だろ」
「……攻略サイトを見たけど、それだけでこれが出たって人は居なかったけど?」
今なら分かるが、あくまでも【初心者】は存在していなかった職業だ。
大神であるリフィリングが干渉した結果、新しく創造された。
俺の知り得る限り、この職に就いたのは俺も含めて三人。
残る一人と花子(仮)のケースを考え、辿り着く答えは──俺が原因というもの。
「まあ、それは別にいいや。運が良かった、これで充分だ。しかし、それでも六職分……つまり180はこの期間中に上げたのか。凄いな、花子(仮)」
「……別に」
俺の持つ『○導士』系の称号が、他者にも就職可能にするトリガーかもしれない。
新たに就職者が現れて、関与していないなら違う可能性もあるが……現状はそうだ。
いずれにせよ、【初心者】であれば万能スタイルを目指す花子(仮)にはピッタリ。
これからもそれを上手く活かして、自身の目指す目的を果たしてもらいたい。
「まあ、ここまででとりあえず一週間ぐらい経過したわけだが……今のところ、何か問題とかは起きていないか?」
「人形師に就けたのは良いのですが……腕の良い職人などはおりますの?」
「某は、前に話されたこちらの世界の日本に行きたいでござる」
「…………」
「お嬢のヤツは、まあとりあえず知り合いに声を掛けてみるか。ござるのも、その連中が行けるからそれで。花子は特に無いなら、また相手からの干渉を封じれるようなスキルでも紹介するぞ」
「……なら、教えて」
前回、俺との賭けをしたときは、デバフを掛けられたことに気づかず敗北した。
だからこそ、まずはあらゆるデバフの基である状態異常を防げるようにしたわけで。
今度はそれ以外の干渉を防げるような方法でも、教えてみようじゃないか。
防御は最大の攻撃とも言うし、磨いておいて損は無いからな。
「わ、私にも教えて下さらない?」
「某にもぜひ」
「ん? いやまあ、全然困らないから別にいいけど。自分たちの目指すスタイルに一直線じゃなくていいのか?」
「構いませんわ。それよりも、もっといろんなことを教えてください」
「右に同じ。我が師よ、ぜひとも某にもご教授を」
「分かった。両方を同時進行でやっていくことにしよう。ただし、その分だけ苦労することを忘れるなよ。花子(仮)もそういうことでいいか?」
三人の了承も得たし、心当たりにさっそく尋ねてみよう。
ちょうど次に行く予定だったから、ある意味ナイスタイミングだ。
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