2,087 / 2,518
偽善者と混乱の牙 三十二月目
偽善者と自己紹介 その52
しおりを挟む夢現空間 居間
絶対安静と伝えられた俺だが、自室を出て居間に来ている。
新たな武具っ娘も加わったのだから、やるべきことは一つしか無いだろう。
あれから受肉を行うべく人形に核を入れると、すぐにそれは成った。
そんな彼女を連れてここに来て、まずは雑談を行っている。
「ふむ……委細理解した。いいだろう、俺もまた眷属としての責務を果たそう」
「ははー、ありがとうごぜぇやす」
「なんだ、その口調は。俺の主である貴様がそのような振る舞いでは、眷属たる俺の価値も下げる。改めよ」
「……厳しいな。まあでも、ごもっとも。そうだな、恥じない行動を示そうって思ったばかりだったよ」
どこぞの厨二王とは違う、賢王の資質を持つであろう彼女の言葉は、どこかしっくりとくる言だった。
そう、それは【希望】を担う者だからこその重み。
他者にそれを分け与えることのできる存在ゆえの、圧倒的自信なのだろう。
「うむ、それでこそ俺を従える者。では、始めるがよい」
「はっ……っとと。分かった、それじゃあ始めよう──第五十二回目の質問タイム!」
その声と共に、映像装置は自動的に録画を開始する。
映るのは当然、俺と彼女……なんというか画面映えの差が酷い。
「今回のゲストはこのお方! ありとあらゆる【希望】の収束体、その身に叶えられぬ願いは無し──ホー様です!」
「むっ、なぜ様付けをする」
「王様みたいな音の響きが気に入ったんだ。ダメなら……仕方ない、諦めよう」
「……いや、構わん。ただの遜りではなく、そこに愛着があるのであればそのように呼ぶことを許そう」
そう、腕組みをしながら答えるホー。
……武具っ娘って、少女か美女になることが多いんだが──うん、美女の場合は盛り上がることが多いな。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「問01:あなたの名前は?」
「ホーである」
「問02:性別、出身地、生年月日は?」
「この身は女、生まれは洞窟であり夢現空間であったな。生年月日はつい先日、とでも言おうか」
「問03:自分の身体特徴を描写してください」
「黒髪金目、そして熾天使の羽。だが、その程度は些細なことだ」
「……なら、一番の特徴って?」
「決まっていよう。この整った顔、黄金比とも呼べる姿態。これらを至上の特徴と呼ばずして、何を以って特徴を呼ぶか!」
「……種族的特徴とかじゃないか?」
「問04:あなたの職業は?」
「【英雄王】、とは言っても観ている者たちの求めるものではないがな。【英雄】の素質がある者が、王になれば就くだけの職業よ」
「充分に理想の【英雄王】だぞ」
「そうではあるまい。【希望】にそぐわないだろうが、武器を飛ばすような力は備わっていないからな」
「問05:自分の性格をできるだけ客観的に描写してください」
「不遜であろう? だが、【希望】とは最後まで諦めぬ者の前に現れるもの。つまりだ、俺のように振る舞うことこそが、真の体現者と呼べるだろう」
「……そう、なのか?」
「そうだ。己が信念を貫き通すこの姿こそ、【希望】の象徴たる俺そのものだ!」
「問06:あなたの趣味、特技は?」
「観察だ」
「観察……具体的には何を?」
「【希望】を抱くか否か、だ。子は宝と言うが、俺にとっては【希望】そのものが宝だ。他の者が抱く【希望】がどういったものであるのか、またそれを叶えるのかどうか……面白かろう?」
「問07:座右の銘は?」
「【希望】たれ! 象徴である俺が、それを忘れてはいかんからな」
「問08:自分の長所・短所は?」
「ふむ……短所か。特に無いな」
「では、長所は?」
「何を言っておるか。俺の長所など、あり過ぎて言い切れぬわ」
「問09:好き・嫌いなもの/ことは?」
「好きなものは宝だ。嫌いなものは宝を狙う不届き者である」
「問10:ストレスの解消法は?」
「まだ感じたことはないが……そうだな、そのときには宝を見よう」
「問11:尊敬している人は?」
「不屈の成功者だ。失敗を重ねようと、それでも【希望】を胸にひたむきに努力を重ね、その結果成功を得た者たち……俺はそういった人種に敬意を表そう」
「問12:何かこだわりがあるもの/ことがあるならどうぞ」
「まだ生まれたばかりだろうに……改めて己が言動を見直してみれば、やはり【希望】にはこだわっているのだろう」
「問13:この世で一番大切なものは?」
「宝だ。それは【希望】を抱く者であり、メルスを基盤とする集団である」
「問14:あなたの信念は?」
「強き意志には【希望】を。足掻く者には祝福を授けよう」
「問15:癖があったら教えてください」
「まだ生まれたてだ、認識しておらぬ」
「問16:ボケですか? ツッコミですか?」
「ツッコミだ!」
「……ここは決まってるんだな」
「問17:一番嬉しかったことは?」
「ようやく俺の出番が来たことだ」
「問18:一番困ったことは?」
「それまでいったい……俺がどれだけそのときを待ち望んでいたことやら」
「……すんませんした」
「問19:お酒、飲めますか? また、もし好きなお酒の銘柄があればそれもどうぞ」
「酒か……そのうち飲ませてもらおうか」
「問20:自分を動物に例えると?」
「気高きドラゴンである」
「……ここ、質問内容変えた方がいいかも」
「問21:あだ名、もしくは『陰で自分はこう呼ばれてるらしい』というのがあればどうぞ」
「まだ特にない」
「問22:自分の中で反省しなければならない行動があればどうぞ」
「? そんなもの、あるはずが無かろう」
「問23:あなたの野望、もしくは夢について一言」
「【希望】に満ち溢れた人生としよう!」
「問24:自分の人生、どう思いますか?」
「先に同じく!」
「問25:戻ってやり直したい過去があればどうぞ」
「そのような過去無い」
「問26:あと一週間で世界が無くなるとしたらどうしますか?」
「皆が【希望】を抱くのであれば、俺が成すべき事は一つしかあるまい」
「問27:何か悩み事はありますか?」
「何も無い。ただ進むのみだ」
「問28:死にたいと思ったことはありますか?」
「そんなこと、あるはずが無かろう」
「問29:生まれ変わるなら何に(どんな人に)なりたい?」
「俺は俺以外の何物にもならぬわ」
「問30:理想の死に方があればどうぞ」
「不要だ。【希望】がある限り、俺は決して死なん!」
「問31:何でもいいし誰にでもいいので、何か言いたいことがあればどうぞ」
「【希望】を抱く者よ。前向け、諦めぬ限り【希望】は訪れる!」
「問32:最後に何か一言」
「その願いがメルスと相容れぬ限り、俺はそれを肯定しよう!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「はい、カット! なあ、なんで最後はああ言ったんだ? てっきり、どんな願いでも肯定するとか言うと思ったんだが」
「当然なことを聞くな。俺が【希望】の象徴たるのは、他でもない貴様の願い。始まりの願い無くして、先も終わりも無いだろう。つまりだ、貴様の願いこそが俺にとって最優先の【希望】ということだ」
「……ホー様」
「ああ、俺を讃えろ。相応の見返りはくれてやる。俺を生み、俺の形作り、俺が俺である証明者──望め、それが俺を……俺たちを突き動かす【希望】足り得るのだ」
要するに、頼りたいときはしっかりと頼れと言うことだろう。
……本当、うちの眷属はどいつもこいつも好いヤツばっかりだな。
0
お気に入りに追加
510
あなたにおすすめの小説
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
DPO~拳士は不遇職だけど武術の心得があれば問題ないよね?
破滅
ファンタジー
2180年1月14日DPOドリームポッシビリティーオンラインという完全没入型VRMMORPGが発売された。
そのゲームは五感を完全に再現し広大なフィールドと高度なグラフィック現実としか思えないほどリアルを追求したゲームであった。
無限に存在する職業やスキルそれはキャラクター1人1人が自分に合ったものを選んで始めることができる
そんな中、神崎翔は不遇職と言われる拳士を選んでDPOを始めた…
表紙のイラストを書いてくれたそらはさんと
イラストのurlになります
作品へのリンク(https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=43088028)
虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる