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偽善者と渡航イベント 三十月目

偽善者と自己紹介 その51

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 夢現空間 居間


 渡航イベントは無事に終わった。
 唯一PKたちは運営にクレームを付けたようだが、元より何があっても責任を取らないという契約だったらしい(by『陽炎』)。

 そんなこんなで、一般の祈念者に関してはリゾートで満足したまま終えられた。
 これもすべて、お嬢さんがライブで楽しませてくれたからかもな。


「──まあ、そんなわけだ。そのうち、魔道具で映像を販売して一儲けするんだぜ。ここら辺は親衛隊の奴らと相談して、共同って誤魔化してやるつもりだ」

「……やはり同朋、お主は侮れんな。闇の宴はもうすぐそこ、というわけか」

「だな。特典にライブチケットの優先販売権とかも付ける予定だし、盛り上がるだろう」

「くっくっく、慄く姿が目に浮かぶ。約束の刻は近い、我らもまた儀に備えねばな」


 と、ここまで言い終えるととても嬉しそうな笑みを浮かべてくる。
 まあ、彼女の求める理想の台詞が言えていたからだろう。


「どうだどうだ、同朋よ! われの台詞、黒幕のように思えなかったか?」

「カッコよかったぞ。あえて二回目は宴じゃなくて儀にした辺りが、まだ隠された真なる目的があるって感じで……」

「そうであろうそうであろう! いや、われも頭を捻ったのだ。約束の、の辺りは定番だから良いのだが、その後はやはり工夫が欲しいと思ってな!」


 厨二病、それは人によっては永遠に付き合うことになる病であり業。
 ある意味、<大罪>よりも重い業を、彼女は背負っている。

 だが、その瞳に宿るのは純粋な輝き。
 妄想でも、ましてや現実逃避でもない……彼女はただ、胸に秘めた想いを人一倍語りたいだけなのだから。


「まあ、そろそろ始めるとしようか──第五十一回質問ターイム! 本日のゲストはこの方……厨二爆発なゴーさんです!」

「深淵に眠るが良い!」

「俺は永久って書いて『とこしえ』って読んだ方がイイ派だな」

「分かっているではないか同朋! そう、われとしてもそこは──」


 なんて会話をしていると、何度か話が逸れてしまう。
 それでもしばらくして、ゴーへの質問を開始するのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「問01:あなたの名前は?」

「我が名はゴー! 武具っ娘の一人にして、【傲慢】の名を欲しいがままにする者!」


「問02:性別、出身地、生年月日は?」

「ふっ、生まれなどとうに捨てた」

「女の子で、出身は……うーん、俺の精神世界か? 実際の座標だけなら、夢現空間の俺の部屋ってことになるけど」


「問03:自分の身体特徴を描写してください」

「我が髪は雲よりも白く、瞳は眩いばかりの黄金のように輝く! そして、我が肉体は神の戦車を曳きし偉大なる鳥獣なり!」

「ゴーの受肉体は、『鷲獅子グリフォン』の獣人です」


「問04:あなたの職業は?」

「知れたことを。我が担うは王にして帝、皇であり主である──つまり我そのもの!」

「ちょっと特別な職業で【主皇帝王】だな。俺の就いた【大王】の、さらに上位版って捉えておいてくれ」


「問05:自分の性格をできるだけ客観的に描写してください」

「来た! ……決まっている、傲慢不遜にして天衣無縫! そして我が道をただひたすらに進み行く者なり!」

「……ええまあ、お察しの通りです」


「問06:あなたの趣味、特技は?」

「我が叡智を刻むこと!」

「日記です」


「問07:座右の銘は?」

「──笑止千万!」

「まあ、言いたくはなるよな」


「問08:自分の長所・短所は?」

「短所が無いことが長所であり短所でもあろうか……」

「ある意味、プラス過ぎる思考が短所になりえると思うぞ。まあ、他の眷属もいるから露呈はしないと思うが」


「問09:好き・嫌いなもの/ことは?」

「望むは賢者の会談、拒むは終わりの刻!」

「さっきは終わりの刻って言ってたのにな。要するに、語り合いが好きでその時間が終わるのが嫌ってわけだ」


「問10:ストレスの解消法は?」

「それは抑圧されし者が背負う咎。我のような自由人に課せられる者ではない」

「基本、好きなようにさせていますので」


「問11:尊敬している人は?」

「同朋……と答えるのはダメであったな。ならば、その同朋が尊敬せし師であり氏だ!」

「全世界の創作物関係者の皆さん、本当に尊敬しております」


「問12:何かこだわりがあるもの/ことがあるならどうぞ」

「この想い、決して折れぬ不屈のもの!」

「厨二は終わらないわけです」


「問13:この世で一番大切なものは?」

「我が担いし業、それは命育む限り消えるぬ事なき永業! それゆえに、想う心こそが重要なのであろう!」


「問14:あなたの信念は?」

「──天下無双!」

「……カッコいいけど、少し捻ってくれ」

「うーん、われ的にはこれでいいと思うが。なら、こうして同朋たちと語り合える日々を保つことであろうな」


「問15:癖があったら教えてください」

「我が偉大なる言霊の求めるがままに、この四肢もまた名乗りを上げてしまうことであろうか」

「決めポーズです」


「問16:ボケですか? ツッコミですか?」

「ツッコミである!」

「ボケです」

「同朋! われはボケてなどいない!」


「問17:一番嬉しかったことは?」

「我が求められし時!」


「問18:一番困ったことは?」

「それがちっとも来なかったことだ!」

「……ああうん、ごめんな。あー、この流れがあともう一回か二回あるのかな」


「問19:お酒、飲めますか? また、もし好きなお酒の銘柄があればそれもどうぞ」

「酒は飲ませてもらえぬ! なあ同朋よ、われも洒落たカウンターでやるアレ、隣の客からというヤツがやりたいのだが?」

「我慢しないさい。それに、酒じゃなくてもそれはできます」

「ぶぅ……」


「問20:自分を動物に例えると?」

「偉大なる天空の王なり!」

「……グリフォン、かな?」


「問21:あだ名、もしくは『陰で自分はこう呼ばれてるらしい』というのがあればどうぞ」

「厨二! うむ、己に足りぬものから目を逸らし、捨て去った過去から逃げようとする者たちがそう呼ぶな」

「……言ってやるなよ、アイツらにもアイツらなりの事情があるんだから──そうだろ、カナタ?」


[※この後、乱入してきたお客様と一悶着ございますが……省略いたします]


「問22:自分の中で反省しなければならない行動があればどうぞ」

「反省はいくつもある、だが後悔などしたことがない!」

「……で、実際のところは?」

「もっと早く目覚めておけばよかった!」


「問23:あなたの野望、もしくは夢について一言」

「我の力を振るい、やがては我と同朋が裏から世界を支配することだ!」

「……その方が偽善がしやすいなら、そういう世界があってもいいかもな」


「問24:自分の人生、どう思いますか?」

「我は生みだされし者。他の武具っ娘とは決定的に違うことがある。それを同朋、お主が見つめ直すためのものであろう」

「…………」

「まあ無論、われとしては魂の赴くままに遊びつくすためだとは思うがな!」


「問25:戻ってやり直したい過去があればどうぞ」

「先も語った通り、もっと早く目覚めればよかったと思うぞ」


「問26:あと一週間で世界が無くなるとしたらどうしますか?」

「来たか……終焉の刻、それは抗いようのない運命! だが、我の背負いし業は、他に与えられしものを拒む! 抗おう、我が同朋と共に!」

「頑張ります」


「問27:何か悩み事はありますか?」

「われを頼れよ!」

「……善処します」

「それはしないやつだ!」


「問28:死にたいと思ったことはありますか?」

「無い! 我が想いは同朋がこれまで紡ぎし黒の史記! 何も怖いモノなど無い!」

「……俺は怖いよ、いったいどこからそれが漏れ出すかが」


「問29:生まれ変わるなら何に(どんな人に)なりたい?」

「我が同朋がそれらを紡いだ時、そこに我も傍に居て語り合えていればどれだけよかったことやら」

「きっと、話が盛り上がるだろうな」


「問30:理想の死に方があればどうぞ」

「ここは我に任せて先に行け! ふっ、心配などせずとも良い。あのとき、語ろうとした話もある。約束だ、必ずあとで会おう!」

「……いやー、死ぬなこれ。うん、間違いなく死ぬだろソイツ」


「問31:何でもいいし誰にでもいいので、何か言いたいことがあればどうぞ」

「そうだな……われは同朋、メルスがどのような選択をせずとも何ら不思議には思わぬ。武具っ娘が担う共通の業、お主の全肯定はある意味われから通じているものだ。望むままに進め、ただし後悔だけはするな」


「問32:最後に何か一言」

「我が許す! 本能が求めるがままに、己が欲望を満たせ!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「はい、カット! まあなんだ、いろいろとツッコミたいことはあるんだが一つだけ……俺は『偽善者おれ』でいいのか?」

「うむ、好きにするが良い! われは、われらは同朋と共にある!」


 改めて、救われた気分になる俺。
 何度言われようと、間違っていると分かってやることには思うところがある……それでも歩んだからには、最後まで進まないとな。


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