1,950 / 2,519
偽善者と渡航イベント 三十月目
偽善者と自己紹介 その51
しおりを挟む夢現空間 居間
渡航イベントは無事に終わった。
唯一PKたちは運営にクレームを付けたようだが、元より何があっても責任を取らないという契約だったらしい(by『陽炎』)。
そんなこんなで、一般の祈念者に関してはリゾートで満足したまま終えられた。
これもすべて、お嬢さんがライブで楽しませてくれたからかもな。
「──まあ、そんなわけだ。そのうち、魔道具で映像を販売して一儲けするんだぜ。ここら辺は親衛隊の奴らと相談して、共同って誤魔化してやるつもりだ」
「……やはり同朋、お主は侮れんな。闇の宴はもうすぐそこ、というわけか」
「だな。特典にライブチケットの優先販売権とかも付ける予定だし、盛り上がるだろう」
「くっくっく、慄く姿が目に浮かぶ。約束の刻は近い、我らもまた儀に備えねばな」
と、ここまで言い終えるととても嬉しそうな笑みを浮かべてくる。
まあ、彼女の求める理想の台詞が言えていたからだろう。
「どうだどうだ、同朋よ! われの台詞、黒幕のように思えなかったか?」
「カッコよかったぞ。あえて二回目は宴じゃなくて儀にした辺りが、まだ隠された真なる目的があるって感じで……」
「そうであろうそうであろう! いや、われも頭を捻ったのだ。約束の、の辺りは定番だから良いのだが、その後はやはり工夫が欲しいと思ってな!」
厨二病、それは人によっては永遠に付き合うことになる病であり業。
ある意味、<大罪>よりも重い業を、彼女は背負っている。
だが、その瞳に宿るのは純粋な輝き。
妄想でも、ましてや現実逃避でもない……彼女はただ、胸に秘めた想いを人一倍語りたいだけなのだから。
「まあ、そろそろ始めるとしようか──第五十一回質問ターイム! 本日のゲストはこの方……厨二爆発なゴーさんです!」
「深淵に眠るが良い!」
「俺は永久って書いて『とこしえ』って読んだ方がイイ派だな」
「分かっているではないか同朋! そう、われとしてもそこは──」
なんて会話をしていると、何度か話が逸れてしまう。
それでもしばらくして、ゴーへの質問を開始するのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「問01:あなたの名前は?」
「我が名はゴー! 武具っ娘の一人にして、【傲慢】の名を欲しいがままにする者!」
「問02:性別、出身地、生年月日は?」
「ふっ、生まれなどとうに捨てた」
「女の子で、出身は……うーん、俺の精神世界か? 実際の座標だけなら、夢現空間の俺の部屋ってことになるけど」
「問03:自分の身体特徴を描写してください」
「我が髪は雲よりも白く、瞳は眩いばかりの黄金のように輝く! そして、我が肉体は神の戦車を曳きし偉大なる鳥獣なり!」
「ゴーの受肉体は、『鷲獅子』の獣人です」
「問04:あなたの職業は?」
「知れたことを。我が担うは王にして帝、皇であり主である──つまり我そのもの!」
「ちょっと特別な職業で【主皇帝王】だな。俺の就いた【大王】の、さらに上位版って捉えておいてくれ」
「問05:自分の性格をできるだけ客観的に描写してください」
「来た! ……決まっている、傲慢不遜にして天衣無縫! そして我が道をただひたすらに進み行く者なり!」
「……ええまあ、お察しの通りです」
「問06:あなたの趣味、特技は?」
「我が叡智を刻むこと!」
「日記です」
「問07:座右の銘は?」
「──笑止千万!」
「まあ、言いたくはなるよな」
「問08:自分の長所・短所は?」
「短所が無いことが長所であり短所でもあろうか……」
「ある意味、プラス過ぎる思考が短所になりえると思うぞ。まあ、他の眷属もいるから露呈はしないと思うが」
「問09:好き・嫌いなもの/ことは?」
「望むは賢者の会談、拒むは終わりの刻!」
「さっきは終わりの刻って言ってたのにな。要するに、語り合いが好きでその時間が終わるのが嫌ってわけだ」
「問10:ストレスの解消法は?」
「それは抑圧されし者が背負う咎。我のような自由人に課せられる者ではない」
「基本、好きなようにさせていますので」
「問11:尊敬している人は?」
「同朋……と答えるのはダメであったな。ならば、その同朋が尊敬せし師であり氏だ!」
「全世界の創作物関係者の皆さん、本当に尊敬しております」
「問12:何かこだわりがあるもの/ことがあるならどうぞ」
「この想い、決して折れぬ不屈のもの!」
「厨二は終わらないわけです」
「問13:この世で一番大切なものは?」
「我が担いし業、それは命育む限り消えるぬ事なき永業! それゆえに、想う心こそが重要なのであろう!」
「問14:あなたの信念は?」
「──天下無双!」
「……カッコいいけど、少し捻ってくれ」
「うーん、われ的にはこれでいいと思うが。なら、こうして同朋たちと語り合える日々を保つことであろうな」
「問15:癖があったら教えてください」
「我が偉大なる言霊の求めるがままに、この四肢もまた名乗りを上げてしまうことであろうか」
「決めポーズです」
「問16:ボケですか? ツッコミですか?」
「ツッコミである!」
「ボケです」
「同朋! われはボケてなどいない!」
「問17:一番嬉しかったことは?」
「我が求められし時!」
「問18:一番困ったことは?」
「それがちっとも来なかったことだ!」
「……ああうん、ごめんな。あー、この流れがあともう一回か二回あるのかな」
「問19:お酒、飲めますか? また、もし好きなお酒の銘柄があればそれもどうぞ」
「酒は飲ませてもらえぬ! なあ同朋よ、われも洒落たカウンターでやるアレ、隣の客からというヤツがやりたいのだが?」
「我慢しないさい。それに、酒じゃなくてもそれはできます」
「ぶぅ……」
「問20:自分を動物に例えると?」
「偉大なる天空の王なり!」
「……グリフォン、かな?」
「問21:あだ名、もしくは『陰で自分はこう呼ばれてるらしい』というのがあればどうぞ」
「厨二! うむ、己に足りぬものから目を逸らし、捨て去った過去から逃げようとする者たちがそう呼ぶな」
「……言ってやるなよ、アイツらにもアイツらなりの事情があるんだから──そうだろ、カナタ?」
[※この後、乱入してきたお客様と一悶着ございますが……省略いたします]
「問22:自分の中で反省しなければならない行動があればどうぞ」
「反省はいくつもある、だが後悔などしたことがない!」
「……で、実際のところは?」
「もっと早く目覚めておけばよかった!」
「問23:あなたの野望、もしくは夢について一言」
「我の力を振るい、やがては我と同朋が裏から世界を支配することだ!」
「……その方が偽善がしやすいなら、そういう世界があってもいいかもな」
「問24:自分の人生、どう思いますか?」
「我は生みだされし者。他の武具っ娘とは決定的に違うことがある。それを同朋、お主が見つめ直すためのものであろう」
「…………」
「まあ無論、われとしては魂の赴くままに遊びつくすためだとは思うがな!」
「問25:戻ってやり直したい過去があればどうぞ」
「先も語った通り、もっと早く目覚めればよかったと思うぞ」
「問26:あと一週間で世界が無くなるとしたらどうしますか?」
「来たか……終焉の刻、それは抗いようのない運命! だが、我の背負いし業は、他に与えられしものを拒む! 抗おう、我が同朋と共に!」
「頑張ります」
「問27:何か悩み事はありますか?」
「われを頼れよ!」
「……善処します」
「それはしないやつだ!」
「問28:死にたいと思ったことはありますか?」
「無い! 我が想いは同朋がこれまで紡ぎし黒の史記! 何も怖いモノなど無い!」
「……俺は怖いよ、いったいどこからそれが漏れ出すかが」
「問29:生まれ変わるなら何に(どんな人に)なりたい?」
「我が同朋がそれらを紡いだ時、そこに我も傍に居て語り合えていればどれだけよかったことやら」
「きっと、話が盛り上がるだろうな」
「問30:理想の死に方があればどうぞ」
「ここは我に任せて先に行け! ふっ、心配などせずとも良い。あのとき、語ろうとした話もある。約束だ、必ずあとで会おう!」
「……いやー、死ぬなこれ。うん、間違いなく死ぬだろソイツ」
「問31:何でもいいし誰にでもいいので、何か言いたいことがあればどうぞ」
「そうだな……われは同朋、メルスがどのような選択をせずとも何ら不思議には思わぬ。武具っ娘が担う共通の業、お主の全肯定はある意味われから通じているものだ。望むままに進め、ただし後悔だけはするな」
「問32:最後に何か一言」
「我が許す! 本能が求めるがままに、己が欲望を満たせ!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「はい、カット! まあなんだ、いろいろとツッコミたいことはあるんだが一つだけ……俺は『偽善者』でいいのか?」
「うむ、好きにするが良い! われは、われらは同朋と共にある!」
改めて、救われた気分になる俺。
何度言われようと、間違っていると分かってやることには思うところがある……それでも歩んだからには、最後まで進まないとな。
0
お気に入りに追加
516
あなたにおすすめの小説
World of Fantasia
神代 コウ
ファンタジー
ゲームでファンタジーをするのではなく、人がファンタジーできる世界、それがWorld of Fantasia(ワールド オブ ファンタジア)通称WoF。
世界のアクティブユーザー数が3000万人を超える人気VR MMO RPG。
圧倒的な自由度と多彩なクラス、そして成長し続けるNPC達のAI技術。
そこにはまるでファンタジーの世界で、新たな人生を送っているかのような感覚にすらなる魅力がある。
現実の世界で迷い・躓き・無駄な時間を過ごしてきた慎(しん)はゲーム中、あるバグに遭遇し気絶してしまう。彼はゲームの世界と現実の世界を行き来できるようになっていた。
2つの世界を行き来できる人物を狙う者。現実の世界に現れるゲームのモンスター。
世界的人気作WoFに起きている問題を探る、ユーザー達のファンタジア、ここに開演。
パーティ追放が進化の条件?! チートジョブ『道化師』からの成り上がり。
荒井竜馬
ファンタジー
『第16回ファンタジー小説大賞』奨励賞受賞作品
あらすじ
勢いが凄いと話題のS級パーティ『黒龍の牙』。そのパーティに所属していた『道化師見習い』のアイクは突然パーティを追放されてしまう。
しかし、『道化師見習い』の進化条件がパーティから独立をすることだったアイクは、『道化師見習い』から『道化師』に進化する。
道化師としてのジョブを手に入れたアイクは、高いステータスと新たなスキルも手に入れた。
そして、見習いから独立したアイクの元には助手という女の子が現れたり、使い魔と契約をしたりして多くのクエストをこなしていくことに。
追放されて良かった。思わずそう思ってしまうような世界がアイクを待っていた。
成り上がりとざまぁ、後は異世界で少しゆっくりと。そんなファンタジー小説。
ヒロインは6話から登場します。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる