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偽善者と渡航イベント 三十月目

偽善者と渡航イベント終篇 その15

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 祈念者の眷属全員を集めて、向かったのはクランで造った船『アンノウン号』。
 俺はわざわざ船頭の先で、高々に彼女たちに告げる。


「それじゃあ、結果発表ーーー!」


 手を叩いてくれる者や無視する者、嫌そうな顔を浮かべる者など反応は多岐に渡る。
 それでも俺は諦めない、テンションを固定してそのまま続けた。


「今回のイベントでの行動は、もう一グループの眷属で採点をしてもらっています。その成績に応じて、頑張った皆さんにはさまざまな報酬……は用意されていないけれど、まあ俺が願い事を叶えてみせましょう!」


 眷属たち共通の認識として、俺は大半のことはできると思われている。
 実際、創造から破壊まで何でもござれな偽善者様に、その気になればなるだろう。

 というわけで、報酬は体で支払うことに。
 今回のイベントで活躍した彼女たちに、その功績に応じただけの働きで報いるわけだ。


「──先に言っておきます。アルカさん、まず死闘は無しですからね」

「……チッ」

「舌打ち!? ネタバレをしちゃうけど、アルカはだいぶ評価されていたけど、それでも俺を害する願い事は無しになっている。その点を踏まえて、これから出る功績表を確認して願いを決めてくれ」


 意味も無く指をパチンと鳴らせば、予め仕込んでもらっていた物が起動する。
 祭りの時にも使ったプロジェクター、そこに投影される彼女たちの功績。

 説明書を片手に、そこに表示された内容について説明を始める。


「名前の隣に、アルファベットがある。定番だが、Sが最上位で後はAから順に落ちていく流れだ。最低はC、まあそれでも俺が片手間でできることくらいならOKらしい……知らなかったけど」


 中身を見ていなかったので、そこに記された情報は俺も新知の情報だ。
 事細やかに記された、位ごとに俺がやることができる許容範囲も確認した。


「願いを叶える期間は現実世界で一週間、好きな願いを考えておいてくれ。Sなら大抵のことは何でも、Aなら俺の世界で可能なことぐらい、Bなら俺個人でできること、Cは少し前に言ったが片手間でできることだな」

「はい、師匠質問です!」

「……うむ、何かな?」

「どうして僕はBなんでしょうか?」


 質問された通り、ユウの評価はB。
 とはいえ、ほとんどの奴らはAかBで、特別戦功でアルカがSになったぐらいだ。


「知らん。評価は完全に眷属任せで、いっさい俺は干渉していない。よく分からんが、向こうだとそういう判断が下ったんだろう」

「ちぇー。まあ、師匠が願いを叶えてくれるならそれでいいや」

「はいはい、任せとけって……で、お次は何が聞きたいですかクラーレさんや?」

「確認したいことがあるのですが……これはCでも可能ですか?」


 そう言って、彼女は少々躊躇った後に俺の近くまで来てその内容を語る。
 かなり真面目な話だったので、俺もすぐに眷属へそのことを相談して答えを聞く。


「……いちおうはOKみたいだ。片手間じゃないんだが、まあ向こうも機会があるならそうした方がいいって」

「メルスに関しては何もしないのですから、ある意味間違っていないじゃないですか」

「それもそうなんだけどさ……」


 彼女の願いに関しては、向こうの手が空いた時点で連絡を入れよう。
 改めて、願い事を考える眷属たちを見ながら……異なる相貌を浮かべる少女の下へ。


「──カナ、何か問題があったか?」

「いえ、その……わたしはもう、すでに叶えてもらっているのですが」

「アレは別だ、別。むしろ、願い事でもっと複製しやがれ! って言うのもいいんだぞ。魔力は足りるし、片手間じゃちょっと難しいけど無限増殖用のアイテムを創ってやることもできないわけじゃない」


 そう、カナはあれから眷属になることを了承してくれた。
 全部は教えてもらえなかったが、必要なことなんだとか。

 お嬢さんといっしょにすでに紹介しているので、この場に居ても何も言われない。
 ……ちなみにお嬢さんはお嬢さんで、すでに何か決めていそうな顔だ。


「まあ、一週間もあるんだ。最悪、俺にお任せって手段もある」

「えっ?」

「カナはCだから片手間でやれることに限るが、それでも結構俺なりに考えるぞ。さっき言ったアイテムの複製だってやるし、カナのスキルをちょいちょいっと弄るでもいい」

「そんなことができるんですか!?」


 俺の元就いていた職業に【スキル創造士】があって、称号にも『最速スキル創造者』が存在する。

 そのお陰か、職を失った今でもスキルの改変やらをやることができていた。
 ……眷属がいろいろ弄ることができているのも、もしかしたらこれの影響かもな。

 カナの固有スキル【育成空間】は、彼女にとって必要不可欠なもの。
 従魔たちが住む場所だ……それゆえに、より快適にしたい気持ちがあるのだろう。


「たとえば、空間の繋がる先に俺の保有する迷宮を繋げるとか。それだけでも、置いておける場所やら階層ごとに好ましい環境を用意することができる……どうだ?」

「……それって、片手間なんですか?」

「操作自体は片手でできるしな。まあ、そういう感じでできることはたくさんあるって話だ。何も思い浮かばなかったら、ぜひそういう感じで何か任せてみてくれや」

「分かりました、そのときはぜひ」


 なんて会話をしながら、この場で願いを提示した眷属の願いを叶える約束を取り付けたりして……この日は解散となった。


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