1,866 / 2,518
偽善者と渡航イベント 三十月目
偽善者と船員集め その08
しおりを挟むどんどん人が増えていくクランハウス内。
なんだろうか、弱みでも握りたいのだろうか……まあ、答えがどうであれ、俺が眷属にした祈念者たちが増えていく。
次に訪れたのは、白と黒のモノクロカラーな鎧に身を包んだ少女。
シャインと違って、彼女は全身甲冑……素顔バレは身バレに繋がるからだ。
「来てくれてありがとうな、ペルソナ」
《いえ、私もメルスさんの眷属……です。それよりもその、どうして三人は手錠で繋がれているのでしょうか?》
「まあ、その事情説明からだな」
話すことが難しい彼女は、念話を介して俺との会話を行っている。
何度かやっている説明なので、短くそれでいて分かりやすく話せるようになっていた。
ユウが説明を省くのは、これも交渉に入れるからだろうか。
「──というわけで、イベントに参加する協力してくれるかどうかの確認と、多少の世間話をしているわけだ。悪いが、少しだけ話をしてくれないか?」
《はい、分かりました。ただ……どのような話をしていいのか》
「別に何でもいいんだ。思ったことを、それこそ俺に対するクレームでもいいんだぞ」
《そ、そういったことをありませんよ。メルスさんの眷属になって、これまで問題なども起きていませんし》
嗚呼、なんというか……癒しだな。
オブリの子供らしさもそうなのだが、ペルソナの清楚感も俺の心を癒してくれる。
隣に居るツンドラなど、絶対俺を殺すウーマンなわけだし、気を休められないのだ。
ペルソナは、秘密を共有しているということもあって……緩められるんだよな。
そんなこんなで、ペルソナとも話をする。
彼女が話すのは、主にこれまでにやってきたクエストに関する内容だった。
「へぇ、霧の街と殺人鬼の伝説か……」
《迷宮の中に街が在りまして、そこで時々殺人事件が起きるんです。ただ、その街並みが現実のロンドンに似ているんです》
「たぶん、魔本だろうな。理由や理屈はさっぱりだが、迷宮内で展開されて侵入者を強制的に取り込んでいる……と」
《祈念者は七日間滞在すると、強制的に外部へ排出されます。ただ、自由民の方々はそうではないので、時折行方不明になる方が》
何でもその迷宮、霧が現れると勝手に転移されるんだとか。
それが地上でも他の迷宮でも関係なく、その地域周辺なら起きてしまう異常事態だと。
「イベントが終わったら、行ってみるか」
《大丈夫ですか?》
「俺は基本、暇だからな。それに、魔本を誰かに奪われるのは避けたい。その状態でクリア判定が付くかは不明だけど、とりあえず回収はしておきたい」
魔本に封じられているのは、本当に過去存在した人々の魂魄。
それが何度も何度も繰り返し、死んでは蘇るという事態を起こしている。
彼らにとっては時が遡っている以上、さしたる問題ではないのかもしれない。
だが俺にとって、その行いは否定すべき事態──偽善をするべきこと。
「あとで座標を教えてくれ。最悪、ボスとか全部無視してそこに行く」
《直接向かう方法は分かりませんが、ギルドの方で把握されていた情報なら大丈夫です》
「ありがとう、今度お礼でもするよ」
《そ、そういった物は受け取れません!》
固辞するペルソナをなんとか説得して、約束させることはできた。
イア同様、顔を隠すアイテムはもう渡してあるが……他にも作っておこうかな。
「──さて、そろそろ本題に入るか。ペルソナ、イベントへは参加してくれるか?」
《はい、大丈夫です。具体的に何をすればいいのでしょうか?》
「それはイベントが始まってからだな。分かる範囲で思いついているのは、とりあえず船の材料になるアイテム探しかな? うちは武闘派が多いし、ペルソナにもそっちをお願いしようと思う」
《分かりました、精いっぱい務めさせていただきます》
イベント内容はまだ推測するしかない。
ただまあ、船を造る以上は必ず素材集めが必要になる……自由民に船の製造を頼む所もあるだろうし、そこから考えていく。
「そういえば、他の面々にも何か頼んでおいた方がいいか?」
「……何よ」
「ユウとアルカは俺側、ノロジーとセイラには『ユニーク』側で情報のやり取りをしてもらおう。何をするかは自由だし、今はそれぐらいでいいか」
「はーい、師匠の言う通りにするよ」
他にも、ティンスとオブリに情報収集、イアとシャインには人海戦術などを依頼する。
予め頼んでおいて、損は無い……イベントでやらないことなら修正すればいいし。
「ふー、これであと一人か。けどさ、交渉する必要あるか?」
「まあそうなんだけど、やっぱり眷属同士で顔を合わせる機会があってもいいと思うよ」
「そうね。特にあの子と会ったの、私とユウだけじゃない。ノロジーとセイラは知っているかもしれないけど、なかなか会う機会の無いペルソナとかは、ちゃんと接点を持たせておいた方がいいわよ」
ペルソナもペルソナで、元は『黒騎士』と呼ばれて有名だったけどな。
まあ、途中から『天魔騎士』に変わったりとで、その情報も消えたんだが。
彼女はクランで参加すること間違いなしなので、俺と共にイベントは行わないだろう。
むしろ、俺があちら側にも参加する可能性が高い……まあ、それも含めて交渉だな。
0
お気に入りに追加
510
あなたにおすすめの小説
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
DPO~拳士は不遇職だけど武術の心得があれば問題ないよね?
破滅
ファンタジー
2180年1月14日DPOドリームポッシビリティーオンラインという完全没入型VRMMORPGが発売された。
そのゲームは五感を完全に再現し広大なフィールドと高度なグラフィック現実としか思えないほどリアルを追求したゲームであった。
無限に存在する職業やスキルそれはキャラクター1人1人が自分に合ったものを選んで始めることができる
そんな中、神崎翔は不遇職と言われる拳士を選んでDPOを始めた…
表紙のイラストを書いてくれたそらはさんと
イラストのurlになります
作品へのリンク(https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=43088028)
虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる