1,865 / 2,518
偽善者と渡航イベント 三十月目
偽善者と船員集め その07
しおりを挟むなんだか、二人ずつ呼ぶことが決まりみたいになりつつある交渉。
ユウが連絡を入れて数分、これまた二人組がやってくる。
「ご主人様、ただいま来ました!」
「……まあ、呼ばれたから来たけど。話って何なのよ?」
「シャイン、とりあえずソファに座れ。イアも、話も座ったらするから」
黒い鎧を纏うシャインと、体の所々に蒼玉の鱗が生えたイア。
彼女たち(?)をまずは席に着かせ、改めて説明を行った。
「──イベントねぇ。まあ別に、参加すること自体は構わないわよ。ただ、あんたといっしょにっていうのは……」
「おい、ご主人様のご意向に逆らうのか?」
「黙りなさい、変態。ワタシはその、ご主人様とやらと話しているの。あんたがそこにとやかく言うのは、それこそご意向に逆らうってことじゃないの?」
「くっ……!」
いやいや、論破されないでくれよ。
イアが俺を拒否しようとするのは、なんとなく分かっていた。
アルカ同様、俺への反発心が強いからだ。
出会った頃の第一印象から、彼女にはだいぶ嫌われていた気がするからな……まあ、それをどうにかするのが交渉である。
「イア、どうしたら参加してくれるんだ?」
「そうねぇ……今は特に条件を課さないわ。だから、そのうちワタシの願い事を叶えてもらえるかしら?」
「内容によるんだがな……たとえばあるアルカみたいに、死ねとかいうのはなぁ」
「それも魅力的な提案だけど、それはアルカに譲ってあるからまた別の時に。もっと他に頼みたいことができたら、その時に言うわ」
命の危機に関わらないのであれば、別に構わないというのが本音だ。
しかし、一人の願い事を叶えるとなら、他の者にも同様のことをしないといけない。
「その願いの規模が分からないから、簡単にYESとは言えないな。だからそうだな、俺からも一つ提案をしてもいいか?」
「提案?」
「単純に、貢献度だな。イベントがどういう感じでランキングとかをするか知らないが、眷属に頼んで何らかの形で判定をしてもらってみる。その順位が高い順に、規模のデカい願い事ができるって感じだ」
「……悪くないわね。最悪、些細な願いが浮かんでもそれを叶えてもらえるみたいだし」
周りを見てみるが、そこまで否定的な表情は見えない。
何やら企んでいる奴も混ざっているが……そこはまあ、そのうち対策を考えよう。
「じゃあ、参加ってことでいいか?」
「いいわよ……って、ユウはどうしたの? 急に残念そうな顔をして」
「最初は師匠がみんなを口説いていたんだけど、全然それが聞けなくなっちゃって」
「……どういう思考なのか分からないけど、少なくともワタシはごめんよ。それに、そういうのって、人に見られながら聞かされるものでもないじゃない」
少し外套に付いたフードを深く被り直し、そんなことを言うイア。
周囲はなぜかニマニマ……理由はさっぱりだが、女性同士分かることがあるのかもな。
「シャイン、分かるか?」
「さぁ、何のことでしょうか?」
「だよな……あっ、そうだ。お前は参加するのか?」
「無論! ご主人様のご命令とあらば、どのようなことでも致す所存です!」
シャインがそういうことは、予め分かっていたことなので、再度確認する。
こいつはMでTSな変態だが、それでも複数人の女性を要するクランの長だからな。
「あの子たちはどうするんだ? こういうクラン単位で参加するイベントなら、やっぱりいっしょに参加したいんじゃないか?」
「ご安心を。そう言われると思い、このような物を持っていけと」
「魔道具? ああ、メッセージ系のヤツか」
記述した内容を投影し、手紙のように使うことができるアイテム。
内容を消せば再度書けるバージョンは、貴族とかが重用しているとかしてないとか。
お高いモノだと、特定の魔力波長じゃないと開示できないが……今回の物はお安め、一回切りの平民仕様だ。
「えっと、何々……『こちらのことはお気になさらず。私たちは、シャインさんとの共同作業を見せていただければ充分です』っと。いろいろと濁しているけど、まあ向こうが問題ないって言うならそれでいいか」
悪意ではないが、言葉の裏々に何らかの企みを感じる文面だった。
彼女たちはシャインの変化を受け止めた連中だし……たぶん、そういうことかな?
まあそれも、ゲームだからという認識が強いからだろう。
仮初の出会いだからこそ、受け止められるわけで……現実だったら殺されてたな。
「実際の所、お前はどう考えているんだ? 本心を語れ」
「……好かれて、悪い気はしません。俺のダメなところを見て、それでもいっしょに冒険してくれていますから」
「まあ、クランの在り方なんて場所それぞれだしな。ここがバラバラなのと同じように、そこが拠り所な奴らもいるか。もし協働できるなら、そのときは少し手伝うとしよう」
「はっ、ありがとうございます!」
出会った当初は生意気なガキという印象しか持てなかったが、ずいぶんと変わったモノだよな……この変化は俺だけじゃない、彼女たちの影響でもあるのだろう。
そんな風に上手く纏めたかったが、結構無理があるよな。
俺とシャインで手伝いに行った暁には……間違いなく、ネタにされるに違いない。
0
お気に入りに追加
510
あなたにおすすめの小説
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
DPO~拳士は不遇職だけど武術の心得があれば問題ないよね?
破滅
ファンタジー
2180年1月14日DPOドリームポッシビリティーオンラインという完全没入型VRMMORPGが発売された。
そのゲームは五感を完全に再現し広大なフィールドと高度なグラフィック現実としか思えないほどリアルを追求したゲームであった。
無限に存在する職業やスキルそれはキャラクター1人1人が自分に合ったものを選んで始めることができる
そんな中、神崎翔は不遇職と言われる拳士を選んでDPOを始めた…
表紙のイラストを書いてくれたそらはさんと
イラストのurlになります
作品へのリンク(https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=43088028)
虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
俺と異世界とチャットアプリ
山田 武
ファンタジー
異世界召喚された主人公──朝政は与えられるチートとして異世界でのチャットアプリの使用許可を得た。
右も左も分からない異世界を、友人たち(異世界経験者)の助言を元に乗り越えていく。
頼れるモノはチートなスマホ(チャットアプリ限定)、そして友人から習った技術や知恵のみ。
レベルアップ不可、通常方法でのスキル習得・成長不可、異世界語翻訳スキル剥奪などなど……襲い掛かるはデメリットの数々(ほとんど無自覚)。
絶対不変な業を背負う少年が送る、それ故に異常な異世界ライフの始まりです。
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる