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偽善者と廻る縁 二十八月目
偽善者と自己紹介 その48
しおりを挟む夢現空間 居間
レンと迷宮を造り終えて、次に向かう場所の準備期間。
俺はいつものように撮影用の機材を準備して、始める前にまったりとしていた。
「……ティンスやオブリは、そんな風にしているのか」
「よろしいのですか? わたくしたちを介しての情報収集のみで。彼女たちも……」
「いいんだ。アイツらは祈念者、現実世界での生き方もある。廃人に巻き込む覚悟がない限りは、求めらるまではこれぐらいの距離感がいいだろう」
初めての祈念者の眷属である二人。
彼女たちは武具っ娘に認められ、武具を創造してもらうほどに親和性が高い。
だが、それでも彼女たちの本質はもう一つの世界に在る。
……この世界で家族を創った今、俺には引退という二文字は存在しない。
「いいんだよ。ほら、そろそろ始めよう……第四十八回質問タイムだ。今回のゲストはこのお方──どこからでも癒すことのできる、弓の天使チーさんとなります」
「えっと、そのような呼び方が……よろしくお願いします」
まあ、チーは本気で彼女たちのことを心配している。
ならば俺も、相応の配慮をするさ……今はまだ、そのときじゃないだけでな。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「問01:あなたの名前は?」
「チーです」
「問02:性別、出身地、生年月日は?」
「女、出身・生年月日共に不明ですね」
「問03:自分の身体特徴を描写してください」
「熾天使としての特徴である翼、そして馬芻虞の特徴である髪色や耳でしょうか。後は、尻尾も長いですね」
「……なお、種族名は表示できないのでそれらしくしています。撮影後の字幕を見ている奴は、間違えないようにな」
「問04:あなたの職業は?」
「【月弓王】。月の光を矢に変換し、使うことができますよ」
「問05:自分の性格をできるだけ客観的に描写してください」
「そうですね……少しばかり、深く物事を考えてしまう気があるかもしれませんね」
「問06:あなたの趣味、特技は?」
「人助け、でしょうか。【救恤】の武具っ娘なのですから、当然でしょうか」
「いや、チー自身がそういうことを進んでできるイイ子なだけだからな」
「問07:座右の銘は?」
「一日一善。その積み重ねが、誰かを救えると信じています」
「問08:自分の長所・短所は?」
「他者を手助けすることができるのは長所だと思いますが、自分から何かを始めるというのが苦手なことでしょう」
「問09:好き・嫌いなもの/ことは?」
「好きなことは人助け、嫌いなことは逆にそれが必要となることを成すことですね」
「問10:ストレスの解消法は?」
「ゆっくりと湯に漬かることですね。特に種族特徴とは関係ないのですが……あの娘と共に入ったからでしょうか?」
「問11:尊敬している人は?」
「自明の理であるわが君や他の眷属たちを除けば……オブリでしょうね」
「へぇ、その理由は?」
「わが君たちを除けば、もっとも長く観ていた娘ですから。彼女がどのように、この世界で生きているのかを知っているのです」
「問12:何かこだわりがあるもの/ことがあるならどうぞ」
「人助けの在り方でしょうか。わが君が偽善に信念を掲げるように、わたしくもまた救い方に信念があるのです」
「問13:この世で一番大切なものは?」
「命。等しくあるからこそ、一つひとつを大切にするのです」
「問14:あなたの信念は?」
「座右の銘で語ったように、誰かを救うために尽力することですね」
「問15:癖があったら教えてください」
「獣人たちと同じように、感情の起伏に合わせて耳や尻尾が動いてしまうことですね」
「問16:ボケですか? ツッコミですか?」
「ツッコミです」
「問17:一番嬉しかったことは?」
「わが君がわたくしを必要とし、呼んでいただいたときでしょうか」
「問18:一番困ったことは?」
「それまでが長く、オブリを見ることばかりだったことですね」
「……あー、すまん」
「問19:お酒、飲めますか? また、もし好きなお酒の銘柄があればそれもどうぞ」
「飲めますが、特に決まった銘柄にこだわりはありません」
「問20:自分を動物に例えると?」
「見ての通り、獣人としての要素も兼ね揃えていますので……馬芻虞でしょう」
「問21:あだ名、もしくは『陰で自分はこう呼ばれてるらしい』というのがあればどうぞ」
「俗な方は、『ケモ耳天使』と仰っていましたね。三名ほど」
「…………」
「問22:自分の中で反省しなければならない行動があればどうぞ」
「これはオブリのことなのですが、わたくしと言葉を交わした影響で、少々傷ついてしまうことがありました……」
「でも、オブリは後悔していないと」
「はい。ですので、そのことを少し」
「問23:あなたの野望、もしくは夢について一言」
「手を伸ばせる先にある命を、一つでも多く救い続けることです」
「問24:自分の人生、どう思いますか?」
「わたくしの人生はわが君を支えるためのモノ。わが君が届かない手を、わたくしが代わりに掴むのです」
「問25:戻ってやり直したい過去があればどうぞ」
「それには及びません。オブリのことも、わたくしだけが後悔していることですので」
「問26:あと一週間で世界が無くなるとしたらどうしますか?」
「それでも、わたくしは救いを止めません」
「問27:何か悩み事はありますか?」
「そうですね……わが君がわたくしを必要とする機会が来ないこと。ですがそれは、わが君が命に危機にさらされていないとても良いこと……その矛盾に悩んでいます」
「まあ、俺も意図して死にかけたいわけじゃないからな。何かあったら頼らせてもらう」
「問28:死にたいと思ったことはありますか?」
「一度もありません。そもそも、生まれてからそう長くもありませんので」
「問29:生まれ変わるなら何に(どんな人に)なりたい?」
「これもまた、考えるほど時間が無かったのですが……そうですね、ボランティアの方々のようになりたいですね」
「問30:理想の死に方があればどうぞ」
「周囲で何も命の危険が無い、誰もが命を大切にできる時間の中で……ゆっくりと」
「問31:何でもいいし誰にでもいいので、何か言いたいことがあればどうぞ」
「こほんっ。皆さん、命を大切に」
「問32:最後に何か一言」
「それはわが君もまた同じこと。どうか、わたくしたちにその命を守らせてください」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「はい、カット! お疲れ様、チー」
「はい……あの、二人のことですが」
「分かってるさ。次の街に、二人も行ったことはあるだろう。少し話をしてから、次にやるべきことをやろう」
「……ありがとうございます、わが君」
いろいろと話したいことは、俺にもあったからちょうどいい。
この世界で、どんなことを体験したのか、ゆっくり聞かせてもらおう。
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