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偽善者とお祭り騒ぎ 二十六月目
偽善者と自己紹介 その46
しおりを挟む夢現空間 居間
あれからいろんなことがあった。
イベントを終わらせた後、俺はすぐに国民たちを対象とした祭りを開いたのだ。
ある程度ノウハウも学べたし、さっそくやろうと……まあ、もう完全にノリである。
眷属も全員呼びだし、知り合いの祈念者も招いての大騒ぎ。
コロシアムとかオークションとか宝探しもなく、小規模の夏祭りぐらいだったんだが。
それでも子供たちは喜んでくれたし、大人たちも楽しめたと言っていた。
最後は俺とアルカで花火を打ち上げ、その流れでなぜか天空を舞台にした魔法合戦を繰り広げたりもしたが……うん、命からがら生き延びましたよ。
「今回は助かったよ。悪いな、大道芸みたいなことをやらせて」
「気にするでない。妾たちとノゾムの仲ではないか。それよりも、少々出番が少なかったのではないか? 外の者たちにも行った祭りのように、妾たちも何か警備やら何やらをした方がよかったじゃろうに」
「……俺がお爺さんとお婆さんに怒られるだろうよ。ポーションで元気になったから、その分意見もしてくるようになったし」
「なるほど。道理で孫の──」
『わぁあああああああ! な、なんでもありません、なんでもありませんからね!』
会話を遮るように念話がキーンと脳内で響き渡る……だがまあ、思考を増やしているので、内容はちゃんと聞き取れた。
だが、武士の情けというやつもあるし、目の前の少女が聞かなかったことにしろという視線をニヤニヤと笑みを浮かべながら言外に告げているので聞かなかったことにする。
「じゃあ、そろそろ始めるか! 第四十六回質問タイムのお時間でーす! 本日のゲストはこのお方──美しき月の姫──輝夜様となります!」
「この説明……前回も聞いたのじゃが」
「じゃあ、どう説明すればいいんだ? 月の罪人か? それとも宝具の正当な主か?」
「なんと風靡の欠片も無い。あるじゃろう、もっとこう……妾のこの美を語る素晴らしい言葉が!」
残念ながら俺には思いつかなかったので、リテイクもせずにそのまま続行。
俺としては、二人を表す最高の呼び名だと思うんだが……ダメなんだろうか?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「問01:あなたの名前は?」
「輝夜じゃ」
「問02:性別、出身地、生年月日は?」
「性は女、生まれは竹の中、生年月日はかぐやと同じじゃ」
「問03:自分の身体特徴を描写してください」
「決まっておろう! この艶のある黒き髪と黒曜石のような瞳! そして何より、月の民特有の色白で美しい顔立ち!」
「……自分でそこまで言うことか? ほら、かぐや様の方が恥ずかしがってるぞ」
『……あぅぅ』
「問04:あなたの職業は?」
「【五宝月姫】、これは月の世界には無かった職業じゃな。あの経験を経て、妾用に与えられた力というわけじゃ」
「らしいな。童話の奴らは全員、固有の職業が就いているいるし」
「問05:自分の性格をできるだけ客観的に描写してください」
「妾は『かぐや』と違い、思ったことははっきりというぞ。それこそ──竹を割るようにな!」
「『…………』」
「な、なんじゃ二人して!」
「問06:あなたの趣味、特技は?」
「自然を見ることじゃ。『かぐや』は星を観るために上を見ることが多いのじゃが、妾はとうに見飽きているのでな。代わりにかつて遠くから眺めたこの世界を見ておるよ」
「問07:座右の銘は?」
「『玉磨かざれば光なし』、じゃ。妾に問題など無いが、『かぐや』がな……もっと自信があれば、すぐにでも手玉にできると思うのじゃが」
「手玉って……何をだ?」
『な、なんでもありません! 次、次に行きましょう早く!』
「問08:自分の長所・短所は? さて、前回は『輝夜』様の長所と短所を『かぐや』様に答えていただきましたので、今回はその逆としましょう」
「つまり妾が『かぐや』のものを答えればよいのじゃな? ……そうじゃな、長所はしっかりと物事を考えていること。短所はそれゆえに長考し、いつまで経っても動けずにいることじゃな」
「問09:好き・嫌いなもの/ことは?」
「ここは『かぐや』と同じじゃな。好きなものも嫌いなものもどちらも月じゃ」
「それって理由は?」
「妾にはそこまで深い理由はないぞ。単純に生まれた場所であり、追放された場所であるからじゃ」
「問10:ストレスの解消法は?」
「特に感じたことがないからのぅ。話し合い手であれば『かぐや』がおるし、不自由は感じておらぬ。もどかしさはあるがの」
「問11:尊敬している人は?」
「『かぐや』じゃな。妾の業を背負わせてしまったというのに、何も気にしておらん」
『私と『輝夜』様は一心同体、何も気にすることなどありません』
「──というのじゃから。本当に、優しい子じゃよ」
「……なんか、お祖母ちゃんみたいだぞ、その言い方」
「なんじゃと!?」
「問12:何かこだわりがあるもの/ことがあるならどうぞ」
「妾の美、そして宝具じゃな」
「……『かぐや』様とは大違いだな」
「妾の悪い点は『かぐや』が、『かぐや』の悪い点は妾が改善しているのじゃから問題ないのじゃ」
「問13:この世で一番大切なものは?」
「ふむ……宝じゃな。宝具だけでなく、ノゾムや『かぐや』を含む家族もな」
「問14:あなたの信念は?」
「『かぐや』の幸せを優先することじゃな。本来、妾が前世のようなもの。それでもここに居られるのは、『かぐや』がそれを望んでくれたからこそじゃしな」
「問15:癖があったら教えてください。これもまた、逆でお願いしますね」
「『かぐや』はそうじゃな、少し不安になるとすぐに相談をしてくるな。癖、というよりも当たり前じゃな」
「問16:ボケですか? ツッコミですか?」
「ツッコミじゃよ」
「『…………』」
「問17:一番嬉しかったことは?」
「あの迎え共を追い返したときじゃな。こうスカッとしたぞ」
「問18:一番困ったことは?」
「全然勇気が足らぬ娘と、うつけな男の間を取り持つことに苦労しておるな。まあ、これは妾にとっても死活問題、いずれはどうにか解決するつもりじゃがな」
「問19:お酒、飲めますか? また、もし好きなお酒の銘柄があればそれもどうぞ」
「あれじゃな、『うぃすきー』の『ろっく』じゃ。井島酒もよいのではあるが……カッとなる感覚がたまらん!」
「問20:自分を動物に例えると?」
「孔雀じゃな。あの美しき羽を広げる姿、動物の美であろう」
「問21:あだ名、もしくは『陰で自分はこう呼ばれてるらしい』というのがあればどうぞ」
「昔はただ姫、そう呼ばれていた」
「問22:自分の中で反省しなければならない行動があればどうぞ」
「『かぐや』を思いつめさせるような、身の上があることじゃな。なんとも数奇な運命ではあるが、あまり気にしてないんじゃがな」
「問23:あなたの野望、もしくは夢について一言」
「この世すべての宝を手に入れる……なんてどうじゃ?」
「問24:自分の人生、どう思いますか?」
「妾の人生は終わった。今は『かぐや』のものじゃ。あくまでも、間借りさせてもらっている同居人といったところじゃな」
『そんなことは……!』
「いいんじゃよ。それに、『かぐや』がどう言おうとこれが妾の認識じゃ」
「問25:戻ってやり直したい過去があればどうぞ」
「特にない。これこそが、妾の自ら望んだ道なのじゃから」
「問26:あと一週間で世界が無くなるとしたらどうしますか?」
「変わらぬ妾として、生き続けよう」
「問27:何か悩み事はありますか?」
「先ほどの困ったことと同じじゃよ」
「問28:死にたいと思ったことはありますか?」
「これっぽっちもないの」
「問29:生まれ変わるなら何に(どんな人に)なりたい?」
「もうすでに生まれ変わっておるが……また別の存在として、『かぐや』に会ってみたいかの」
「問30:理想の死に方があればどうぞ」
「いや、死にたくないんじゃが」
「問31:何でもいいし誰にでもいいので、何か言いたいことがあればどうぞ」
「『かぐや』、そろそろ妾もただ見ているのも飽きてきたぞ」
「問32:最後に何か一言」
「いつまでもただ見ているだけならば……妾が奪ってしまうぞ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「はい、カット! ……ってうわ!」
『か、か、『輝夜』様!?』
「ふわっははは! 何、『かぐや』が何もしないのであればの話じゃ。手に入れられるのであれば、それは自ずと妾のモノにもなる。逆もまた然りじゃよ」
『で、ですが……』
二人の共同財産、みたいな言い方だな。
何を欲しているのかは分からないが……手伝えるなら、俺も協力しようか。
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