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偽善者とお祭り騒ぎ 二十六月目

偽善者と夢現祭り三日目 その13

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先日は大量更新をしていますので、まだの方はぜひそちらから
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 創作物で見た、簡易的な脊椎圧迫のような技術をやってみた。
 スレスレを掠らせることで、殺さずに首より下を動かせなくなるようにするらしい。

 そんなにわか知識でも、この世界では能力値とスキルさえあれば実行可能となる。
 今は縛り中なので、全部を[イニジオン]頼りでやってみたんだけどな。


「ふぅ、気分はどうかね?」

『……何をしたのかな?』

「少々狙撃をしただけさ。人のイベントを台無しにする、悪い子にお仕置きをするためにね。君があのハンドレッド……いや、祈念者の『ルサード』君で構わないかな?」

『なっ、どうしてそれを……』


 鑑定眼を使えば分かることだが……これもまた、今は縛りで使えない。
 こちらはアンからの事前情報、やはり捕縛役が正体を知っているのは定番だからな。

 変声の魔道具が高級品だからか、動揺していても声自体に違和感はない。
 口に出していなければ、驚いていることに気づけなかっただろう。


「改めまして。私が主催者だ、初日のアレは少しばかり畏怖を与えておかないといけないからと、部下たちに指示されたものでね。恥ずかしながら、演じさせてもらったよ」

『……とても上手な演技だったよ。ぜひとも私にも、教えてほしいかな』

「ああ、それはぜひに。ただし、君を牢屋へ連れ込んだ後にね」


 アンの仕込みによって、俺たちが居る場所は俺が早朝まで居た処刑場。
 全員が死に戻っているので、それまでの惨劇の跡はすでに掃除済み・・・・

 怪盗ルサードはそこがただの土壁に阻まれた場所としか思わず、逃げ道を考えている。
 逃がすわけにはいかない……完全な包囲網が必要だな。


「──『捕らえよ』、[グレイプニル]」

『くっ、これは……』

「一時的な[ログアウト]、および長距離転移を封じさせてもらったよ。君の行動自体は阻害しないよう調整したから、好きなように暴れるといいさ。ちなみに、解除方法は二つだけ──殺すか、抜け出すかだ」


 自分か使用者を殺す……まあ、当然外れるよな。
 後者もまた、道理である……怪盗だから、外れることもいちおう予期している。

 ちなみに[グレイプニル]は鎖状態だが、あれから紐状にもできるようになった。
 だからこそ、鞭術でも糸術でも使えるようになったわけで──


「あまり抗うことはオススメしない。こんなことも、できるからね──“無理強糸オールライト”」

『くっ、この痛みは……』

「声が上がらないから、あまり反応が掴めないね。体を少々強引に、かつ正確に操れる武技さ。さあ、大人しくアイテムを渡すのであれば罪状を一考しようじゃないか」

『……断る。あいにく私は、返すために盗む義賊ではないからね』


 武技はすでに解除しており、怪盗は違和感が無いかを確かめている。
 先ほども言った通り、行動自体は阻害しないはずなんだけどな。


「逃げるには私を殺すことがもっとも早い。そして私は、君を殺すことですべての神器を回収するつもりだ」

『……それができるとでも?』

「できるとも。主催者の権限で、奪われたアイテムであれば徴収可能だ。ただし、しっかりと殺す必要があるがね」


 これは本当の話。
 条件として、戦闘不能状態にしなければいけないというだけで、別に殺さなくてもいいという点以外は。

 だがこう言っておけば、殺されまいと抗うはずだ。
 実際、ただ逃げるつもりだった意識が、少なくとも正当防衛ぐらいに上がっている。

 俺も対抗するように武器を用意する。
 縛りは捕縛・封印なのだが……意外と捕物道具という物は数が多く、俺が考えていたよりも多種多様な武具が使えた。


「知っていますか? 昔は多少殺傷能力が高くとも、捕縛するためには使われていた武器があるんですよ」

『その大太刀、そんな体で振るえるのか?』

「ご安心ください。鍛えていますので、この程度ならば簡単にできますよ」


 ティル師匠に教わった剣技を見せ、それを証明しておく。
 両手で柄を握ってぶんぶんと振り回す……片手でもできるけど、隠しておいた。


「では、始めましょう」

『ああ、正々堂々、な』


 開始早々、煙玉のような物を地面に叩き付けて視界を奪う。
 気配も探知できない念入りな行動をしたあと怪盗は──上に逃げていた。


「ご理解いただけなかったようで」

『あぁあああああああ』

「……不思議な魔道具ですね。叫んでも、声自体に震えが乗らないとは」


 遠隔操作で[グレイプニル]を使い、再び“無理強糸”を行使しただけ。
 ただし体を操るというより、強引に痛みで苦しむように──腕を曲げただけだ。

 人間の限界を超えた動きを、怪盗の体は成していた。
 腕があらぬ方向を向くその姿は、悲痛でしかない。

 痛みで制御を失ったのか、地面に再び墜落する怪盗。
 ギリギリで何かが体を包み、衝撃だけは免れていたようだが。


「大人しくアイテムを返した方が、君のためだとは思うのだがね。まだ、君は抗うというのかな?」

『……当然』

「そうかい。なら、もう少しこれを続けて君には正直になってもらおうじゃないか」


 まだ死なれては困るので、“回復ヒール”を使い体を癒す。
 ただし腕は直さず、今の状態で強引に固定したうえで。

 直すにもまた痛みが走るし、俺は何度でもそれを行える。
 ……いつまで粘れるのか、さてじっくりと嬲っていこう。


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