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偽善者とお祭り騒ぎ 二十六月目
偽善者と夢現祭り三日目 その12
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連続更新です(12/12)
これが最後となります
===============================
≪以上を持ちまして、オークションは終了となります。大変お疲れさまでした。落札者の方は、ステージにお上がりください。お支払いをご確認後、落札物をお渡しします≫
アンによる偽りの終了宣言を受けて、動き出す人々。
落札できた者は歓喜の表情を、できなかった者は悔しいという表情を浮かべている。
誰も彼もが、イベントはこれで終わりだと信じていた。
そして、それゆえに新たなイベントを引き起こそうとする者もまた現れる。
「──テメェら、全員大人しくしやがれ!」
ステージの上で鳴り響く爆発音。
足を止め、そちらを向けばそこに現れたのは──無数の男たち。
「これより、ここは我ら『バンディット』が占拠させてもらう! 貴様らは俺たちの人質となり、交渉の材料になってもらう!」
「解放の条件はただ一つ、オークションに出た全アイテムの所有権が俺たちのモノになった場合だけ! それまでお前たちは、ここから出ることを許さん!」
「安心しろ、お前らからアイテムを奪おうとは考えていない。無駄なことをするより、ここにある神器を全部奪った方が儲かるんだからな!」
「司会役の女がいねぇみたいだが……仕方ない。人質をこさえるとしよう」
残念ながら、怪盗が暗躍する前の余興だったらしい。
彼らの情報は、アンがわざわざ連絡しないレベルの警戒度のようなので。
なぜ気にしていなかったかというと、それは注意不足というわけではない。
この場に居る者たちだけで、勝手に処理してくれる弱さだということだ。
「まずはテメェから……ぎゃぁ!」
「……無粋」
「だと、このクソガキ!」
「はぁ……殺れ」
会場に居た少女──ボスに目を付けた愚かな強盗の一人は、ボスの命令を受けて即座に動いた組の者に抹殺された。
何せ彼らは、ボスの導きを受けることで全員が何らかの限界を突破した『超越者』。
レベルが250に達した祈念者程度、軽く一捻りにすることができる。
ボス自身、動けば無双はできるが会場や俺の立場を考えて何もしないでくれていた。
そういった義理人情を考えてくれる……この世界のアウトローは、みんな優しい。
「すぐに鎮静化するだろうな。そうしたら、今度こそ始まるはずだ」
ボスたちが動き出したことで、その場にいる者たちも勝てると確信したようで。
自分の落札品を守るため、また何か報酬があると睨んで人々が戦い始める。
強盗たちは数の、質の力に敗れ去った。
これですべてが終わった、そう誰もが気を緩めたそのとき──会場中の照明が落ち、辺りに煙が漂い始める。
◆ □ ◆ □ ◆
そこからの展開はお察しだろう。
高笑いと共に怪盗が登場し、魔法が解除されて盗めるようになっていたアイテムの数々があっという間に奪われた。
ただ、神器との契約は俺が一時的に仮契約してあるため、そちらを解除するまではただ手に持つことしかできない。
要するに、その場で『強欲王の零次元袋』と契約して全部を盗み取り、捕えても奪い返せないという展開にはならないわけだ。
『待てー、ハンドレッド!』
ハンドレッドというのは、怪盗の二つ名である『百の顔』から取ったものらしい。
なぜそんな異名があるのかと言えば……別の機会に語ることにしよう。
怪盗プレイをする祈念者がいるように、某国際警察っぽいことをする者もいた。
警備員たちと共に定番の追いかけをして、怪盗からアイテムを取り返そうと頑張る。
だがまあ、怪盗も怪盗で用意したアイテムでそれらを掻い潜り逃げ回っていた。
そしてそんな様子は──現在、ライブ放送されている。
「とりあえず会場から逃がして、善人と悪人たちを嵌めたあそこに誘導しよう。アン、頼めるか?」
《メルス様はどのようになされますか?》
「俺はここで、まず狙撃だ。アニメで見たとき、成功してたから一度やってみたいと思っていたんだよな」
使う相棒は神器イニジオン。
正式名は『神魔穿銃[イニジオン]』。
狙撃銃のモードにして固定したそんな神器が現在、その銃身を会場に向けていた。
「生かすには……“無限射程射撃”、“一発必中”、“貫通”っと。“無音射撃”とついでに“隠身射撃”もセット」
狙撃特化の神器は、神すらも殺し得る。
己自身が神器である以上、同族殺しという咎を背負った逸品。
逃亡中の怪盗は、神器の不壊性を利用した防御まで使っている。
なので修復はあとでするにしても、最悪の場合を考慮してイニジオンを投入した。
どこまでも届き、一発目は絶対に命中し、あらゆる防御を貫通する。
おまけにギリギリまで射撃に気づけないという、超チートな効果を乗せた弾丸。
それが今、会場から逃亡するであろう怪盗に向けて放たれる予定だ。
アンの連絡によると、もう間もなく抜け出してくるらしい。
《メルス様》
「了解。あれだけ派手に出れば、誰だって気づけるだろう」
レンズではなくイニジオンに仕込んである千里眼スキルを使い、片目の視界だけを会場へ向けて飛ばす。
登場の際にも出していた煙を抜けて、勢いよく空へ飛び立つ怪盗を捕捉した。
捉えた時点で弾丸を放つための条件は満たされた──あとはトリガーを引くだけ。
「墜ちろ、怪盗──“魔弾生成”」
魔力の弾丸を生みだし、逃げ去る怪盗に向けて放つ。
その行き先は怪盗の首筋、だがその銃弾はかすめるだけに終わる。
しかしそれでよかったのだ。
怪盗はふらりと体を揺らすと──そのまま地面に墜ちていったのだから。
これが最後となります
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≪以上を持ちまして、オークションは終了となります。大変お疲れさまでした。落札者の方は、ステージにお上がりください。お支払いをご確認後、落札物をお渡しします≫
アンによる偽りの終了宣言を受けて、動き出す人々。
落札できた者は歓喜の表情を、できなかった者は悔しいという表情を浮かべている。
誰も彼もが、イベントはこれで終わりだと信じていた。
そして、それゆえに新たなイベントを引き起こそうとする者もまた現れる。
「──テメェら、全員大人しくしやがれ!」
ステージの上で鳴り響く爆発音。
足を止め、そちらを向けばそこに現れたのは──無数の男たち。
「これより、ここは我ら『バンディット』が占拠させてもらう! 貴様らは俺たちの人質となり、交渉の材料になってもらう!」
「解放の条件はただ一つ、オークションに出た全アイテムの所有権が俺たちのモノになった場合だけ! それまでお前たちは、ここから出ることを許さん!」
「安心しろ、お前らからアイテムを奪おうとは考えていない。無駄なことをするより、ここにある神器を全部奪った方が儲かるんだからな!」
「司会役の女がいねぇみたいだが……仕方ない。人質をこさえるとしよう」
残念ながら、怪盗が暗躍する前の余興だったらしい。
彼らの情報は、アンがわざわざ連絡しないレベルの警戒度のようなので。
なぜ気にしていなかったかというと、それは注意不足というわけではない。
この場に居る者たちだけで、勝手に処理してくれる弱さだということだ。
「まずはテメェから……ぎゃぁ!」
「……無粋」
「だと、このクソガキ!」
「はぁ……殺れ」
会場に居た少女──ボスに目を付けた愚かな強盗の一人は、ボスの命令を受けて即座に動いた組の者に抹殺された。
何せ彼らは、ボスの導きを受けることで全員が何らかの限界を突破した『超越者』。
レベルが250に達した祈念者程度、軽く一捻りにすることができる。
ボス自身、動けば無双はできるが会場や俺の立場を考えて何もしないでくれていた。
そういった義理人情を考えてくれる……この世界のアウトローは、みんな優しい。
「すぐに鎮静化するだろうな。そうしたら、今度こそ始まるはずだ」
ボスたちが動き出したことで、その場にいる者たちも勝てると確信したようで。
自分の落札品を守るため、また何か報酬があると睨んで人々が戦い始める。
強盗たちは数の、質の力に敗れ去った。
これですべてが終わった、そう誰もが気を緩めたそのとき──会場中の照明が落ち、辺りに煙が漂い始める。
◆ □ ◆ □ ◆
そこからの展開はお察しだろう。
高笑いと共に怪盗が登場し、魔法が解除されて盗めるようになっていたアイテムの数々があっという間に奪われた。
ただ、神器との契約は俺が一時的に仮契約してあるため、そちらを解除するまではただ手に持つことしかできない。
要するに、その場で『強欲王の零次元袋』と契約して全部を盗み取り、捕えても奪い返せないという展開にはならないわけだ。
『待てー、ハンドレッド!』
ハンドレッドというのは、怪盗の二つ名である『百の顔』から取ったものらしい。
なぜそんな異名があるのかと言えば……別の機会に語ることにしよう。
怪盗プレイをする祈念者がいるように、某国際警察っぽいことをする者もいた。
警備員たちと共に定番の追いかけをして、怪盗からアイテムを取り返そうと頑張る。
だがまあ、怪盗も怪盗で用意したアイテムでそれらを掻い潜り逃げ回っていた。
そしてそんな様子は──現在、ライブ放送されている。
「とりあえず会場から逃がして、善人と悪人たちを嵌めたあそこに誘導しよう。アン、頼めるか?」
《メルス様はどのようになされますか?》
「俺はここで、まず狙撃だ。アニメで見たとき、成功してたから一度やってみたいと思っていたんだよな」
使う相棒は神器イニジオン。
正式名は『神魔穿銃[イニジオン]』。
狙撃銃のモードにして固定したそんな神器が現在、その銃身を会場に向けていた。
「生かすには……“無限射程射撃”、“一発必中”、“貫通”っと。“無音射撃”とついでに“隠身射撃”もセット」
狙撃特化の神器は、神すらも殺し得る。
己自身が神器である以上、同族殺しという咎を背負った逸品。
逃亡中の怪盗は、神器の不壊性を利用した防御まで使っている。
なので修復はあとでするにしても、最悪の場合を考慮してイニジオンを投入した。
どこまでも届き、一発目は絶対に命中し、あらゆる防御を貫通する。
おまけにギリギリまで射撃に気づけないという、超チートな効果を乗せた弾丸。
それが今、会場から逃亡するであろう怪盗に向けて放たれる予定だ。
アンの連絡によると、もう間もなく抜け出してくるらしい。
《メルス様》
「了解。あれだけ派手に出れば、誰だって気づけるだろう」
レンズではなくイニジオンに仕込んである千里眼スキルを使い、片目の視界だけを会場へ向けて飛ばす。
登場の際にも出していた煙を抜けて、勢いよく空へ飛び立つ怪盗を捕捉した。
捉えた時点で弾丸を放つための条件は満たされた──あとはトリガーを引くだけ。
「墜ちろ、怪盗──“魔弾生成”」
魔力の弾丸を生みだし、逃げ去る怪盗に向けて放つ。
その行き先は怪盗の首筋、だがその銃弾はかすめるだけに終わる。
しかしそれでよかったのだ。
怪盗はふらりと体を揺らすと──そのまま地面に墜ちていったのだから。
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