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偽善者とお祭り騒ぎ 二十六月目
偽善者と夢現祭り三日目 その11
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連続更新です(11/12)
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神器の銘は『錬水の大瓶』。
錬金術のように魔力を流すだけで、無限に水を得ることができる……ある意味、砂漠における秘宝にもなり得る逸品だ。
だが一部の者がキレたように、水を出すこと自体に問題がある。
あらゆる水を用意できる、それは聖水もまた同じこと……ここだ。
一部の宗教において、聖水は自分たちにしか用意できない物として商売をしている。
実際にこの世界では効果があるので、霊験あらたかな物としてがっぽりだ。
しかし、神器とはいえ無限にコピーされては溜まったものではない。
ちなみにこれ、液体なら魔力さえあれば何でもコピー可能だ……毒でも薬でもな。
≪──100番さん、100億Yで落札でございます。おめでとうございます≫
100億を出すだけの価値が、今回の神器には存在する。
一滴でも貴重な液体を得れば、それを無尽蔵に増やせるわけだし……誰でも欲しい。
吸血鬼であれば最高級な血を、大富豪であれば延命の薬を、冒険者であればポーションと種類はさまざま。
相応の魔力が必要という問題付きだが、メリットがデカすぎるので誰も気にしない。
誰が勝ったのか詳細は分からないが、俺から見た勝者は冒険者っぽい格好だ。
少なくとも、自分の体で稼いだ金で得たみたいだ……稼ぎ方は気にしないとして。
周りにパーティーメンバーもいるので、何かの目的用の金を使わせてしまったようだ。
「まあ、それはいいや。これも盗まれるとなるとな……可哀想な気がしてきた」
あえてなのだが、『強欲王の零次元袋』と違ってこちらは契約式ではない。
むしろこれは、誰でも使える……いつでも盗めてしまうという問題点がある。
悪用されたときにどうにかできるよう、何も対策しないで設計しただけのこと。
神器もすべてがすべて、決して奪えないアイテムというわけではないのだ。
◆ □ ◆ □ ◆
≪さぁ、現れますは一枚の地図。今はただの白地図、しかし皆さまが紡いだ旅の数だけ、そこには真実のみが記されます。冠するその名は──『秘密の世界地図』≫
三つ目の神器が用意される。
再び祈念者たちは要らなさそうな反応をするのだが、ちゃんと彼らにだって興味を示させることができるアイテムなのだ。
≪地図は自動で記載され、契約者が知覚した情報を反映させます。拡大縮小も自在、空間が隔てられた階層も跨いで把握可能です≫
ここで盛り上がるのは迷宮の探索者たち。
迷宮は一定期間で地図が使えなくなり、改めて作り直さないといけない。
だが『秘密の世界地図』があれば、勝手に完璧な地図を用意してくれる。
しかもソナー的な魔法でも使えば、それだけで複数階層のはあくまでできるのだ。
これが当初予定していた、最後の神器。
保存する袋、生きるための水、知るための地図が揃っている……ある意味、これを三種の神器として売る予定だったんだよな。
≪では、始めてください≫
結構な数を繰り返しているので、開始の宣言はだいぶおざなりになっている。
まあ誰も気にしていないし、アイテムさえ手に入れば問題ないからな。
「──さて、結構捕まえたな」
一つ目の神器が出て以降、盗み出すために紛れ込む奴らが増えてきた。
一度契約してしまえば誰も奪えなくなる、そんな神器だったからだな。
それが二つ目でさらに増えた。
水瓶が苛烈な取り合いになって、負けた奴らが欲を高め……送り出してきたわけだ。
「貴様らが愚かだとは言わん。使命を与えられ、それに応えようとする忠義もある。神器という価値ある物を欲し、奪おうとする欲もある。一向に構わん、盗める物なら盗むがよい──だが、盗めるとは思うな」
一番最後の罠は、触れただけで体が止まる次元魔法。
しかしこの場で捕らえられているのは、誰もがそこまで辿り着かなかった者たち。
もちろん、この場には例の怪盗は混ざっていない。
最後に来るとそこは読めているし、今はつまらない盗人の相手をしよう。
「あいにく、貴様らを裁くための道具が無いからな。だが、ちょうどチケットが余っていたから。特別に案内しようではないか」
一部の者が、俺の取り出したアイテムに動揺する。
それは、バトルロイヤルもオークションも参加せずに求める者が居る貴重品。
──『決戦の招待状』、ユニーク種へと挑める招待状であった。
「その名は『覇天劉』。まだ見つかっていないゆえ、主催者権限で取り寄せた招待状だ。これを……今、使わせてやろう」
起動した招待状を盗人たちの足元で展開すれば、彼らはそれに引き摺り込まれる。
ちゃんと捕縛は解いておいたので、それなりに抗ってくれるだろう。
「三つの神器は出した。一度、ここでオークションが閉まるから動くだろう。さぁ、その姿を魅せろ怪盗よ」
まだまだ神器は残っているが、それらはすべてサプライズ扱い。
怪盗は今出ている『秘密の世界地図』が最後の出品と考え、準備しているはずだ。
条件は満たされ、彼あるいは彼女による舞台が幕を開く。
俺と雇われ警備員たちは、哀れに踊らされる人形役と言ったところか。
それ自体に手を出すつもりはないが、俺も演出家として第二幕のお手伝いをしたい。
そのためにすべきことは……うん、眷属に任せておこう。
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神器の銘は『錬水の大瓶』。
錬金術のように魔力を流すだけで、無限に水を得ることができる……ある意味、砂漠における秘宝にもなり得る逸品だ。
だが一部の者がキレたように、水を出すこと自体に問題がある。
あらゆる水を用意できる、それは聖水もまた同じこと……ここだ。
一部の宗教において、聖水は自分たちにしか用意できない物として商売をしている。
実際にこの世界では効果があるので、霊験あらたかな物としてがっぽりだ。
しかし、神器とはいえ無限にコピーされては溜まったものではない。
ちなみにこれ、液体なら魔力さえあれば何でもコピー可能だ……毒でも薬でもな。
≪──100番さん、100億Yで落札でございます。おめでとうございます≫
100億を出すだけの価値が、今回の神器には存在する。
一滴でも貴重な液体を得れば、それを無尽蔵に増やせるわけだし……誰でも欲しい。
吸血鬼であれば最高級な血を、大富豪であれば延命の薬を、冒険者であればポーションと種類はさまざま。
相応の魔力が必要という問題付きだが、メリットがデカすぎるので誰も気にしない。
誰が勝ったのか詳細は分からないが、俺から見た勝者は冒険者っぽい格好だ。
少なくとも、自分の体で稼いだ金で得たみたいだ……稼ぎ方は気にしないとして。
周りにパーティーメンバーもいるので、何かの目的用の金を使わせてしまったようだ。
「まあ、それはいいや。これも盗まれるとなるとな……可哀想な気がしてきた」
あえてなのだが、『強欲王の零次元袋』と違ってこちらは契約式ではない。
むしろこれは、誰でも使える……いつでも盗めてしまうという問題点がある。
悪用されたときにどうにかできるよう、何も対策しないで設計しただけのこと。
神器もすべてがすべて、決して奪えないアイテムというわけではないのだ。
◆ □ ◆ □ ◆
≪さぁ、現れますは一枚の地図。今はただの白地図、しかし皆さまが紡いだ旅の数だけ、そこには真実のみが記されます。冠するその名は──『秘密の世界地図』≫
三つ目の神器が用意される。
再び祈念者たちは要らなさそうな反応をするのだが、ちゃんと彼らにだって興味を示させることができるアイテムなのだ。
≪地図は自動で記載され、契約者が知覚した情報を反映させます。拡大縮小も自在、空間が隔てられた階層も跨いで把握可能です≫
ここで盛り上がるのは迷宮の探索者たち。
迷宮は一定期間で地図が使えなくなり、改めて作り直さないといけない。
だが『秘密の世界地図』があれば、勝手に完璧な地図を用意してくれる。
しかもソナー的な魔法でも使えば、それだけで複数階層のはあくまでできるのだ。
これが当初予定していた、最後の神器。
保存する袋、生きるための水、知るための地図が揃っている……ある意味、これを三種の神器として売る予定だったんだよな。
≪では、始めてください≫
結構な数を繰り返しているので、開始の宣言はだいぶおざなりになっている。
まあ誰も気にしていないし、アイテムさえ手に入れば問題ないからな。
「──さて、結構捕まえたな」
一つ目の神器が出て以降、盗み出すために紛れ込む奴らが増えてきた。
一度契約してしまえば誰も奪えなくなる、そんな神器だったからだな。
それが二つ目でさらに増えた。
水瓶が苛烈な取り合いになって、負けた奴らが欲を高め……送り出してきたわけだ。
「貴様らが愚かだとは言わん。使命を与えられ、それに応えようとする忠義もある。神器という価値ある物を欲し、奪おうとする欲もある。一向に構わん、盗める物なら盗むがよい──だが、盗めるとは思うな」
一番最後の罠は、触れただけで体が止まる次元魔法。
しかしこの場で捕らえられているのは、誰もがそこまで辿り着かなかった者たち。
もちろん、この場には例の怪盗は混ざっていない。
最後に来るとそこは読めているし、今はつまらない盗人の相手をしよう。
「あいにく、貴様らを裁くための道具が無いからな。だが、ちょうどチケットが余っていたから。特別に案内しようではないか」
一部の者が、俺の取り出したアイテムに動揺する。
それは、バトルロイヤルもオークションも参加せずに求める者が居る貴重品。
──『決戦の招待状』、ユニーク種へと挑める招待状であった。
「その名は『覇天劉』。まだ見つかっていないゆえ、主催者権限で取り寄せた招待状だ。これを……今、使わせてやろう」
起動した招待状を盗人たちの足元で展開すれば、彼らはそれに引き摺り込まれる。
ちゃんと捕縛は解いておいたので、それなりに抗ってくれるだろう。
「三つの神器は出した。一度、ここでオークションが閉まるから動くだろう。さぁ、その姿を魅せろ怪盗よ」
まだまだ神器は残っているが、それらはすべてサプライズ扱い。
怪盗は今出ている『秘密の世界地図』が最後の出品と考え、準備しているはずだ。
条件は満たされ、彼あるいは彼女による舞台が幕を開く。
俺と雇われ警備員たちは、哀れに踊らされる人形役と言ったところか。
それ自体に手を出すつもりはないが、俺も演出家として第二幕のお手伝いをしたい。
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