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偽善者とお祭り騒ぎ 二十六月目
偽善者と夢現祭り三日目 その08
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連続更新です(08/12)
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アルカからどうにか逃げ切った俺。
オークション会場はコロシアムを利用するため、午後の部の準備をすると言っても大した距離は移動しない。
転移で遠くへ逃げるのではなく、遠くへ逃げた痕跡を残して姿を隠した。
相手はアルカ、それがフェイクだと暴いたうえでいったん冷静な思考を取り戻すはず。
「だといいな……そうじゃなかったら、殺されるかもしれないし」
「いかがなさいましたか?」
「いや、何でもない。それよりも、作業に集中してほしい。魔法で多少手荒に扱っても平気にはしてあるが、何が起こるかは分からないからな」
「りょ、了解しました」
コロシアムもそうだが、オークションにもスタッフを雇って働かせていた。
基本的には赤色の民なのだが、一部祈念者たちもそこに混ざっている。
高報酬なのだが死ぬ危険もあり、契約書まで交わす必要があるという曰く付き。
それでも覚悟を決めてサインした者のみ、高報酬が得られるという仕組みだ。
……もちろん、それは表向きの理由だが。
「ちゃんと混ざっているようで何より。神器の情報を流しておいて正解だったな」
《異常者と思われてもおかしくはありませんからね。実際、そうなのでしょうけど》
「……まあ、そうかもな。けど、これもある意味立派な警備だろ? 過程はどうあれ、最後には捕縛されたコイツらが居るわけだし」
次元魔法で封じ込めたオークション用のアイテムを、盗もうとする怪盗や盗賊たち。
彼らがそういったスキルを用いてアイテムに触れると──仕掛けが作動する。
発動している“次元固定”が、その者にも作用するのだ。
体を次元ごと凍結されてしまえば、抗うこともできずに後は好き放題できる。
「アン、検挙率は?」
《80%、と言ったところですね。祈念者もこの世界に来てだいぶ経ちますので、何人かが優秀な力を手に入れているようです》
「超級も固有も、何であろうと凄そうなモノには相応の強さがあるんだよな。母数を覚えてないけど、そんなに多かったか?」
《数百人程度ですよ》
百も侵入しているとは……。
意図的にそれをし易くしているとはいえ、どうしてこうもいっぱい来たんだか。
お陰でコピーは捗るし、それを防ぐことで経験を積むことができる。
特に祈念者は死を厭わないので、そういった強硬に走ることが多いんだよな。
「さて、俺も準備をしないとな……神器はまだ出していなかったし」
次元魔法で保存する、そこまではできても防犯システムなどは拒絶してしまう神器。
薄っすらとだが意思を持っているので、そうなっていると思われる。
なので頑丈かつ特殊なケースの中に入れるだけで、あとは特に何もしない。
それを何とかするのが警備員であり、だからこそ手を伸ばすのが泥棒たちだ。
「神器以外にもいろいろと揃えてあるから、一人ぐらいは成功してほしい。適性のありそうな物も混ぜてあるから」
《その確率は高いですね。すでにスキルを発現させたり、超級に至った者などが出現しているのですから。メルス様よりも親和性を持つ者は、見つかること間違いなしです》
「一言多いぞ……分かってるから、俺は生産者特権で使っているだけだしな」
俺の作る装備は、あまり強引に使うことのできない仕様になっている。
こういう風に使いたいという意志が強いからか、使用者を選ぶ傾向があるんだよな。
だが、逆にいえばその適性さえあればだいぶ嵌る。
要するに──自分に進化の可能性を与える者に、武具たちが呼応しやすいのだ。
「っと、そうだ。アン、縛りをくれ」
《そうですね……捕縛・封印縛りというのはどうでしょうか?》
「まあ、できなくはないが……武具も込みならできるかもな。よし、じゃあそうしよう」
《畏まりました。では、一時的に制限しておきますね》
アンが俺の[ステータス]に干渉し、大半のスキルを使えないようにする。
武技や魔法を試してみても、これまで同様縛りの対象になるものは使えない。
「鞭とか鎖と、そういえばそういう武器術も習得していたっけ。あれは蛇腹剣用に習得していたのもあるけど、鎖もやっぱりロマンだからだな……」
割と早く【生産神】などというチート級の力を得ていたので、いろんなアイテムを生み出してはそれを試していた。
自作の武器でスキルレベリングをすると、心なしか普通にやるより上がるのだ。
なので各武器種ごとにアイテムを作り上げており、それらすべてを未だ保存してある。
「武芸百般スキルにも使えるから、ちょうどよかったってのもあるけど。鎖……というか紐は[グレイプニル]で、ちょうど神話的にやりたかったんだよ」
《グレイプニルは鎖ではなく紐、なのにどうして鎖として創造したのでしょうか?》
「単純に紐だと使いづらいし、それだと糸術になるからな。あと、神話だと狼を縛っていたけど、その前に使っていたのが鎖だったからだな。……というか、知ってるだろ」
《メルス様、時には会話をすることが大切なのですよ。すべてを記憶の共有だけで済ませていれば、創作物でもありがちな問題を生み出してしまいます》
アンの言う問題とは、必要以上に知り過ぎてしまったり、それができない者を差別したりと……定番のやつだ。
まあ、知り過ぎに関しては俺のことならご自由に、というスタンスを取っているしな。
会話の方は……そうだな、俺も嫌がられないなら、話したいか。
《メルス様、少々厄介な者が侵入しようとしていますが》
「オークションは成功させたいからな。俺が直々に出ようか」
アンが発見したという盗人の下へ、さっそく急行する。
いったい、どんな相手何だろうか……間違いなく苦戦するだろうな。
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アルカからどうにか逃げ切った俺。
オークション会場はコロシアムを利用するため、午後の部の準備をすると言っても大した距離は移動しない。
転移で遠くへ逃げるのではなく、遠くへ逃げた痕跡を残して姿を隠した。
相手はアルカ、それがフェイクだと暴いたうえでいったん冷静な思考を取り戻すはず。
「だといいな……そうじゃなかったら、殺されるかもしれないし」
「いかがなさいましたか?」
「いや、何でもない。それよりも、作業に集中してほしい。魔法で多少手荒に扱っても平気にはしてあるが、何が起こるかは分からないからな」
「りょ、了解しました」
コロシアムもそうだが、オークションにもスタッフを雇って働かせていた。
基本的には赤色の民なのだが、一部祈念者たちもそこに混ざっている。
高報酬なのだが死ぬ危険もあり、契約書まで交わす必要があるという曰く付き。
それでも覚悟を決めてサインした者のみ、高報酬が得られるという仕組みだ。
……もちろん、それは表向きの理由だが。
「ちゃんと混ざっているようで何より。神器の情報を流しておいて正解だったな」
《異常者と思われてもおかしくはありませんからね。実際、そうなのでしょうけど》
「……まあ、そうかもな。けど、これもある意味立派な警備だろ? 過程はどうあれ、最後には捕縛されたコイツらが居るわけだし」
次元魔法で封じ込めたオークション用のアイテムを、盗もうとする怪盗や盗賊たち。
彼らがそういったスキルを用いてアイテムに触れると──仕掛けが作動する。
発動している“次元固定”が、その者にも作用するのだ。
体を次元ごと凍結されてしまえば、抗うこともできずに後は好き放題できる。
「アン、検挙率は?」
《80%、と言ったところですね。祈念者もこの世界に来てだいぶ経ちますので、何人かが優秀な力を手に入れているようです》
「超級も固有も、何であろうと凄そうなモノには相応の強さがあるんだよな。母数を覚えてないけど、そんなに多かったか?」
《数百人程度ですよ》
百も侵入しているとは……。
意図的にそれをし易くしているとはいえ、どうしてこうもいっぱい来たんだか。
お陰でコピーは捗るし、それを防ぐことで経験を積むことができる。
特に祈念者は死を厭わないので、そういった強硬に走ることが多いんだよな。
「さて、俺も準備をしないとな……神器はまだ出していなかったし」
次元魔法で保存する、そこまではできても防犯システムなどは拒絶してしまう神器。
薄っすらとだが意思を持っているので、そうなっていると思われる。
なので頑丈かつ特殊なケースの中に入れるだけで、あとは特に何もしない。
それを何とかするのが警備員であり、だからこそ手を伸ばすのが泥棒たちだ。
「神器以外にもいろいろと揃えてあるから、一人ぐらいは成功してほしい。適性のありそうな物も混ぜてあるから」
《その確率は高いですね。すでにスキルを発現させたり、超級に至った者などが出現しているのですから。メルス様よりも親和性を持つ者は、見つかること間違いなしです》
「一言多いぞ……分かってるから、俺は生産者特権で使っているだけだしな」
俺の作る装備は、あまり強引に使うことのできない仕様になっている。
こういう風に使いたいという意志が強いからか、使用者を選ぶ傾向があるんだよな。
だが、逆にいえばその適性さえあればだいぶ嵌る。
要するに──自分に進化の可能性を与える者に、武具たちが呼応しやすいのだ。
「っと、そうだ。アン、縛りをくれ」
《そうですね……捕縛・封印縛りというのはどうでしょうか?》
「まあ、できなくはないが……武具も込みならできるかもな。よし、じゃあそうしよう」
《畏まりました。では、一時的に制限しておきますね》
アンが俺の[ステータス]に干渉し、大半のスキルを使えないようにする。
武技や魔法を試してみても、これまで同様縛りの対象になるものは使えない。
「鞭とか鎖と、そういえばそういう武器術も習得していたっけ。あれは蛇腹剣用に習得していたのもあるけど、鎖もやっぱりロマンだからだな……」
割と早く【生産神】などというチート級の力を得ていたので、いろんなアイテムを生み出してはそれを試していた。
自作の武器でスキルレベリングをすると、心なしか普通にやるより上がるのだ。
なので各武器種ごとにアイテムを作り上げており、それらすべてを未だ保存してある。
「武芸百般スキルにも使えるから、ちょうどよかったってのもあるけど。鎖……というか紐は[グレイプニル]で、ちょうど神話的にやりたかったんだよ」
《グレイプニルは鎖ではなく紐、なのにどうして鎖として創造したのでしょうか?》
「単純に紐だと使いづらいし、それだと糸術になるからな。あと、神話だと狼を縛っていたけど、その前に使っていたのが鎖だったからだな。……というか、知ってるだろ」
《メルス様、時には会話をすることが大切なのですよ。すべてを記憶の共有だけで済ませていれば、創作物でもありがちな問題を生み出してしまいます》
アンの言う問題とは、必要以上に知り過ぎてしまったり、それができない者を差別したりと……定番のやつだ。
まあ、知り過ぎに関しては俺のことならご自由に、というスタンスを取っているしな。
会話の方は……そうだな、俺も嫌がられないなら、話したいか。
《メルス様、少々厄介な者が侵入しようとしていますが》
「オークションは成功させたいからな。俺が直々に出ようか」
アンが発見したという盗人の下へ、さっそく急行する。
いったい、どんな相手何だろうか……間違いなく苦戦するだろうな。
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