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偽善者とお祭り騒ぎ 二十六月目
偽善者と夢現祭り三日目 その05
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連続更新です(05/12)
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結論から言ってしまえば、ヴィントは殴られただけで退場した。
普通なら耐えられると思っただろうが……今のチャルは、制限がある程度外れている。
彼女の両手に付いた拳鍔は、力任せにあらゆる概念を解き、壊すことができる武装。
今回は壊す方で殴っていたので、体に罅が入るようにして──砕け散っていく。
なお、それで満足したのかチャルはその後すぐにリタイアした。
お陰で彼女に賭けていたと思われる人々からは、絶叫や悲鳴が上がっている。
どうやら一人一殺ずつ行い、後でリタイアすることを選ぶらしい。
……ちなみに眷属は景品などを貰えないように調整するので、順位は関係ないぞ。
「残ったのはアルカちゃんと……あの金髪の女の子、そしてみんなだね。メルスは、あの子のこと知ってる?」
「直接の面識はないけどな。あれは、二代目の『選ばれし者』だ。光担当なんだが、初代がいろんな意味で死んだから、代わりが用意されたんだよ」
アイリスに語った通り、俺たちが関わりの無い最後の選手は『選ばれし者』。
ただしそれは、もっとも俺と縁深くもある光の『選ばれし者』。
──かつて、シャインが担っていた役割を継承した者である。
「祈念者の眷属に居るシャイン、あれが先代だ。その頃はまだ『選ばれし者』とかそういう話を聞かされていなかったから、私怨でフルぼっこにしたら……ああなった」
「うわぁ……女の子を調教でもしたの?」
「……男だったのが、一時的に女体化させたら心まで屈服してたんだよ」
「そ、それは……なんというか、お察ししますってやつ?」
今では立ち振る舞いまで立派に女性らしくなっているが、昔はハーレムを作っていろいろと勘違いしたガキだった。
挙句の果てにフェニを狙ったため……当時の俺は、私刑を実行する。
それからなんやかんやあって、ドMTS奴隷と化してしまったシャインだった。
「『運命簒奪者』の効果で、『勇者』としてするはずだった運命を奪ったみたいでな。運営神側で次を用意した結果……選ばれたのが彼女なんだ。見ての通り、ちゃんと『勇者』としての振る舞いができているだろう?」
「たしかに、シュリュと戦えてる……でも、『勇者』って赤い人じゃなかったっけ?」
「二人でやるらしい。片方は定番の【魔王】討伐、もう片方が人類の希望になる。どちらかが失敗しても代理が用意できる、そういう考えもあるかもな」
本来はシャインが【魔王】討伐を行い、フレイが導く感じなんだろう。
その背に示す炎には、象徴であることを示すだけの力がある。
だが、俺の干渉で予定が狂う。
シャインは己が意思で【勇者】を捨て、結果的に『勇者』の資格すら失った。
当然、代役が立てられて──新たに少女が選ばれる。
現在シュリュと激しい戦闘を繰り広げる彼女は、その身に光を纏い他を魅了していた。
「固有スキルは【呼光栄勇】、光を纏えば纏うほど強化される能力だな。ヴィントの光版みたいだが、条件が無いのが利点だな。強化倍率は下がるが、集められる量が多いからその分強くなっている」
初期のシャイン同様、光迅シリーズを使いこなす彼女は剣を振るう。
対するシュリュもまた、巨人が使うような大きな剣を振り回してぶつかり合っている。
「メルスはどっちが勝つと思う? 普通ならシュリュだけど、バトル物だと主人公が無敗の王者とかに勝つのは定番だし。能力値の差も、何かで覆してくれるかも」
「……どうだろうな。シュリュだって導士、それに他と違って人工的な戦闘狂だから譲りはするだろうけどさ。それでも強者と戦いたいらしいから、アレを使っているわけだし」
「あのデカい剣もメルスが作った物? 機械みたいにパーツが付いてるけど」
「──『転帝劉具[ヴァンブレス]』。シュリュ専用で、神器にして聖魔具でもあるお手製の超巨大な大剣だな。アイリスが予想した通り、アレはただの剣じゃない。ほら、そろそろ使うぞ」
少女が“光迅域”と“光迅証”のコンボで光迅シリーズの性能を高め、ついでに光で構築された剣を新たに生み出す。
二刀流スタイルで加速し、シュリュの防御速度を勝ろうとしている。
通常状態なら、高い身体能力で対応可能だが……制限中は少し足りない。
なので、[ヴァンブレス]に秘められた力の一つを発動したようだ。
アイリスの言うパーツがそれぞれ分解されると、宙に漂い始める。
それらすべてが武具の形をしており、何より神器と聖・魔具で構築されていた。
シュリュはその中から、二振りの槍を取り出して使うことに。
片方は長槍、もう片方が短槍。
それらを使い分ける戦闘スタイルで、少女とやり合うつもりなのだ。
「双剣対双槍、槍二本程度なら余裕で振り回せるからだな。剣と槍なら射程の差で槍が有利だし、接近してきたとしても長さが違う槍で対処できる……さすがは戦闘のプロ。けどあれ、時間が掛かるよな」
「そうですね。シュリュさんはもちろん、少女の方も戦闘経験が豊富な様子。彼女も代役として、無数の戦場を戦い抜いたのですね」
「だろうな。『選ばれし者』は、イベントを繰り返す運命だからな……となると、最後に注目するのはアレか」
「……あそこだけ、もう異常だよね」
残ったのは当然、決まった組み合わせ。
祈念者最強の魔法使いと生命最強の銀龍、どちらも化け物染みた力を持つ者たちだ。
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結論から言ってしまえば、ヴィントは殴られただけで退場した。
普通なら耐えられると思っただろうが……今のチャルは、制限がある程度外れている。
彼女の両手に付いた拳鍔は、力任せにあらゆる概念を解き、壊すことができる武装。
今回は壊す方で殴っていたので、体に罅が入るようにして──砕け散っていく。
なお、それで満足したのかチャルはその後すぐにリタイアした。
お陰で彼女に賭けていたと思われる人々からは、絶叫や悲鳴が上がっている。
どうやら一人一殺ずつ行い、後でリタイアすることを選ぶらしい。
……ちなみに眷属は景品などを貰えないように調整するので、順位は関係ないぞ。
「残ったのはアルカちゃんと……あの金髪の女の子、そしてみんなだね。メルスは、あの子のこと知ってる?」
「直接の面識はないけどな。あれは、二代目の『選ばれし者』だ。光担当なんだが、初代がいろんな意味で死んだから、代わりが用意されたんだよ」
アイリスに語った通り、俺たちが関わりの無い最後の選手は『選ばれし者』。
ただしそれは、もっとも俺と縁深くもある光の『選ばれし者』。
──かつて、シャインが担っていた役割を継承した者である。
「祈念者の眷属に居るシャイン、あれが先代だ。その頃はまだ『選ばれし者』とかそういう話を聞かされていなかったから、私怨でフルぼっこにしたら……ああなった」
「うわぁ……女の子を調教でもしたの?」
「……男だったのが、一時的に女体化させたら心まで屈服してたんだよ」
「そ、それは……なんというか、お察ししますってやつ?」
今では立ち振る舞いまで立派に女性らしくなっているが、昔はハーレムを作っていろいろと勘違いしたガキだった。
挙句の果てにフェニを狙ったため……当時の俺は、私刑を実行する。
それからなんやかんやあって、ドMTS奴隷と化してしまったシャインだった。
「『運命簒奪者』の効果で、『勇者』としてするはずだった運命を奪ったみたいでな。運営神側で次を用意した結果……選ばれたのが彼女なんだ。見ての通り、ちゃんと『勇者』としての振る舞いができているだろう?」
「たしかに、シュリュと戦えてる……でも、『勇者』って赤い人じゃなかったっけ?」
「二人でやるらしい。片方は定番の【魔王】討伐、もう片方が人類の希望になる。どちらかが失敗しても代理が用意できる、そういう考えもあるかもな」
本来はシャインが【魔王】討伐を行い、フレイが導く感じなんだろう。
その背に示す炎には、象徴であることを示すだけの力がある。
だが、俺の干渉で予定が狂う。
シャインは己が意思で【勇者】を捨て、結果的に『勇者』の資格すら失った。
当然、代役が立てられて──新たに少女が選ばれる。
現在シュリュと激しい戦闘を繰り広げる彼女は、その身に光を纏い他を魅了していた。
「固有スキルは【呼光栄勇】、光を纏えば纏うほど強化される能力だな。ヴィントの光版みたいだが、条件が無いのが利点だな。強化倍率は下がるが、集められる量が多いからその分強くなっている」
初期のシャイン同様、光迅シリーズを使いこなす彼女は剣を振るう。
対するシュリュもまた、巨人が使うような大きな剣を振り回してぶつかり合っている。
「メルスはどっちが勝つと思う? 普通ならシュリュだけど、バトル物だと主人公が無敗の王者とかに勝つのは定番だし。能力値の差も、何かで覆してくれるかも」
「……どうだろうな。シュリュだって導士、それに他と違って人工的な戦闘狂だから譲りはするだろうけどさ。それでも強者と戦いたいらしいから、アレを使っているわけだし」
「あのデカい剣もメルスが作った物? 機械みたいにパーツが付いてるけど」
「──『転帝劉具[ヴァンブレス]』。シュリュ専用で、神器にして聖魔具でもあるお手製の超巨大な大剣だな。アイリスが予想した通り、アレはただの剣じゃない。ほら、そろそろ使うぞ」
少女が“光迅域”と“光迅証”のコンボで光迅シリーズの性能を高め、ついでに光で構築された剣を新たに生み出す。
二刀流スタイルで加速し、シュリュの防御速度を勝ろうとしている。
通常状態なら、高い身体能力で対応可能だが……制限中は少し足りない。
なので、[ヴァンブレス]に秘められた力の一つを発動したようだ。
アイリスの言うパーツがそれぞれ分解されると、宙に漂い始める。
それらすべてが武具の形をしており、何より神器と聖・魔具で構築されていた。
シュリュはその中から、二振りの槍を取り出して使うことに。
片方は長槍、もう片方が短槍。
それらを使い分ける戦闘スタイルで、少女とやり合うつもりなのだ。
「双剣対双槍、槍二本程度なら余裕で振り回せるからだな。剣と槍なら射程の差で槍が有利だし、接近してきたとしても長さが違う槍で対処できる……さすがは戦闘のプロ。けどあれ、時間が掛かるよな」
「そうですね。シュリュさんはもちろん、少女の方も戦闘経験が豊富な様子。彼女も代役として、無数の戦場を戦い抜いたのですね」
「だろうな。『選ばれし者』は、イベントを繰り返す運命だからな……となると、最後に注目するのはアレか」
「……あそこだけ、もう異常だよね」
残ったのは当然、決まった組み合わせ。
祈念者最強の魔法使いと生命最強の銀龍、どちらも化け物染みた力を持つ者たちだ。
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