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偽善者とお祭り騒ぎ 二十六月目
偽善者と夢現祭り三日目 その03
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連続更新です(03/12)
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コロシアムの試合を観戦中の俺、アイリスとフィレルの三人。
アルカが初手で魔法をぶっ放し、隙だと見た参加者たちから狙われたのだが……。
「──けどまあ、ああなるよね。だって、アルカちゃん全然疲れてないもん」
「そうですね……旦那様の渡した武具の性能もありますが、彼女自身が非常に効率のいい魔法を行使しているということもあります」
彼女に徒党を組んで襲い掛かる参加者たちだったが、放たれた攻撃の数々を転移系の魔法で回避する。
少々燃費が悪いことで有名な空間魔法なのだが、アルカは難なくそれを発動した。
先ほどまで魔法をぶっ放していたが……それはあくまで、全魔力中の二割程度である。
彼女は杖術などは習得しておらず、得られるSPはすべて魔法スキルに振っていた。
なので接近されると困るため、距離を確実に取ってから──再度魔法をぶっ放す。
「神器になった影響か、性能が少し変な方向に進化しているんだよな。アレは魔法を使うための補助をしていない、あくまでアルカ自身が魔法を放つためのサポートだ」
「……それって、同じことじゃない?」
「分かりやすく言うとだな。前までは消費を抑えたり、威力を上げたりしていた。けど、今はそれがまったくない。それまで使っていたリソースをすべて裂いて、代わりに獲得したのは──魔法の自在発動だ」
「じ、自在発動!? ……って、つまり?」
鑑定眼でじっくりと調べて、ようやく知ることができた新たな極致。
昔よりも強くなったアルカだからこそ、その性能を十全に使えている。
「魔法のキャスト・リキャストタイムはゼロになる。また、ありとあらゆる魔法が使用可能ということだ」
「……それ、チートじゃない?」
「ある意味な。ただし、魔法の構築は全部自分でやらないといけないし、適正の無い魔法の行使には普通よりも魔力を使う。魔力特化で【賢者】なアルカだからこそ、とりあえずは使えている」
「とりあえず、ですか。つまり、まだ先があるということですね」
フィレルの言う通り、まだまだ可能性である成長スキルが残っている。
彼女自身も、極級職に就けば魔法をより上手く使えるようになるだろう。
「固有スキルである【思考詠唱】も、進化していない。通常ルートだと【思念起動】ってスキルになるんだが……アルカが魔法に特化したことで、そっちになる必要が無かったみたいなんだよ」
「名前からして、詠唱以外にもできるとかそういう感じ? 考えるだけで使えるのと、念じるだけで使えるの……どっちが楽なの?」
「人によるだろう。世の中には、意識して念じることよりも、思考に耽る方が得意な奴もいる。アルカもそういうタイプ、ただそれだけだな──うわっ、えげつな」
イイことを言っていたような気もするが、アルカが放った魔法でそれも台無しに。
いつの間にやら舞台は、本来の姿を喪失していた。
≪い、いったい何が起きたのでしょうか……開幕の魔法同様、理解できませんでした≫
≪初手は無数に鏤めた魔法を起動させたのに対し、今回はマス目に合わせて空間魔法での裁断を行ったようです。その結果、動かずにいた参加者を除いて全員が切り刻まれることになりました≫
≪その……どうしてマス目である必要があったのでしょうか? わざわざそうせずとも、初めから水平に使えば良かったのでは?≫
≪それでは失敗すると、確信していたのかもしれません。どうやら……ここからが本番のようです≫
空間魔法が舞台を切り刻んだ結果、残されたのは数個分のブロックのみ。
精密で緻密、綿密な魔法構築の結果が現実に反映されたわけだ。
アルカと眷属に加え、まだ二人の参加者が残り──現在、六人。
この中から最強が決まるのだが、不動を選択していた者たちが動き出す。
≪こ、これは……崩れたはずの舞台が浮かび上がった! 間違いありません、これは彼の仕業です!≫
≪『失風英雄』のヴィント選手ですね。浮かせた舞台を、どうやらぶつけるようです。ただの物理攻撃ではなく、風を纏わせているのでしょうか≫
≪ですが、全員がそれぞれ異なる方法で防いでおります! さすがは決勝進出者です!≫
アルカも眷属も当然のこと、残り一人もただの魔法付与付きの瓦礫程度なら容易く防ぐことができる。
素手や武器、魔法などを用いて風を防いだ参加者たち。
一方で、それを行ったヴィントは風魔法でも使ったのか宙に浮かび上がる。
「あー、これも仕方ないか。俺だって、面倒なことになるとは思わないもんな」
「メルス、もしかしてネタバレ? ワタシは気にしないからどんどん教えてよ」
「いや、ヒントだけ言うから自分で考えてみてくれ。風を失う英雄と書いて『失風英雄』だが、それは誰が失うんだ? 見ての通り、彼は風が使える」
察しのいい眷属たちなので、これだけ言えば答えが分かるだろう。
アイリスもフィレルと共に頭を捻り、すぐに答えへ辿りつく。
「つまりそれは、相手なんだね……何か条件があると。うーん、フィレルはどう思う?」
「このタイミングで旦那様が申す以上、わざと躱すのではなく破壊が簡単な先ほどの攻撃が鍵となっているのですね。となると、条件はおそらく──自身で生み出した風属性の攻撃を、他者に接触させること」
「どうかな、これで正解?」
「まあ、正解だな。ちなみに固有スキルの名称は【失風渡盗】、いろいろと制限はあるが今回はそれをクリアした……さて、他の奴らはどう対応するのかな?」
参加者全員の優位性を、概念として奪った彼を倒すのは一苦労だ。
ただまあ、今戦っているのは常識知らずの怪物たちばかり……それだけだとなー。
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コロシアムの試合を観戦中の俺、アイリスとフィレルの三人。
アルカが初手で魔法をぶっ放し、隙だと見た参加者たちから狙われたのだが……。
「──けどまあ、ああなるよね。だって、アルカちゃん全然疲れてないもん」
「そうですね……旦那様の渡した武具の性能もありますが、彼女自身が非常に効率のいい魔法を行使しているということもあります」
彼女に徒党を組んで襲い掛かる参加者たちだったが、放たれた攻撃の数々を転移系の魔法で回避する。
少々燃費が悪いことで有名な空間魔法なのだが、アルカは難なくそれを発動した。
先ほどまで魔法をぶっ放していたが……それはあくまで、全魔力中の二割程度である。
彼女は杖術などは習得しておらず、得られるSPはすべて魔法スキルに振っていた。
なので接近されると困るため、距離を確実に取ってから──再度魔法をぶっ放す。
「神器になった影響か、性能が少し変な方向に進化しているんだよな。アレは魔法を使うための補助をしていない、あくまでアルカ自身が魔法を放つためのサポートだ」
「……それって、同じことじゃない?」
「分かりやすく言うとだな。前までは消費を抑えたり、威力を上げたりしていた。けど、今はそれがまったくない。それまで使っていたリソースをすべて裂いて、代わりに獲得したのは──魔法の自在発動だ」
「じ、自在発動!? ……って、つまり?」
鑑定眼でじっくりと調べて、ようやく知ることができた新たな極致。
昔よりも強くなったアルカだからこそ、その性能を十全に使えている。
「魔法のキャスト・リキャストタイムはゼロになる。また、ありとあらゆる魔法が使用可能ということだ」
「……それ、チートじゃない?」
「ある意味な。ただし、魔法の構築は全部自分でやらないといけないし、適正の無い魔法の行使には普通よりも魔力を使う。魔力特化で【賢者】なアルカだからこそ、とりあえずは使えている」
「とりあえず、ですか。つまり、まだ先があるということですね」
フィレルの言う通り、まだまだ可能性である成長スキルが残っている。
彼女自身も、極級職に就けば魔法をより上手く使えるようになるだろう。
「固有スキルである【思考詠唱】も、進化していない。通常ルートだと【思念起動】ってスキルになるんだが……アルカが魔法に特化したことで、そっちになる必要が無かったみたいなんだよ」
「名前からして、詠唱以外にもできるとかそういう感じ? 考えるだけで使えるのと、念じるだけで使えるの……どっちが楽なの?」
「人によるだろう。世の中には、意識して念じることよりも、思考に耽る方が得意な奴もいる。アルカもそういうタイプ、ただそれだけだな──うわっ、えげつな」
イイことを言っていたような気もするが、アルカが放った魔法でそれも台無しに。
いつの間にやら舞台は、本来の姿を喪失していた。
≪い、いったい何が起きたのでしょうか……開幕の魔法同様、理解できませんでした≫
≪初手は無数に鏤めた魔法を起動させたのに対し、今回はマス目に合わせて空間魔法での裁断を行ったようです。その結果、動かずにいた参加者を除いて全員が切り刻まれることになりました≫
≪その……どうしてマス目である必要があったのでしょうか? わざわざそうせずとも、初めから水平に使えば良かったのでは?≫
≪それでは失敗すると、確信していたのかもしれません。どうやら……ここからが本番のようです≫
空間魔法が舞台を切り刻んだ結果、残されたのは数個分のブロックのみ。
精密で緻密、綿密な魔法構築の結果が現実に反映されたわけだ。
アルカと眷属に加え、まだ二人の参加者が残り──現在、六人。
この中から最強が決まるのだが、不動を選択していた者たちが動き出す。
≪こ、これは……崩れたはずの舞台が浮かび上がった! 間違いありません、これは彼の仕業です!≫
≪『失風英雄』のヴィント選手ですね。浮かせた舞台を、どうやらぶつけるようです。ただの物理攻撃ではなく、風を纏わせているのでしょうか≫
≪ですが、全員がそれぞれ異なる方法で防いでおります! さすがは決勝進出者です!≫
アルカも眷属も当然のこと、残り一人もただの魔法付与付きの瓦礫程度なら容易く防ぐことができる。
素手や武器、魔法などを用いて風を防いだ参加者たち。
一方で、それを行ったヴィントは風魔法でも使ったのか宙に浮かび上がる。
「あー、これも仕方ないか。俺だって、面倒なことになるとは思わないもんな」
「メルス、もしかしてネタバレ? ワタシは気にしないからどんどん教えてよ」
「いや、ヒントだけ言うから自分で考えてみてくれ。風を失う英雄と書いて『失風英雄』だが、それは誰が失うんだ? 見ての通り、彼は風が使える」
察しのいい眷属たちなので、これだけ言えば答えが分かるだろう。
アイリスもフィレルと共に頭を捻り、すぐに答えへ辿りつく。
「つまりそれは、相手なんだね……何か条件があると。うーん、フィレルはどう思う?」
「このタイミングで旦那様が申す以上、わざと躱すのではなく破壊が簡単な先ほどの攻撃が鍵となっているのですね。となると、条件はおそらく──自身で生み出した風属性の攻撃を、他者に接触させること」
「どうかな、これで正解?」
「まあ、正解だな。ちなみに固有スキルの名称は【失風渡盗】、いろいろと制限はあるが今回はそれをクリアした……さて、他の奴らはどう対応するのかな?」
参加者全員の優位性を、概念として奪った彼を倒すのは一苦労だ。
ただまあ、今戦っているのは常識知らずの怪物たちばかり……それだけだとなー。
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