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偽善者とお祭り騒ぎ 二十六月目
偽善者と夢現祭り二日目 その19
しおりを挟む「魔導解放──“降り注ぐ混沌の流星”」
開幕早々、隕石による広域殲滅を図る。
大半の祈念者はレベル250、一人ひとりに対する隕石の数が少ないため、全然数を減らすことはできない。
これは選別の儀。
もっとも苦しまない形で、力無き者たちをこの場から逃がすための。
抗うというのであれば、それでも構わないのだけど。
実際、適正レベルを満たしていない祈念者の中に生き残った者も居るようだし。
「魔導解放──“遥かな空より墜ちし光”」
次に使うのは空から降り注ぐ高熱の光。
膨大な熱量は触れた瞬間に対象を焼き、存在を消し去る。
これまた対処を正しく行いさえすれば、防ぐことができる魔導。
熱への耐性を高め、自身を冷やしたうえで魔法を使い防御すればいい。
一つでも怠った場合は、体がそのどれかに耐えられずに死ぬんだけどな。
無敵状態になるスキルで防いでも、純粋な熱量は残るから耐えられなくなるのだ。
「魔導解放──」
「そうはさせるか! やるぞ、テメェら!」
「──“天より注げ罪過の柱”」
『ぐぁあああああ!』
今度は重力の檻。
基礎重力量が業値で決まり、足掻けば足掻くほどその重力量を高めるというもの。
要するに悪人は非常に重くなり、抵抗したからさらに重くなっている。
そうじゃない善人も混ざっているので、彼らが魔法で軽減してやっていた。
「どうして、どうしてこんなことを!」
「……この世界では私こそがルール。そして君たちは、そのルールに背いた。まだ立ち上がれる善人たちよ、彼らは本当に悪事を働いた者たちだ。彼らを裁く責任が私にはあるのだ。苦しんだ人々の分まで」
「それは……」
普通の奴なら関係ないだろ、とかそういうことが言えるのだが……彼らは善人。
人々を助けようと行動を起こした結果、ここに来るほどの善い奴らである。
俺の考え方は、王侯貴族が抱くようなモノである──『貴族の義務』ってヤツだ。
赤色の世界の民も混ざっている以上、責任は俺が取るしか無い……と思っている。
眷属が聞いたら即刻反論されるようなことなので、あくまでも俺の自論でしかない。
それでもやっているのには理由がある……が、悪人はそろそろ邪魔だな。
「魔導解放──“屍背負いの咎人よ”」
『ギャアアアアアアア!』
「何をしたのですか!」
「現在受けている重力の檻に加え、罪を背負えば背負うほど弱体化するデバフを与えた。これにより、抵抗できなくなった者たちはすべて──このように死ぬわけだ」
逆に、善人であればあるほど強化される魔導なんかも用意されている。
魔導はあくまで、俺のイメージを形にしたモノ……これらの逆は難しいんだよな。
これまでずっと上空に居たが、もういいかということで地上に降り立つ。
善人である彼らも、さすがの暴虐っぷりに怒っているな……どうでもいいけど。
下準備のために、周囲に“空間収納”を起動して中身を吐き出していく。
それらは機械や無機物系の魔物など……命無き者たち。
「魔導解放──“不可思議な玩具箱”」
それらが動き出し、彼らを襲い始める。
この魔導は無機物であればどんな物でも動かすことができる、とある物語を参照に生みだした魔導だ。
善人は無機物と戦闘を始める。
まだ残っている悪人たちを、それでも救おうと守るために。
──ただ一人の例外を残して。
「……ここまですべてが計画通りか」
「その通り。これだけ回りくどいやり方をすれば、わざわざ逃げたりしないだろう?」
「お前はいったい、何者だ?」
「ただの祈念者だ。君とは違って……何にも選ばれてはいないがな」
黒髪黒目、そして黒尽くめの青年。
ある意味シャインのような男であり、ある意味シャインとは真逆の男でもある。
「『選ばれし者』、『闇寧魔王』。会ってみたかったよ──『フォンセ』君」
「君付けは止めろ。二つ名はともかく、なぜその呼び名を知っている?」
「まあ、勝てば教えるとしよう。もう間もなく、彼らも全滅する」
「……ふんっ、弱い奴らめ」
と言いつつも、フォンセ君はこっそりと闇魔法を発動させた。
目的は善人たちの救援……彼もまた、立派に『選ばれし者』なのだ。
「まあいいだろう。貴様のその傲り、この俺が打ち砕いてやろう」
「ぜひとも。思う存分足掻き、その力を私に魅せてみよ」
取り出す武装はいつものアレ。
これまで二人の『選ばれし者』たちに向けてきた、妖刀[窮霰飛鮫]である。
対するフォンセ君は腰に提げていた闇色の剣を引き抜き、構えを取った。
同時に体から噴き出す闇色の力……ただしそれは、瘴気ではない。
「それが君の力か」
「──【心象闇具】。貴様自身が抱いた暗き心が、己が身を傷つけると知れ」
「それはそれは、なんとも愉快な演目であろうか。喰らい尽くせ、[飛鮫]共」
せっかくなので、先ほど死んだ奴らの経験値を注いで『古代鮫・飛刃種』を召喚。
それとほぼ同時、闇色の靄は鮫の形を成してこちらに突っ込んできた。
「……これは、貴様の闇では無いな」
「なんだ、分かるのか?」
「どういうことだ? 人は誰しもが闇を抱えている。それは善人であろうと同じはずだ」
「……さてな、これもまた君自身で見つけるべきだろうな。フォンセ君」
煽るようにもう一度嫌う呼び方をすると、フォンセは苛立った表情を見せる。
……見た目は青年だけれども、その中身は違うのです。
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