1,707 / 2,518
偽善者とお祭り騒ぎ 二十六月目
偽善者と夢現祭り二日目 その18
しおりを挟む「──二日目隠し企画、始めますか」
メルスの状態に戻って、夜を過ごす。
残念ながら、今日もユニーク種を討伐できた者は現れなかった。
結構惜しいと思える集団もあるのだが、倒し切るには至らないんだよな。
そして三日目に投入されるユニーク種、そいつは特に勝つことが難しいだろう。
「まあ、それはいいや……それよりも、今はやるべきことをやらないと」
イベントエリア中を駆け巡る。
俯瞰して祈念者の動向は確認していたし、自分で用意したエリアなので地形に関しては完璧に把握していた。
「だけど、最後はこれぐらい盛大にやらないとつまらないからな。俺からのプレゼント。魔導解放──“永地の理を解く者”」
この魔導の効果は、魔力が続く限り無制限で地形を操作することができるというもの。
それもかなり広範囲で、代償は脳の負担が重いだけという至って簡単なヤツだし。
もちろん、俺みたいな凡人がやれば本来、脳が一瞬で焼き切れて死ぬレベルだ。
しかし思考系スキルの補正がある以上、鼻歌交じりで行うことができる。
「まずは各エリアを接続。一定条件を満たしたらユニーク種と戦える場所を準備、そしてオークション会場だな。コロシアムをエリアの中心において、周りをバザーフィールドにすればいいか」
三日目はコロシアムで最強を決めるので、予選は二日目までだ。
合法的に戦えるのは、つまり今日までなので……[ロウシャジャル]が動き出す。
そもそもフィールドがすべて繋がるため、ルールも一部変更される。
合法PKはできなくなるし、その上広域で[ロウシャジャル]と戦うことが可能だ。
だが、それではつまらないだろう。
今回のイベントにおいて、ギリギリのルールの隙を突いて無法を成そうとする者が多くいたわけで……。
彼らは[ロウシャジャル]に裁かれず、極まれに眷属が遭遇して対処するぐらい。
直接被害を受ければ[ロウシャジャル]に裁かれるが、間接的なら動かないのだ。
……今後の憂いが無いように、今日中にやりたいことがある。
「さてさて、逃がすと思うな。魔導解放──“万象記す映地の図”」
魔導を発動後、目の前にUI……を模した画面が表示された。
このイベントエリアすべてを映し出すその画面には、無数の光点が存在する。
それらは俯瞰した意識が見つけた、裁かれるべき者たち。
正義も悪も関係ない、俺が裁かれるべきと判断した奴らだ。
「……自由民にも居たのは残念だが、それは仕方が無いか。願わくば、この行いによって少しはマシな生き方をしてくれるように」
彼らを対象に、次の魔導を発動する。
魔法を無効化できるアイテムを持っている者なんかもいるが、魔導はそういったものを無視して奴らに効果を示す。
「魔導解放──“彼方に拓きし異界門”」
足元に浮かぶ巨大な門のエフェクト。
それが大きく扉を開くと、至る所に在った光点の反応が一つの場所に集結した。
本来は集団で転移するための魔法だが、予め“万象記す映地の図”で対象を指定しておくことで、特定の者のみを攫う強制転移として用いることができる。
「俺も行きますか」
俺の場合、眼前に浮かべた扉を用意した。
これを潜ればその先に、無法者たちが待ち受けているだろう。
瞬時に準備を終えて、俺は扉の先へ向かって歩を進める。
……一筋縄ではいかないだろうが、これもまた主催者としての責任だな。
◆ □ ◆ □ ◆
「魔導解放──“白き箱清き光”」
その場が光に包まれることで、彼らはそれまで行っていたことを中断する。
すでに争いが起こっていたのだ……いやいや、速すぎないか?
だが、そんなことを突っ込んでしまえばイメージが崩れてしまう。
初日に行った演説(?)を意識して、彼らに向けて語り掛ける。
「──まず初めに、祈念者の諸君。君たちが多用する[ログアウト]だが……しばらく使えない状態にある。安心してくれ、三日目の夜明け前には解放してやろう」
彼らはこれで理解できる、これが企画の一種でちゃんと解放されるのだと。
そのうえで、自分たちを襲ったこの理不尽に対する異議を申し立てる。
「悪いが苦情は聞かぬよ。君たちが悪事を働いたことは、すでに把握しているのだ。自分は善行をしたのだと嘯く者も、その罪を改めて知れ。汝の所業は本当に、すべての者たちに感謝されていたのか?」
俺が今回転移させた奴らの基準は、その行いが他者にどういった影響を及ぼしたかだ。
それはつまり、諍いを仲裁に入った者だろうと対象に含まれるわけで……。
実際、この中には世間一般的に見れば善行だろうという行いをした者も居る。
だが俺からすれば、それはあまり好ましくない行いだった。
「恨むなら恨め、ただしこの私をだ。君たちに責ありと判断し、この裁定を執り行うのは間違いなく私だ。この光景は現在、そして明日映像として公開される。抗い主張するのであれば、ぜひともしてほしい」
だがそれでも、俺はこれから彼らを一度殺すことになる。
死に戻り以前に蘇生を行える魔導内で、完膚なきまでに。
そして、それによって変わることを願う。
……偽善を行う奴が増えると、俺がやることが減ってしまうからな!
0
お気に入りに追加
510
あなたにおすすめの小説
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
DPO~拳士は不遇職だけど武術の心得があれば問題ないよね?
破滅
ファンタジー
2180年1月14日DPOドリームポッシビリティーオンラインという完全没入型VRMMORPGが発売された。
そのゲームは五感を完全に再現し広大なフィールドと高度なグラフィック現実としか思えないほどリアルを追求したゲームであった。
無限に存在する職業やスキルそれはキャラクター1人1人が自分に合ったものを選んで始めることができる
そんな中、神崎翔は不遇職と言われる拳士を選んでDPOを始めた…
表紙のイラストを書いてくれたそらはさんと
イラストのurlになります
作品へのリンク(https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=43088028)
虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる