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偽善者とお祭り騒ぎ 二十六月目

偽善者と夢現祭り二日目 その12

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 イベントエリア バトルフィールド


 再びフーラとフーリが居る場所へ。
 ノゾムとしての肉体に意識が宿り、起き上がって周囲を確認する。


「……また、いろいろとあったみたいだね」

「ノゾム様!」
「……ノゾム様、大丈夫?」

「スキルもいろいろと習得しているし、二人が教えてくれたからかな? ありがとう」


 俺の意識が無くとも、体は残っていて作業に準じていた。
 それまでに見た戦闘記録をなぞり、体を動かすことでスキルを習得するという試み。

 意外と成功しているらしく、スキル欄にはいくつかの武術・身体スキルが。
 ……魔法が得られない辺り、俺の適性の無さを表しているよな。


「槍術と銃術が得られているのは、二人のお陰だね。脚力強化は……動くために必要だからかな? いろいろと有るけど、特に最初の二つは嬉しいよ。二人が頑張ってくれた、だから僕はそれを覚えられた」


 模倣スキルの効果で、多めに熟練度を得られたのだろう。
 槍も銃も、それなりに使える……目指せ、大量の武術スキルを捧げて【武芸百般】!


「二人とも、そろそろ野試合じゃなくてコロシアムの方に行こうか。たぶん、あんまり心置きなく戦えてないんじゃないの?」

「それは……そうですが」
「……ノゾム様、大丈夫?」

「うん、サポート用に魔術と魔本をフルで使うことにするよ。武具は使うと……ちょっと揉めそうだから、森弓と獣剣術しか用意できなさそうだけど」


 予め定めていたのだが、[メカルテス]の登場と同時に魔術デバイスを売り出した。
 誰でも魔術が使えるということで、大量に売れたよ……あとで苦情が殺到したが。

 なぜなら、魔術はまた追加で買わないといけないから。
 唯一入れたのは、前にカグが発明してくれた魔術──“魔法師化メイジャー”のみ。

 魔術師でも一時的に、魔法を使うことができるという魔術。
 これの恩恵にあやかれるのは、デバイス無しで魔術が使える機人族が主。

 デバイスで魔術が使えるという謳い文句に嘘はないし、買えばちゃんと魔術が使えるので誰も文句は言えないのだ。

 ──ちなみに[ネクロエム]が登場した後は、『ゾンビペット』が発売されました。


「ただ、使う魔術は制限されちゃうけど。販売した弱い魔術だけなんだけど……二人はそれでもいいかな?」

「はい、ノゾム様に支援してもらえるなら、それだけで力になります!」
「……無くても戦えてたし」
「ふ、フーリ!」

「はははっ、そうだね。フーリの言う通り、居なくても変わらないよね。コロシアムの方は眷属がもう暴れているから、双剣の方も使用してくれていいから……勝ってね」

「……「はい!」」


 アイツらが無双している以上、双剣を隠す必要はなくなる。
 本当に隠しておく切り札は、まだ他にあるわけだしな。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 そうして、俺たちはコロシアムへ向かう。
 そのまま『闘王技場』を使っているので、内部での戦闘は非殺傷結界で行われる。

 ただし、今回は次元魔法と複製魔法を重ねて使うことで、一時的に内部の広さを尋常ではないほどに拡張していた。

 東京ドーム……というか隣県にある夢の国と同じくらい広い場所に、何百もの舞台。
 そのすべてで戦闘が行われており、観客たちはモニター越しに試合を見ている。


「さて、僕たちも場所を予約しておこう……事前に賭けるポイントの量を決めるけど、どれくらいがいいかな?」

「全部で!」
「……半分」

「うーん、眷属とぶつかったときが怖いし、とりあえず半分だね。よし、準備ができたら画面が出るから──って、もう出たね」


 対戦相手は……『ああああ』。
 いかにも適当に決めた名前だが、その勝率は八割を超えている優秀なチームだ。

 コロシアムの場合、レベル差によるポイントのハンデなどが失われている。
 予め賭けたポイントを、得るか失うかの戦い……覚悟がある者だけが挑む死合だ。

 すぐさま転送が行われ、俺たちの視界には三人組の姿が。
 全員が種族レベルを250まで上げた、優秀な祈念者たちだった。


「……君たちが『英雄と従者』だね。噂はかねがね聞いているよ」

「よろしくお願いします!」
「……お願いします」

「君たちみたいな小さい子たちが相手だと、油断する人も多かっただろう。けど、ここではそれが通じると思わないことだね」


 とても真摯に対応しているように見えるのだが、完全に舐めているな。
 ……自分たちなら勝てる、所詮は雑魚を付けたバカたちだと顔が物語っている。

 しかし、顔の面が厚いのか、見事それを俺にだけ見せるという高等テクニックまでやってくれていた。

 俺としても、フーラとフーリに不快な思いはさせたくないし、そのまま無視する。
 ……すると今度は舌打ちを、いったい何がしたいんだか。


「フーラ、フーリ。僕はサポートに徹するから、二人でお願いするよ」

「護衛は大丈夫ですか?」

「魔術もあるから、大丈夫だよ。だから、思う存分戦うんだ」

「分かりました……気を付けてくださいね」


 こうして心配してもらえるのも、弱体化した縛りプレイならではだ。
 ……さて、俺も少々腹が立っているし、嫌がらせ程度はやらせてもらおうかな。


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