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偽善者とお祭り騒ぎ 二十六月目

偽善者と夢現祭り二日目 その11

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 イベントエリア トレジャーフィールド


《──なんてことがあってな、フェニが防衛してくれたんだ。まあ、ダンジョンフィールドに配置したのも、それが目的って感じもあるからな》

「……で、それをワタシに言って、いったいどうしたいのかしら?」

《んにゃ、特には。だってリーってあんまり戦闘できないし、かといって頭脳労働が向いているわけでもないからな……うん、ただの眷属自慢だ》

「あ、あなたという人は! メルス! あなたはいつもいつも、ワタシのことをなんだと思っているのかしら!?」


 フェニの視界から次に間借りを行うのは、トレジャーフィールドに居るリー。
 先ほどまでの話を聞かせていたのだが……どうやら怒らせてしまったようだ。


「ワタシにだって、戦う力があれば……」

《全部支援特化だから、意味ないんじゃないか? そりゃあ相手を弱体化させて、自分は強化すれば勝てるだろうけど……まあ、あんまり褒められた戦い方じゃないよな》

「なっ! そ、そういうことしかできないようにしたのがメルスでしょう! もう、そうやってメルスはいつもいつも、ワタシにばかり冷たいんだから!」

《そんなつもりは無いんだがな……まあ、これもリーを想っての対応だと考えてくれ》


 打てば響く、それを地で行くのがリーの素晴らしいところである。
 彼女といると、俺は癒される……なんだかこう、理想の反応をしてくれるからな。

 なんだかんだ言いつつ、リーもまた武具っ娘の一人……俺を肯定してくれる。
 それに甘えてばかりではいられないが、彼女の場合は方向性が違うので甘えてしまう。


《話を切り替えよう。トレジャーフィールドの方はどうなってる? もう[メカルテス]が発見されたのは分かっている》

「そんな風に話を逸らしたって、誤魔化されませんから……とりあえず、メルスの予想通りここに来る人の数が増えましたわ。目的は数が増えたユニーク種へ挑める魔道具、少し乱暴な方も出てきましたの」

《おっ、お嬢様口調ってことは機嫌が少しは良くなってくれたか……それで?》

「……怒るわよ? んんっ、そちらはすでに鎮静済み。少々手荒ではありますが、ペナルティを課すことで抑えました」


 リーは支援系の魔法に特化しているが、中でも『呪い』に才能が特出している。
 プラスとマイナス、どちらの性質も使いこなしているため、広範囲でも問題ないのだ。

 何度も言うが、リーは武具っ娘。
 たとえ雰囲気がボケキャラっぽくても、求められた在り方を失うことなく、俺以上の才覚を以って願いを実行してくれる。


「[GMコール]とリンクし、一定以上の報告を受けるような行動を取った人にはペナルティが課せられますの。ちなみに、仕掛けは報復系の呪いを……ってメルス、どうかしましたの?」

《リーが……真面目に話している!?》

「ぶっ飛ばしますわよ!? 本当に、メルスはいつもいつも……もうっ!」


 だが実際、リーのやったことは偉業だ。
 向こう側が協力しているとはいえ、ほぼ独学で[メニュー]に干渉し得る魔法を編み出したのだから。

 眷属たちに魔法を創ってもらうことが多いが、こと[メニュー]という権能関係の事柄に関してはリー頼りなんだよな。

 決して直接戦闘を行えるような強さは無いが、それ以上に後方支援に特化している。
 偽り、溜め込むために望んだ神器から生まれたからこそ……なんだろうか?


《……似た感じで戦闘のサポートを望んだからこそ、ギーはあんな感じなのか? なるほど、つまりリーが弱いのは俺が望んだからということだ》

「なぜそういう話になって、そのような結論に至ったかは分かりません。ですが、これだけは分かりますわ──この手が震えるのは、あなたを殴るためだと!」

《ハハハッ、今俺が居る場所には届かないだろうよ。ともかく、リーは呪いの管理をしてくれるということでいいか? いっそのことギーも呼んで、護衛をしてもらうというのもありなんだが?》

「……いいえ、結構よ。あの子は今、子供たちの護衛をしているのでしょう? ワタシでも、その重要性は理解しているもの」


 子供たち、というのは(精神年齢が)子供な眷属という意味ではない。
 このイベントに参加した中で、庇護を求めた子供たちの護衛を行っているのだ。

 死に戻りが行われるとはいえ、死ぬという行為に慣れさせるわけにはいかない。
 ということで、移動制限を設ける代わりに無償でそのサービスを行っている。

 ……俺がその様子を見に行っていないのは単純に、行く気がないから。
 子供たちが騒がしいし、眷属の視界がブレブレになるんだよな。


《なら、大丈夫か……リーは本当にダメなときこそ、独りでなんとかしようとするから心配なんだよ。ギーには言ってくれるから、いつも教えてもらっているが》

「……それで、いつもメルスが知っていたんですね。もう、ギーったら、二人だけの秘密だって言ったのに!」

《まあまあ、俺もギーに命令しているから仕方ないんだ。……ギーも命令なら仕方が無いと、泣く泣く言っているんだ》


 たとえそれが、水魔法で生み出した涙であろうと……うん、泣きながら言っている。
 そして何より、彼女には対価としていろいろと支払っているからな。


《ティルの視界を借りたときは、戦闘も起きたが……リーは本当に何もなかったな》

「もう、行ってしまうんですの?」

《長居は無用。そのうち間接的にでも、子供たちの様子でも見に行くとするよ……誰の視界なら、それができるかな?》

「あまり無茶はしないでください」


 なんて会話の後、俺はリーの視界リンクを切断する。
 さて、一度二人の所に戻るか。


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