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偽善者とお祭り騒ぎ 二十六月目

偽善者と夢現祭り二日目 その10

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『何ゆえに、この地に踏み入れるか』

「くそっ、階層守護者が居るのかよ!」

『すぐに引き返すのであれば、見逃そう。だが、さらに足を進めるのであれば……相応の代償が必要と思え』


 フェニが不死鳥の姿で、二層を訪れた探索者たちに警告をする。
 全員が祈念者、ならば特別金銭に苦しんでいるというわけではないだろう。


「どうする、戻るか?」

「はぁ? バカなこと言うなよ、このルートで入るために、どんだけヤバい橋を渡ったと思ってやがる! アイツを殺して、さっさと掘っていくんだよ!」

『……ふむ、それが選択か。ならば致し方あるまい──多少強引になろうと、お帰り願おうことにしよう』


 バッと大きな翼を広げると、威嚇をする。
 それ自体にスキルなどは使っていないようだが、フェニのレベルと放つ存在感が、彼らに恐怖を抱かせる。


「……ひぃっ!」

「お、おい、レベルはどうなんだよ!」

「……れ、レベル250!?」

『ッ!?』


 実際はもっと上なのだが、それ以上だと普通の奴らがありえない数字だと思ってしまうので、偽装ステータスのレベルは250だ。

 魔物がそのレベルに至るのことは、極めて少ないケースだ。
 雑魚の魔粘体スライムだって進化すれば、レベルが上げづらくなるからな。

 今のフェニの種族は、すでに最上位の種族なので進化は存在しない。
 逆に言えば、合計レベルで言えば250以上を超える……それが魔物の凄いところだ。


『なんだ、お前たちの覚悟とはレベル差程度で折れるものだったのか。ならば、疾くこの地を去るがよい!』

「! ……そうはいかねぇんだよ。お前ら武器を取れ、絶対に殺す。神鉄オリハルコンをゲットできた暁には、俺たちはやりたい放題できる!」

「そうだ……諦めてたまるかよ」「不死鳥フェニックスが死なねぇなら、死ぬまで殺せばいいだろ!」「水でもぶっ掛ければ死ぬんじゃねぇか?」「よっしゃぁ、やっちまえ!」

『……理由はどうあれ、覚悟は決まったか。ならばよい、お前たちのすべてを賭けて我に挑め! そして──何も残せぬまま死ね!』


 フェニの種族は──【永熱魔王】。
 種族としての【魔王】でも、悪事を働くような【魔王】でもない……ただ概念を司る、存在が【魔王】染みているだけだ。


『我が炎の前に眠れ──“赤炎”』


 生みだされた赤色の炎。
 それは揺らめく炎に例えとして付けた色ではなく、本当に赤色でのみ燃える炎。

 それは真っすぐ彼らの下へ向かう。
 もちろん、ただ愚直に受けるわけではないようだ。


「壁だ!」

「はい──“鋼鉄壁アイアンウォール”!」


 堅固な鉄でできた壁によって、火を防ごうとする祈念者たち。
 熱は帯びるだろうが、水魔法も使えるようなのでどうとでもなる……そう思ったか。


「おいおい、なんでだ……いくらなんでも早すぎるだろう!」

『赤の炎はすべてを燃やす。金属だろうと、魔力だろうと……水すらもな』

「なら、重ねておけ!」

「“鋼鉄壁”! “鋼鉄壁”!」


 魔力切れで倒れた男を担ぎ、壁から遠ざかる彼ら。
 その判断が正しかったと証明するように、すぐさま融けていく金属。

 どこかの『選ばれし者』を彷彿とされる現象だが、まあ仕方ない。
 なぜならフェニの魔法は、彼の固有能力の上位版に位置する炎だからな。


『無は再び有へ──“緑炎”』

「ふ、フレイムアイアンゴーレム! レベル200です!」

「ふざけんなよ! なんだよそれ、チートすぎるだろうが!」

『チート、お前たちは何にでもその言葉を使うな。その炎は、我が燃やしたモノに命を与える炎。そこにいったい、何の違和感があるというのだ』


 彼が紡ぐ縁によって強化される炎、あれはあくまで彼との関係性が生みだすものだ。
 しかしフェニのモノは、多様に変質した色付きの炎を生みだすもの。

 赤はすべてを燃やし、緑は命を育み、他の色もそれぞれ異なる性質を宿している。
 それこそが、フェニの得た炎の力……万能性を求めた結果、辿り着いた固有能力だ。


『やれ、炎の下僕たちよ。奴らに死を……我は何もせぬ、信じるかどうかはお前たち次第だがな』

「チッ、お前らやるぞ! 先にアレを潰し、それからアイツをぶっ殺す!」

『ふむ、やれるのあればな。不死鳥とは、死から程遠い種族なのだが』


 一番は神族だが、彼らは『神殺し』さえあれば絶対に死んでしまう。
 だが不死鳥なら、称号とかの効果で死ぬことは無いんだよな。

 なので彼らの言動に、俺が反応することは無い……そう、冷静なんだぞ。
 これからどうやって殺すかとか、そんなことなんていっさい考えていないんだからな。


《フェニー、これからどうするんだ?》

《うむ、次は“紫炎”で奴らが倒したゴーレムを再び操るつもりだが……ご主人は、もう戻るのか?》

《そうだな、一つの場所に意識を向けすぎるのも、ちょっと不公平だって言われててな。悪いな、フェニ》

《構わない。ご主人が観てくれていた、それだけでも誇れることなのだ。最後まで、この使命を全うしよう》


 この先の展開は分かっているということもあり、次の場所に視界を移し替える。
 フェニには悪いことをするな……って、これから全眷属にこれをするんだけどな。


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