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偽善者とお祭り騒ぎ 二十六月目
偽善者と夢現祭り二日目 その09
しおりを挟むイベントエリア ダンジョンフィールド
「ご主人とのデート、やはり嬉しいモノだ」
《俺自身はいないけどな。傍から見ると、妄想デートみたいになったりしないか?》
「周りからの目など関係ない。我が居て、ご主人を感じている。そして、ご主人が我を見てくれる……これがデートだと言わずして、何と言おうか」
《たぶん、いろいろとあると思うぞ》
燃えるような真っ赤な髪を靡かせながら、彼女──フェニはそんなことを言う。
薄っすらと頬も色を紅くしている辺り、照れを感じているようだ。
しかしまあ、その気持ちはとても嬉しい。
フェニに想ってもらえる……幸せ者だな。
意識しかない今の俺なので、顔の火照りなどは感じられないけれども。
《さて、前はミシェルの方を間借りさせてもらったが、今回はフェニだ。そういえば、前回の悪魔で何か揉め事は起きたか?》
「倒した際の討伐報酬に関してだな。オートとマニュアル、祈念者と自由民が共に居る以上起きる問題だが、ドロップ品に関する件で揉めていた」
祈念者は初期設定の場合、魔物を倒すと自動的に[アイテムボックス]へ、ドロップ品が収納される。
ただしその機能を使うと、最低限のアイテムしか手に入れることができない。
解体など、この制限を解除するスキルを得ることで、自分で捌けるようになるのだ。
自由民の場合は、スキルを持っていてもいなくても、最初から肉体のまま残る。
スキルが無いと、品質が下がるのだが……それでも、ドロップ量は多くなるわけで。
「介入し、[トレード]を使わせようとしたのだが、不平等としか言わない。最終的には仕方なく、[PvP]で決着をつけさせた」
《自由民の方は大丈夫だったのか?》
「相手はアルザス、そう簡単に負けるはずもないだろう」
《……可哀そうに》
うちの迷宮に、少なくとも一度も死なずに通うことができているのだ。
その職業である【探索王】の能力は迷宮特化だが、能力値の補正はちゃんと働く。
レベルを上げた自由民は、使えるスキルの多さから祈念者に勝る場合が多い。
彼の場合は迷宮で使えるスキルを多く所持しているので、まさしくそれに該当した。
たとえ集団で挑んだとしても、アイツ独りに勝つことなどできないだろう。
迷宮でそんな戦いのなど当たり前、それに対応できるからこその【探索王】なのだ。
「問題はそれくらいだった。あとは説明するだけで納得していたし、当人同士で解決することが多かった。ご主人が気に病むことなどは起きていないな」
《そりゃあ良かった……悪魔に関しては、俺があえて狙った感じもあるから、気にしていたんだよ》
ミシェルの成長のため、親玉は逃がして進化を促している。
そちらにも目は行き届いているのだが、少なくともイベント中では進化できないな。
◆ □ ◆ □ ◆
神秘の鉱窟
そうして話をしていてもやることが無いため、直接迷宮のパトロールを行う。
今回訪れたのは、鉱床が無数に用意された採掘場だ。
ここは踏破が目的ではなく、採掘するために訪れる場所。
そのため入り口では金を取られ、魔道具が支給される。
それを持っていないと排除されるし、一定時間経つと魔道具が消滅してしまう。
なので再び(正攻法で)入るためには、また買い直さなければいけない仕組みである。
《──まあ、そんな緩い仕組みだから、裏技はあるんだよな。迷宮だから攻略不可能にはできないし、金を取って入れているのも、あくまで人の事情でしかないか》
なんせここ、『神鉄』が出てきます。
現人神である俺が用意した迷宮で、出ないのもあれかなぁという判断によるものだ。
祈念者は神器の作製に励んでいるので、その価値は尋常ではない。
バザーに少しだけ流していたのだが……即座に完売したらしいので。
「ご主人、その者たちをどうすればいい?」
《予め警告してある。一階層はイベント中は採掘だけだが、二階層に辿り着けたなら好きにしていいと……ただ、好きにされてもいい覚悟があるなら、ってな》
「なるほど、つまり我の使命は──」
《死に戻りさせてやってくれ。ルール違反ではないが、ここに来た人々の目的を奪おうとすることは罪だ。フェニ、武具は制限させてもらうが……圧倒的な力を見せてやれ》
さすがに武具を自由にさせると、迷宮の方が耐えられなくなってしまう。
なのでそっちは制限を設けるが……彼らの命は、一度失われた方がいい。
《神鉄は希少だ、転売をすればさぞ儲かるんだろうな。金を欲しがる理由はある、だが俺はちゃんと機会を与えている。それを跳ね除けても狙うのであれば……うん、金の分を、命で支払ってもらおうか》
「ご主人の命とあれば、やってみせよう」
《まあ、別の迷宮とはいえ階層守護者だし。ちょうど二階層だ、頑張ってくれよ》
この迷宮は三階層しか無い。
一階層目が採掘用、三階層がゴール。
防衛用の階層は二階層のみ、だがそれだけで充分なのだ。
──ここに君臨するのは、最強の守護者。
「うむ、『天魔迷宮』第二層守護者フェニ、出張サービスと行こうではないか」
フェニは死ぬことはあっても、負けることは無い。
そして、『天魔迷宮』はこれまでに一度として踏破されていない不落の地。
守護者であるフェニが居たからこそ、そこは誰にも侵されていないのだ。
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