1,696 / 2,518
偽善者とお祭り騒ぎ 二十六月目
偽善者と夢現祭り二日目 その07
しおりを挟む「──というわけで、少しの間だけ僕独りでやってみようと思うんだ」
「えっ、えぇええええええええええ!?」
「……危ない、止めた方がいい」
「そ、そうです! ノゾム様、私たちが何かダメだったのでしょうか!?」
「そうじゃなくてね。ほら、さっきの戦いを見たからね……僕と同じくらいの人と戦ってみて、どうなるかを試したいんだ」
二人の『選ばれし者』による衝突は、俺の中に眠る闘争心を目覚めさせた。
……とは言っても、さすがに本体が夢想するとかそういう展開は無しだ。
あくまで低レベル祈念者ノゾム君として、少しだけ常識はずれな力を振るうだけ。
フーラとフーリがいっしょだと、確実に勝敗に影響が出るからな……主に勝利で。
「二人にはその間、公正委員として辺りを見ていてほしい。アレを使うことになるから、何か企む人が出るかもしれないんだ」
「わ、分かりました……ですがノゾム様、無茶はダメですからね?」
「……めっ」
「うん、分かってる」
というわけで、[PvP]を1vs1に変更しておく。
同レベルからランダムという設定にしておけば、相手の強さは同程度になるはずだ。
◆ □ ◆ □ ◆
さて、俺の持つ邪縛について説明しておこう──(運営の邪縛)というものだ。
無職になり、能力値も最低限になったりするのだが……何より、悪運に見舞われる。
どれだけ運勢値を高くしても、変わらない悪運の強さがそこに。
要するに……今の俺にランダムとは、最悪の状況を生む相性でしかないのだ。
「──同程度がいないなら、こうなるのも仕方ないのかなぁ?」
「へっ、ちょうどいい鴨が来やがった。なんだよ職業の合計レベルが0って、縛りプレイにもほどがあるだろ!」
「……よろしくお願いします」
「あんっ? ああ、よろしくってな──楽してポイントが手に入るんだ、多少少なくても今回は我慢してやるか」
俺には鑑定スキルが無いので、相手がどれくらい強いのかは分からない。
……まあ、使えていたとしても、レベル差でまったく分からなかっただろうけど。
名前は[PvP]のシステム経由で判明しているが……必要ないか。
俺も俺で、負ける気はしない──腕に嵌めた輪っか、そこに宝珠が付いているから。
──試合開始!
戦闘が始まった瞬間、俺は宝珠へ自身の魔力の五割を捧げる。
そして、今の俺はソロ……条件は満たされた、今こそこの場に召喚しよう。
「それじゃあ、さっそく……っ!」
「来て、ディー!」
「おいおい、なんだよそりゃ……はぁ!? ゆ、ユニークモンスター!?」
おそらく男の鑑定スキルには、俺の肩に乗る魔物の名前が載っているのだろう。
世界にたった一匹存在する、唯一無二の名前──『進退流転[ディバース]』が。
「テメェ、騙しやがったな!!」
「騙してなんかいないよ、僕は実際に弱い。だからこうして、頼れる仲間をいっしょに戦うんだ」
「召喚系の特典かよ。クソ雑魚がランダムでマッチングされたってことは、それを補って俺と同等になるだけの力があるってことか。おいおい、ふざけんなよ……チッ」
「警戒するんだ……けど、もう遅いよね──ディー!」
彼も彼なりに考察しているようだが、行儀よく待つつもりなど無い。
即座に殺らせる指示は出さないモノの、他に試したいことが盛りだくさんだ。
俺の意思を汲み取って、ディーはその姿をスライムから別のモノへ切り替える。
愛らしい球体は、とても堅い金属質な剣のような姿へ。
種族名は『鉄魔粘体』。
鉄の強度を得たスライムなのだが、魔力によってただの鉄よりも硬度を持っている。
「行こう──“無光”!」
「眩ッ……クソ野郎が!」
「ディー、お願い!」
『!』
相手が暗視スキルを種族として持っていないのは、普人な見た目から分かっていた。
なので目晦ましに魔法を使ってから近づいて、近接戦闘に持ち込む。
身体強化スキルに加え、あれから命力操作スキルも得て統合した──身力操作スキル。
マニュアルで体内のエネルギーを操れるこのスキルで、効率よく戦闘力を上げた。
怪力、剛筋、握力強化スキルを同時に起動して、そこに身体強化スキルで消費するエネルギーの一部を流用する。
通常よりも少ない消費で、多くのスキルを使うことが可能となった。
自力に差のある鍔迫り合いも、これによってどうにかできるように。
そして、ディーが動く。
意思を持つ剣となっているので、鍔迫り合いをしている間も攻撃することができる。
「チッ──“回避”!」
「体ががら空きになってるよ──“掏摸”、“拉致”、“窃盗”、“暗躍”!」
「はぁあ、ふざけんなよ!」
俺が適性を持つ嫌らしいスキルを重ねて使い、いくつかアイテムを奪っておく。
直接[アイテムボックス]へ行ったので、その中身は知らないけど。
いちおう[ログ]を確認すれば、何を奪って奪われたか把握することはできる。
だが……今の俺はかなり限界で、そんなことに回す処理能力も惜しい。
ディーに魔力付与スキルで補助を行い、隠蔽と隠密スキルで隠し玉を密かに仕込む。
相手が攻撃してくるので、逃走スキルで回避しながら次の作戦に移行した。
──[アイテムボックス]を操作しつつ。
0
お気に入りに追加
510
あなたにおすすめの小説
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
DPO~拳士は不遇職だけど武術の心得があれば問題ないよね?
破滅
ファンタジー
2180年1月14日DPOドリームポッシビリティーオンラインという完全没入型VRMMORPGが発売された。
そのゲームは五感を完全に再現し広大なフィールドと高度なグラフィック現実としか思えないほどリアルを追求したゲームであった。
無限に存在する職業やスキルそれはキャラクター1人1人が自分に合ったものを選んで始めることができる
そんな中、神崎翔は不遇職と言われる拳士を選んでDPOを始めた…
表紙のイラストを書いてくれたそらはさんと
イラストのurlになります
作品へのリンク(https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=43088028)
虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる