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偽善者とお祭り騒ぎ 二十六月目

偽善者と夢現祭り初日 その19

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 すでに死者を一人出した、『選ばれし者』であるフレイのハーレムパーティー。
 彼やそのハーレムメンバーたちが協力してボス──[ネクロエム]に挑んでいる。

 そんなメンバーの一人、たしかクリムとかいう幼馴染ポジションの女。
 彼女が強力な一発を放とうと魔力を溜めていると、突然そこに矢が飛んできた。


「おおー、気が付いたんだね」

《チッ、まあさすがはハーレムメンバーなだけはある。フルメンバーじゃなかった時ならともかく、周りがサポートするからこそ気づくことができたわけか》

「あの人……えっと、リリメラは周りを見れるようになったってこと?」

《そうだな。魔力で探知するだけじゃない、五感系のどこかを強化して見つけたのか》


 ネタバレをすると、その矢は彼女ではなくその後ろ──死んだメンバーの体に刺さる。
 リカと呼ばれた少女は、頭に矢が刺さったにも関わらず何も反応しない。


「あれって、どういう仕組みなんだっけ? たしかプレイヤーの体って、回収されて消えちゃうんでしょ?」

《[ネクロエム]は殺すんじゃなくて、一時的に符術“使屍”と似た状態になるんだ。だから死ぬと死体を回収する、こちらで再構築してからそれを操って投入……そうして、ああいう感じで使うわけだな》

「アンデッドになっているんだよね? フレイが頑張って白い火を出してるけど、全然変わってないよ?」

《あくまで、似た状態だからな。正確には死体は瘴気じゃなくて、[ネクロエム]の保有する因子によって操られている。解除したいなら、それを除去しなければならない》


 ……ん? どうやらノヴァと呼ばれた詳細不明な美女が気づいたようだ。
 彼女の指示に従って浄化じゃなくて捕縛に変更、しっかりと抑え込んでいるな。

 どうやら美女が担当しているのは、状況の把握というか司令塔のようだ。
 アンデッドがアンデッドを作り出すという常識を破る能力を、見事に暴いたわけだし。

 それ以降はリカの死体を抑え込んだまま、[ネクロエム]を攻撃し始めた。
 ……根暗なMではないので、普通にダメージで苦しんでいたりする。

 彼らはサソリの尾を出して以降、少しずつ現れ始めた[ネクロエム]の多様な動物的な特徴を破壊し始めた。

 長い耳で音を察知するウサギの耳、外骨格から生えていたサルやゴリラの腕。
 他にも鳥の羽やリカを殺したサソリの尾、色んな部分が破壊されてしまった。


《もう一人か二人、不意打ちで倒せれば上手くいったんだけどな……。さすが、フレイのハーレムパーティーだよ》

「この後はどうなるの?」

《死者の数に応じて、分散して因子を植え付ける予定だった。普通は相手の数が多いんだから、体に出る特徴も減るはずなんだが……あぁあぁ、それはお前らのせいなんだよ》

「頭がウサギの耳で腕はゴリラとサル? 分かった、背中のアレは鳥の翼だよね? どれもこれも、フレイのパーティーが破壊した部分ばっかり」


 彼女が言う通り、リリ(死体)の体にさまざまな動物の特徴が現れる。
 キメラ娘(死体)に進化することで、身体能力が飛躍的に向上するのだ。

 とはいえ、これはイレギュラー。
 彼らが死亡者数を減らしてしまったうえで大量に破壊したからこそ、その強化幅が大きく変動してしまったがゆえの結果。

 なので彼らの冒涜に対する怒りは、その一部を自分たちで背負ってもらいたい。
 本当なら、うさ耳っ娘か天使か……まあ、ハズレ枠(?)のどれか一体のはずなんだ。


「うわっ、物凄く強いね」

《アンデッドに対する補正、そして獣系の種族に対する補正の二重バフが掛かっているようなものだ。アンデッドの痛覚無視と獣化による強靭な肉体が上手く掛け合わされて、暴虐無双をしているな》

「アンデッドじゃないのにアンデッドの補正は……ズルいと思う」

《言うなれば、『状態異常:ネクロエム』といった状態だからな。ユニーク種だから、それだけで大抵の奴は納得するだろうよ》


 唯一無二の存在ゆえに、異様な能力に目覚めることが多いのだ。
 今回の場合、[ネクロエム]の場合は殺さなければ使えない代わりに異様性を持つ。

 誕生してからそう長い時は経っていないのだが、元となった奴らが強大だからな。
 ユニーク種としてのナニカがその才能を引き継ぎ、ああも戦わせているのだろう。

 フレイも固有スキルである炎を全開にしているのだが、死体を盾に上手く使うことで彼の甘い部分を突いて戦っている。


《大衆で挑めば大量に破壊できて、その分多くの死者が出る。数は多いが埋め込まれるキメラの特徴は減るから、あんまり強くない。逆に精鋭で挑めば破壊できる数は減るが、その分埋め込まれる数が減るはずなんだぞ》

「フレイパーティーみたいに、強い相手はその両方が起きちゃうんだね。メルスの悪辣な部分が、色濃く出ているんだ」

《……いや、俺はデザインをしただけで全然関与してないからな。これはスキルが俺の意志を汲み取って、最後の仕上がりとかは自動でやってくれたわけだし。うん、俺が悪いわけじゃない》


 ちなみに、フレイたちも一発で攻略できるとは思っていないと最初に言っていた。
 あくまで[ネクロエム]の情報を売ることで、お金を得ることが目的だと。

 ……それでそのまま本体と遭遇する辺り、『選ばれし者』の運命補正の凄さを感じる。
 とはいえ、さすがにご都合主義で勝てるほど甘くはない──それがユニーク種だった。


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