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偽善者とお祭り騒ぎ 二十六月目

偽善者と夢現祭り初日 その10

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 イベントエリア トレジャーフィールド


 さて、舞台は再び視点と共に変わる。
 トレジャーフィールドでも、問題が起きるからこそ眷属が配置されていた。

 迷宮ではなく地形を上手く利用し、巧妙に隠した数々の宝。
 参加者たちはその中でも、もっとも価値のある品を求めてここを訪れている。

 ──ユニークモンスターへの挑戦権。

 隠されたそれは、チケットの形である。
 それを千切ることで隔離空間へ転移され、中で待ち受けるユニークモンスターと戦うことになるのだ。

 ……決して、権と券の洒落じゃないぞ。
 そして『兼』だなぁ、なんて考えてもいないんだからな。


 閑話休題わすれてください


《ただまあ、隠し場所を見つけられるかどうかは別なんだよな……それに、勝てるかどうかもだけど》

「ふーん、それってどうなのかしら」

《どうって言われてもな》

「まあ、私がここに選ばれた理由は分かるわよ。ここだと参加者たちに見つからない能力や魔法が必要だし、何より私の『眼』が役に立つんでしょう?」


 そう語るのは、猫耳の剣士にしてリュキア国の王女であるティルことティルエ。
 彼女の瞳はあらゆる瞳術に通じており、他者の心すら読むことができる。

 今回はその最たる能力ではなく、暗躍するためにその眼を生かしてもらうつもりだ。
 俺と同じく俯瞰して観ることができる彼女に、このフィールドの管理をしてもらう。

 ティルはちゃんと気配遮断スキルを持っているし、剣と一体化するとか凄いことをするために自分の存在感をゼロにすることもできるからな……うん、ハイスペックである。


「しかしまあ、ずいぶんと欲深い人たちが多いのね。祈念者って、そこまでしてユニークモンスターを倒したいのかしら?」

《実際、便利ではあるからな。それに、祈念者は力の差が激しいんだ。それを補うのに特典のドロップ品は最適。なんせ自分に合ったアイテムだ、使いこなせるのは確定だぞ》

「私はアレ以外倒したことがないけど……そこまで欲しくなるものかしら? ミシャット様から賜った鎖、それにこの子の方が優れていると思うんだけど」

《……神器と聖剣を比較対象にするなよ。特典はアジャストする分にリソースを使ってるけど、その二つは使い手を選ぶ代わりに絶対に高性能。そして、ティルとの相性は抜群だからそう思うんだよ》


 ティルは剣に愛された剣の申し子だ。
 触れた剣すべてを超一流の域で扱えるし、剣系のスキルならばすぐに習得できる。

 そんな彼女が国宝であった獣聖剣という聖剣の亜種を得るのは、当然の結果だ。
 そして神器、彼女が封印される過程で己自身が触媒となったものである。

 二つが彼女に完璧と呼べるレベルの親和性と適合率を叩き出すのが、必然と言わずしてなんと言えばよいのだろう。


《あくまでもユニーク種の特典は、その元となった個体の強さとか潜在能力に依存したアジャストしかできないからな。『超越種』の討伐でもしない限り、その剣と鎖を軽々超えるようなチートアイテムは出ないだろう》


 なお、『超越種』の試練終了後に貰えるアイテムも、その仕組みが使われている。
 アジャストしない代わりに、高性能というわけだ。

 しかし報酬が分散しているし、『超越種』の試練報酬では全リソースは注がれない。
 だが、討伐をした場合は……誰もが羨む至高の逸品が、討伐者には与えられるだろう。


《あっ、そういえば鞘の方はどうだ? このイベントに合わせて渡してみたけど、苦情が入るなら作り直すが……》

「問題ないらしいわ。いて挙げるなら……出番が欲しいと言っているわね」

《なんか、血に飢えた魔剣って感じがするんだけど》

「あながち間違いじゃないわね。血じゃなくて、ただ使えば満足するらしいわ」


 獣聖剣は聖獣から与えられた武具のはず。
 なのに、そんな武闘派な聖剣になっていたとは……いやまあ、鞘に付けた機能が理由でもあるんだけどな。


「ところで、ここだと具体的にどんなことをすればいいのかしら? 迷宮の方と違って、あんまり揉め事にはならないと思うけど」

《あんまり、そう言うってことはだいたい察しは付いているんだろう? ──そりゃあ、目的の宝が一つしか無いんだから揉めるさ》

「他にもいろいろと罠があるみたいじゃないの。とっくに視てるわよ」

《財宝には罠が定番じゃないか。こっちだとMPKが合法なんだよな……うん、各フィールドごとに個性があるのはいいことだ》


 バトルフィールドはPKが合法だ。
 ダンジョンフィールドは徒党を組む必要が多いし、逆にトレジャーフィールドだと究極的に自分以外すべてが敵である。

 ちなみにバザーはシンプル、金がモノをいう場所だ。
 問題を起こしても[ロウシャジャル]が出ないことなら、金を払えば許されるしな。


《改めて説明すると、ティルには妨害工作をやってもらう。意図的に罠を踏んだり、直接斬りにいったり……これは最終手段だが》

「それをやる条件は?」

《一つは場所の独占。宝箱の中から出るヒントの中には、ある程度場所を絞れる物もあるからな。だからと言って一定時間以上居座るなら、それはマナー違反だろう》

「なら、そんな物用意しなければいいじゃない……と言いたいところだけど、それだと発見できないのね。分かったわ、任せなさい」


 文字通り、何でも見透かせる彼女に些事ならともかく大きな隠し事はできない。
 頼むなら相応の誠意を見せれば……こういうことでも、やってくれるのである。


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