1,679 / 2,518
偽善者とお祭り騒ぎ 二十六月目
偽善者と夢現祭り初日 その10
しおりを挟むイベントエリア トレジャーフィールド
さて、舞台は再び視点と共に変わる。
トレジャーフィールドでも、問題が起きるからこそ眷属が配置されていた。
迷宮ではなく地形を上手く利用し、巧妙に隠した数々の宝。
参加者たちはその中でも、もっとも価値のある品を求めてここを訪れている。
──ユニークモンスターへの挑戦権。
隠されたそれは、チケットの形である。
それを千切ることで隔離空間へ転移され、中で待ち受けるユニークモンスターと戦うことになるのだ。
……決して、権と券の洒落じゃないぞ。
そして『兼』だなぁ、なんて考えてもいないんだからな。
閑話休題
《ただまあ、隠し場所を見つけられるかどうかは別なんだよな……それに、勝てるかどうかもだけど》
「ふーん、それってどうなのかしら」
《どうって言われてもな》
「まあ、私がここに選ばれた理由は分かるわよ。ここだと参加者たちに見つからない能力や魔法が必要だし、何より私の『眼』が役に立つんでしょう?」
そう語るのは、猫耳の剣士にしてリュキア国の王女であるティルことティルエ。
彼女の瞳はあらゆる瞳術に通じており、他者の心すら読むことができる。
今回はその最たる能力ではなく、暗躍するためにその眼を生かしてもらうつもりだ。
俺と同じく俯瞰して観ることができる彼女に、このフィールドの管理をしてもらう。
ティルはちゃんと気配遮断スキルを持っているし、剣と一体化するとか凄いことをするために自分の存在感をゼロにすることもできるからな……うん、ハイスペックである。
「しかしまあ、ずいぶんと欲深い人たちが多いのね。祈念者って、そこまでしてユニークモンスターを倒したいのかしら?」
《実際、便利ではあるからな。それに、祈念者は力の差が激しいんだ。それを補うのに特典のドロップ品は最適。なんせ自分に合ったアイテムだ、使いこなせるのは確定だぞ》
「私はアレ以外倒したことがないけど……そこまで欲しくなるものかしら? ミシャット様から賜った鎖、それにこの子の方が優れていると思うんだけど」
《……神器と聖剣を比較対象にするなよ。特典はアジャストする分にリソースを使ってるけど、その二つは使い手を選ぶ代わりに絶対に高性能。そして、ティルとの相性は抜群だからそう思うんだよ》
ティルは剣に愛された剣の申し子だ。
触れた剣すべてを超一流の域で扱えるし、剣系のスキルならばすぐに習得できる。
そんな彼女が国宝であった獣聖剣という聖剣の亜種を得るのは、当然の結果だ。
そして神器、彼女が封印される過程で己自身が触媒となったものである。
二つが彼女に完璧と呼べるレベルの親和性と適合率を叩き出すのが、必然と言わずしてなんと言えばよいのだろう。
《あくまでもユニーク種の特典は、その元となった個体の強さとか潜在能力に依存したアジャストしかできないからな。『超越種』の討伐でもしない限り、その剣と鎖を軽々超えるようなチートアイテムは出ないだろう》
なお、『超越種』の試練終了後に貰えるアイテムも、その仕組みが使われている。
アジャストしない代わりに、高性能というわけだ。
しかし報酬が分散しているし、『超越種』の試練報酬では全リソースは注がれない。
だが、討伐をした場合は……誰もが羨む至高の逸品が、討伐者には与えられるだろう。
《あっ、そういえば鞘の方はどうだ? このイベントに合わせて渡してみたけど、苦情が入るなら作り直すが……》
「問題ないらしいわ。強いて挙げるなら……出番が欲しいと言っているわね」
《なんか、血に飢えた魔剣って感じがするんだけど》
「あながち間違いじゃないわね。血じゃなくて、ただ使えば満足するらしいわ」
獣聖剣は聖獣から与えられた武具のはず。
なのに、そんな武闘派な聖剣になっていたとは……いやまあ、鞘に付けた機能が理由でもあるんだけどな。
「ところで、ここだと具体的にどんなことをすればいいのかしら? 迷宮の方と違って、あんまり揉め事にはならないと思うけど」
《あんまり、そう言うってことはだいたい察しは付いているんだろう? ──そりゃあ、目的の宝が一つしか無いんだから揉めるさ》
「他にもいろいろと罠があるみたいじゃないの。とっくに視てるわよ」
《財宝には罠が定番じゃないか。こっちだとMPKが合法なんだよな……うん、各フィールドごとに個性があるのはいいことだ》
バトルフィールドはPKが合法だ。
ダンジョンフィールドは徒党を組む必要が多いし、逆にトレジャーフィールドだと究極的に自分以外すべてが敵である。
ちなみにバザーはシンプル、金がモノをいう場所だ。
問題を起こしても[ロウシャジャル]が出ないことなら、金を払えば許されるしな。
《改めて説明すると、ティルには妨害工作をやってもらう。意図的に罠を踏んだり、直接斬りにいったり……これは最終手段だが》
「それをやる条件は?」
《一つは場所の独占。宝箱の中から出るヒントの中には、ある程度場所を絞れる物もあるからな。だからと言って一定時間以上居座るなら、それはマナー違反だろう》
「なら、そんな物用意しなければいいじゃない……と言いたいところだけど、それだと発見できないのね。分かったわ、任せなさい」
文字通り、何でも見透かせる彼女に些事ならともかく大きな隠し事はできない。
頼むなら相応の誠意を見せれば……こういうことでも、やってくれるのである。
0
お気に入りに追加
510
あなたにおすすめの小説
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
DPO~拳士は不遇職だけど武術の心得があれば問題ないよね?
破滅
ファンタジー
2180年1月14日DPOドリームポッシビリティーオンラインという完全没入型VRMMORPGが発売された。
そのゲームは五感を完全に再現し広大なフィールドと高度なグラフィック現実としか思えないほどリアルを追求したゲームであった。
無限に存在する職業やスキルそれはキャラクター1人1人が自分に合ったものを選んで始めることができる
そんな中、神崎翔は不遇職と言われる拳士を選んでDPOを始めた…
表紙のイラストを書いてくれたそらはさんと
イラストのurlになります
作品へのリンク(https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=43088028)
虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる