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偽善者とお祭り騒ぎ 二十六月目

偽善者と主催に向けて 後篇

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 始まりの街


 町から街へ、祈念者が落とす金や彼ら自身の利益が技術を発展させて進化した場所。
 大半の部分が生まれ変わっているのだが、初期から変わらない場所もある。

 そんな場所の一つ、隠された迷宮へと繋がるとある組織の根城。
 俺はそこを訪れて(菓子折り付きで)、お願いをしていた。


「すでに知っているとは思うが、念のため。祈念者として、お祭りを開く。ボスにも、ぜひ参加してもらいたいんです」

「…………」

「祈念者からすれば、これはただの祭り。だけど、自由民は違う。死が失われ、遠く離れた場所に居る者とも会うことができる……いろいろと条件はあるみたいですし」

「……そうか」


 目の前に居るのは、この街が……いや、町ができる前から迷宮を守護してきた者。
 自由民の中でも、最高峰の実力を有している『超越者』──ボスと呼ばれる少女だ。


「なぜ、わたしが必要となる?」

「いえ、必要というほどでは……ただ、ぜひとも招待したいと思ったので、今回は直接ご挨拶に伺いました」

「…………」

「ああいえ、からかっているわけではありませんよ。ただ、うちの眷属たちもいろいろと企画をしていまして……ぜひ、楽しんでもらいたいなぁと」


 ボスは俺が眷属に警護してもらっていた時からの知り合いなので、何人かの眷属をすでに見ている。

 眷属の中には、そんなボスと久しぶりに会いたいと言う者もいるので、ちょうどよかったというのもあるわけだ。


「……分かった。祭りには参加しよう」

「で、次の話ですけど。祭りには一日一体ずつ、ユニーク種を投入します。欲しかったらあげますので、見つけてください」

「…………毎度思うが、お前は規格外だな」

「ここはみんな同じ反応なんですよね。ネタバレをしますと、抽出した物を植え付けているだけですので、少々劣化してますよ」


 ユニーク種は運営神以前の神々が生みだしたシステムによって、誕生している。
 なのでそこに神の復活に関するヒントがあると思い、一時期実験していたのだ。

 まあ、それは全然見当違いだったのだが、副産物として生まれたモノが今回の件に繋がる──人造ユニーク種となる。


「ただ、コスパが悪いんですよね。膨大な魔力、仮初の命、そしてアレ……どれも普通に生きているだけじゃ用意できませんって」

「……知っていること自体は驚かないが、実行できたことには驚いている」

「ずーっと前、会ったばかりの頃に言いましたけど。俺っていちおう、神様ですから」

「……てっきり、子供に吐いたジョークだと思っていたよ」


 だいぶ前のことだったが、やはりボスは覚えていたようだな。
 人として、限界を超えたスペックの肉体だから、記憶力もバッチリだったわけか。

 ちなみに先ほど言った要素が三つ揃っていても、システムが認証しないとアウトだ。
 しかしまあ……{感情}産の能力は、何でもかんでもチートですって話である。


「劣化しているとはいえ、ユニーク種の特典の性能は変わらないのだろう? ならば、向かわせるだけの益がある」

「破壊修復可能な、個人専用アイテム。正直神器の方が、便利だと思うんですけどね」

「本来神器とは、神の威厳を示す物。特典よりも、数は少ないはずなのだがな」

「神器は権限の譲渡が面倒臭いですしね。その点、特典は本体を殺すだけで手に入りますから簡単ですか」


 俺の場合は生産神様が付いているのでそう思わないが、普通はそうはいかない。
 神器は先の便利機能にプラスして、神気の性質によって変質する機能もあるのだ。

 たとえばアマルの持つ煌雪神の神器であれば、神器が淡雪となって自在に操れる。
 神器の形状は与えられた物次第だが、そこに宿る能力はだいたい神の権能に沿うのだ。

 ……俺の場合はそれがまだ完全に定まっていないうえ、現人神のため他の神の加護も混ざっており何でもありになっている。

 なので作ってから、神器に宿す能力をある程度弄ることができるのだ。
 それが無くても初期から神器が創れていたのは……まあ、大神■■■のお陰だろうな。


「さて、それじゃあ俺はそろそろ行きます。まだまだ、招待状を配らないといけない相手が多いですから」

「『青』や『一家』などか?」

「それもそうなんですけど、他にもいろいろとありまして……さすがに別大陸まで足を伸ばす気はありませんけど、転がり落ちた先がもっと遠くにありましてね」

「迷宮の中か?」


 まあ、揉めること間違いなしだからずっと隠していたんだよ。
 けど、いつまでも隠し通せるわけじゃないし……そろそろ出しておきたい。


「ああいえ、そういう深い場所では無くてですね。もっとこう、遠く離れた異なる場所と言いますか……ああそうだ、祭りで代表者と会わせますので、お願いできますか?」

「それが狙いだったか……まあいい、約束の時刻だけ決めておいてくれ」

「分かりました、ではそのように」


 ボスはこの街の裏の顔なので、大抵のことはやってくれる。
 橙はともかく、赤はなぁ……これからも増えるし、どんどん場所を確保しなければ。


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