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偽善者とお祭り騒ぎ 二十六月目

偽善者と主催に向けて 中篇

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 第一世界 リーン


 祈念者相手ならともかく、国民ならば俺もコミュ力(?)を発揮することができる。
 リーン国の王城、その玉座に座った俺は語り掛けるように口を動かす。


「──今度のお祭り騒ぎ、残念ながらお前たちは参加できない。念には念を入れて、結界も用意してもらうんだが……相手は神、油断は決してできないからな」


 俺の創造した世界の内、第一世界は運営神に利用された魔小鬼デミゴブリンたちの世界。
 第三世界は運営神が実験に使った過去の世界……と、因果がありすぎるのだ。

 もし俺たちが把握できていないナニカを用いて、その存在が露見されては困る。
 非常に残念ながら、俺主催のイベント会場に連れ込むことはできない。


「──まあ、それはそれとして、お前たちにも祭りを開いてもらうけどな。金は俺が援助してやる、適当な名目で祭りをするぞ!」


 城の中にも伝わる歓声が、城外から聞こえてくる。
 いやまあ、なんとなく分かっていただろうに……俺はあくまで、国民ファーストだ。


「詳細はあとで発表される! 今の内に、有り金の半分は出しておくんだな!」


 ここで全部と言わないのは、言ったら本当に持って来て祭りに参加しそうだから。
 たった一度のお祭りで、国民を破産に追い込みたくはないのである。

 俺を撮影していた水晶玉から、起動中に発生する魔力の蠢きが消えた。
 つまりは撮影終了……ようやく一息吐けるということで、玉座の上でまったりする。

 俺を労うようにリョクが傍に侍っているので、少々話すことに。


「ふぅ……しかしまあ、何をしようか。残念なことに、祈念者用の祭りをそっくりそのままやらせるわけにはいかないんだよな」

「なぜでしょうか? 我が主の御力があるのならば、不死すらも可能であろうに」

「命のリスクもそうだが、そこは単純に死んでほしくないからだな。問題はそこじゃなくて、もっと深いところ……そう、イベントが合わないってところだ」

「なるほど……国民たちはすでに、いつでもコロシアムを使用可能でありますし、我が主によるお祭りはいつも行われています。今さら祈念者用の祭りを行っても、あまり満足できないということですね」


 日本のお祭りイベントに合わせて盛り上げており、今では誰しもが日本のメジャーな祭りの日が分かるようになっている。

 そうして遠慮……というか、制限なしで盛り上げたイベントを提供し続けたので、祈念者用に制限を設けた祭りでは楽しめないだろうということになった。


「とはいえ、説明が無いのもアレだしな──このまま繋げてくれ」

「ハッ、仰せの通りに!」


 先ほどまで、一方的に国民たちへ言葉を伝えるために使っていた水晶型の魔道具。
 しかし他にも機能を搭載しており、双方向の通信などもバッチリ完備している。


「要するに、持っていれば誰とでも会話ができる……シグルさん、お久しぶりです」

『メルス君、久しぶりだね。最近は、とても忙しそうだったから、こうして話す機会もなかったよね』

「お元気そうで。ジークさんは……聞かずとも、お元気そうですね」

『あはは……君のお陰で、僕もずいぶんと王として育てられたよ』


 第三世界、十年前のネイロ王国『ルーン』の二代目国王。
 それが──『シグル・ヴルム・サウンド』である彼に与えられた肩書だ。

 正式に先代のジークさんから王位を継承して、もうだいぶ経っている。
 貫禄は……まあ、あれだが、事務処理などはできるようになったらしいな。

 ちなみにイケメン、ただしそこまでモテない……うん、奥さんも居るし。
 草食系のような感じだが、やるときはやる人だと知っている。


『それにしても、メルス君。さっきの──』

『メルス様、お久しぶりです!』

「アルザスか……どうだ、調子は」


 シグルさんの言葉を断ち切ったのは、第四世界である迷宮都市における代表者の一人。
 自由民版のナックルというか……まあ、迷宮特化の職業持ちの男だ。


『はい! メルス様が用意してくださった、祈念者用の迷宮もとても素晴らしいです! 従来の迷宮でも想定しないような独創的な仕掛けが、幾重にも合わさり濃厚なハーモニーによって──』

「長い。それに、今はシグルさんと話していたんだが?」

『い、いや、別に気にしなくても──』

『そうでしたか! シグル様、大変申し訳ございませんでした! しかし、シグル様も彼の迷宮へ潜っていただければ分かるはず! メルス様の迷宮こそ、神が与えし崇高なる神域であると!』


 ちなみに職業名は【探索王】。
 世界を巡る【冒険者】という職業よりも、迷宮に特化した能力を保有する。

 俺が出会った頃はまだ就いていなかったのだが、俺の迷宮を攻略する間に条件を達成。
 見事【探索王】への転職を果たし、迷宮都市で成り上がることに成功したのだ。


「御託はいい。だが、お前の目から見ても祈念者に使う迷宮としては充分な出来だと判断できたんだな?」

『はい、そうです!』

「そうか……よくやった。直ちに他の代表を集め、会議を行え。議題は──国民たちを楽しませる迷宮についてだ。実際に高評価だったら、褒美があるとも伝えておけ」

『分かりました!』


 そう言って、さっさとアルザスとの連絡を終える。
 残る水晶の中継先に映るのは、少々寂しげなシグルさん。

 ……本当、この人って影が薄いんだよな。
 この後しっかりとフォローを行い、彼ともイベントの打ち合わせを行うのだった。


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