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偽善者とお祭り騒ぎ 二十六月目
偽善者と第二回イベントアイデア 後篇
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「──というわけで、俺も個人主催のイベントをやりたくなりました」
「……それで、内容を見てもらいたくてここにいらしたのですか?」
「それもあるんだが……レイ、たまには君やみんなに会いたくなることもあるんだ」
「まぁ……!」
GMたちが活動する、特殊な空間。
次元魔法を使うことでそこを訪れた俺を迎えてくれたのは、GMたちの長女レイだ。
忙しい彼女たちなので、予めアポを取っていたからなんだけど。
ともかくそんな彼女に事情を説明し、用意した企画を見てもらうことに。
まあ、祈念者の提案するイベントを、よりよくするために彼女たちも考えている。
ならばそんな彼女に見せることで、何か改善するところが無い知りに来たのだ。
……という理由は一割で、残り九割は彼女たちに会うためと言っても過言ではない。
レイの顔が紅潮するのと同時に、俺の顔も熱を帯びていく感じを覚えてしまう。
『コホンッ!』
「「っ……!」」
「二人でいい雰囲気を作らないでほしいんですけど……メルメルも、レイ姉ぇも」
「すみませんでした」
「うぅ……反省します」
なお、この場に居るのは俺たち二人だけではない。
彼女たちと表現したように、他の姉妹たちもいっしょにいる。
フーカが俺とレイを冗談半分に咎めるよう言っているが、周りの姉妹たちも大半は似たような目を向けている。
違うのは二人──とても微笑ましいもののように見てくる末っ娘と、とても苦々しい表情を浮かべて睨んでくる次女だ。
「どうしてあの男をここに……」
「チナおねえさま。おねえさまもおなまえをいただいたのですから、おみとめになられているではありませんか」
「くっ……まだ仮だ。ぼくはまだ、完全に認めてはいないからな!」
なんてやり取りを二人でしている。
達観している辺り、なんだかリウの方がお姉ちゃんって感じがするよな。
◆ □ ◆ □ ◆
とはいえ、話が始まれば全員が真面目に俺と眷属たちで考えたイベントの内容を吟味してくれた……気分は編集部に漫画を見せに訪れた新人のような感じだ。
彼女たちは幾度も経験を積んで、数多のイベントを成功に導いたプロフェッショナル。
祈念者の原案を考案者の意図にそぐう形で修正し、日々『運営』に認めさせていた。
アオイ、シンクらも他の姉妹たちと同様にいろんなアイデアを出してくれる。
全姉妹が一丸となって、俺と眷属のイベントをよりよくしてくれていた。
まあ、彼女たちも広義の意味では眷属という形なんだけど。
眷属結晶を介しての形ではあるが、とあるメリットのためになってくれている。
「最初はそれが理由だったんだっけ? 暇は恐ろしいモノだ」
世界が正しく機能するために、GMである彼女たちは日夜働いていた。
楽しむ時間など無く、地上の様子を見れるのは[GMコール]かイベントの時のみ。
だが俺の眷属になれば、それから解消されるそうだ。
俺の行ったことだけでなく、眷属のやったことなんかも見れるそうだし。
「俺も俺で、頑張らないとな」
少々ヒートアップした彼女たちは、考案者である俺を除け者に盛り上がっている。
よりよいイベントのため、お邪魔虫は撥ね退けられたわけだ。
そうなると、俺にできるのは尋ねられた時だけ必要なことを答えることのみ。
それ以外は必要とされていない……なればこそ、空いた時間にやっておくべきだろう。
「おにいさま、これは……なにをされているのでしょうか?」
「リウ、話してなくていいのか?」
「おねえさまがたは、おにいさまのイベントがさいこうのものになるようはげんでおられます。わたしがおらずとも、だいじょうぶですから。それよりもいまは、おにいさまのしていることがきになりました」
「そう言ってくれると、頑張ろうと張り切り始めた甲斐があるな。これはお菓子作りの準備で、錬金料理をするんだ」
一目見てお菓子を作ろうとしているように思えないのは、調理器具が無いからだな。
すべてを具現魔法で賄うことで、錬金料理はより成功度を上げられる。
語るよりも見せた方が速いので、さっそく調理を開始する──具現化させたボウルの中で生地を作ったり、その他のトッピングを用意したりと大忙しだ。
「おにいさまは……いつだって、とてもたのしそうですね」
「そりゃあな。自分を好きだと言ってくれる人が居て、そんな人たちが喜んでくれることがある。ならそれをやる俺も、楽しくてやるのは無意識レベルの話だ」
「こんかいのイベントは、ほんとうにひまつぶしのためなのでしょうか?」
「少なくとも、俺の意志はな。暇で、偶然にもアンが教えてくれた話に飛びついた。そこにあるのが善意だと当然のように受け入れ、暇が潰せると感謝してな」
眷属たちは俺を裏切らない……なんてことはないだろう。
武具っ娘たちはそうあれと望んだが、後天的な眷属にそんな洗脳級の意識は無い。
アンは俺が望み、そして大神■■■■により生みだされたサポーター。
普通なら疑うんだろうが……そういうの、無駄だしやる必要も感じない。
「リウ、はっきり言って俺はバカだ。何度も同じことを間違えるし、空気を読めない発言もする。だけど、家族と居るためにする努力ならなんだってするぞ。暇を覚えている時点で、話にもならないけどな」
「……いえ、とてもおもしろかったです。メルスおにいさまは、かっこたるいしでうごいておいでなのですね」
「今の俺が、どうあるか決めるのは運営神でも世界でもない……俺と眷属が決めること。他の誰になんと言われようと、俺はアイツらに好きと言ってもらえた俺であり続けるさ」
単純な話だ、俺は自分が薄っぺらい考えで生きていることを自覚している。
だからこそ、それこそ確固たる意思を持つ彼女たちを信じているのだ。
そんな彼女たちに信じてもらえる、現実の俺とは思えない『俺』を目指す。
牛歩の歩みになろうとも、誇ってそう言えるように日々万進するだけだ。
「──とまあ、そんなこんなでデラックススペシャルケーキの完成だ」
「……さきほどまでのはなしよりも、いつのまにかできあがっているケーキにおどろいています」
「何度も強請られているからな。自然と動きも早くなったんだよ。これは本当の料理じゃなくて、錬金料理だからだいぶ創意工夫があれば楽もできるんだ。リウ、みんなにケーキの配布をするぞ。手伝ってくれ」
「はい。かしこまりました、おにいさま」
俺たちはその後、甘い物で糖分(錯覚)を補給しながらアイデアを練っていった。
そして次の日、祈念者たちは壮大なイベントの開催を知るのだ。
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