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偽善者とお祭り騒ぎ 二十六月目
偽善者と第二回イベントアイデア 前篇
しおりを挟む夢現空間 会議室
「第二回、イベント開催についてー!」
「やんややんやー!!」
「……前とほとんど同じ。グラ、本当にありがとう。というか、一人ぐらい乗ってくれてもいい気が──ほべぇっ!」
『やんやー!』
だいぶ前に行った第一回とは異なり、そういえば絶対に乗る奴が居たな……。
ノリノリで俺へ突っ込み、血反吐を吐かせようとしたのは契約神霊であるナースだ。
「ナース……いつもいつも、俺は丈夫なわけじゃないんだ。知能も上がったんだから、そろそろ突っ込むの止めないか?」
『やー! ぜったい、やー!』
「……俺以外にやるなよ。いや、ツンデレとかヤンデレとかじゃなく、確実に死傷者が出そうな気がするから」
『わかったー!』
虚空の域まで無属性を極めているのだが、今度は突進や突撃などの捨て身攻撃系のスキルばかりを集めているナース。
こいつはいったい、どこへ向かっているのかと思うが……これが割とヤバい。
なんせ、虚空属性まで纏って突っ込んでくるのだから、中和できない奴は死ぬぞ。
「しかしまあ……第一回の会議の後もいろんなことがあったな。その結果、この会議室も広くせざるを得なくなったわけだし」
前回はたしか、抽選制にしたな。
しかし今回もそれをやると、かなり長期間やらなくてはならなくなるので、サクッと済ませるために参加希望者が全員来ている。
「前回よりも人数が増えた……そのことを俺はとても嬉しく思う。眷属が増えれば繋がりが増えて、繋がりが増えれば幸福が増える。少なくとも俺は、そう感じている」
誰も何も言ってこないが、なんだかほんわかとした空気が漂っていた。
まあ、それは子供たちの割合が多く……大半の奴らはニマニマといった感じだが。
「こ、コホンッ! とにかく、今回もまたイベントのアイデアを考えてもらう! せっかくなので、こちらもある程度纏まった意見を貰おう──はい、可能な限りチームになってくれ。できない奴は……まあ、いいけど」
「おい、なんでこっちを見やがった」
「ああ、ごめんごめんカナタ君や。君には恋人がいたから問題ないよね」
「ななっ、何が恋人だ! ……おい、なんだよコア、その顔は!」
毎度のことながら、弄りやすいカナタが悪いということで。
コアさんもいい反応が見れるということもあり、見逃してもらっている。
「俺はボッ……ソロの気持ちが分かるから、人数を強制するつもりはない。つもりはないけど、ある程度意見を纏めてほしい。これだけの数だから、前回も抽選したわけだし」
「はいはーい、しつもーん!」
「何ですかな、ユラル君」
「前と違って、メルスンがイベントの主催なら何をしてもいいの?」
前回は運営用のイベントだったし、ある程度規制が設けられていた。
全員が楽しめる必要があったし、上の納得がいくアイデアである必要もあったし。
「……まあ、そうだな。メインのイベント一つに、サブをたくさんって感じでもいいかもしれないな。スケジュールとかいろいろ混乱しそうだけど、そこは誰か手伝ってくれればいい……って、なんで顔を背ける」
「メルス様、皆様急がしいのです。今回の会議のために、わざわざ来てくださったのも、抜け出しているという形ですし」
「そりゃあそうだな……今回は迷宮の奴らと俺の分体にやってもらうことにしようか。代わりに、みんなには主催枠として自分の提案したイベントに参加してもらおうかな? その方が、楽しめるだろうし」
「おっ、じゃあバトル大会なんてのも用意していいのか? っしゃぁ、さすがメルス!」
まだ何も言っていないのだが……確認してみたところ、複数のイベントを同時に開催するのは別に問題なさそうだ。
負担するのは全部こっちなわけだし、投資がゼロでもできるならいいらしい。
金は腐るほどあるし、払う景品もたっぷりある……まったくもって、問題ないわけだ。
「バトル大会……もう、生命最強決定戦みたいなのはこりごりだな。チーム戦をすっかり忘れていたけど、あの頃よりも参加者も増えたしやるならまた別の機会だな」
『えー……』
「まあ、楽なアイデアだけどさ。普通に勝ち抜き戦とか、そういう感じにしよう。わざわざトーナメントを組むと面倒だし、最後に一定ポイント貯めたらバトルロイヤルをするぐらいで収めるとしよう」
開催しないのが一番楽だろうけど、そこはやらねば損しかしない。
なぜならこういうイベント、景品さえよければ優れたスキル持ちが集まるからだ。
餌として……そうだな、蘇生薬か貴重な武具でも配れば来そうだな。
来た奴らの戦闘技術やスキルを模倣し、それらを俺の糧としていこうじゃないか。
部門別にはしておかないとな。
眷属も参加するわけだし、彼女たちのやりたいようにする場所は、ある程度自由な無法地帯にしておかないとならないし。
「とまあ、一つさっそくアイデアが纏まったわけだが……もっとも優れたベストアイデアの考案者がいるチームには、今日の夕飯を決める権利をくれてやろう──さぁ、シンキングタイムスタート!」
目の色を変えて考え始めた眷属。
俺はすでに決まったバトル大会のことを考えながら、時間を潰すのだった。
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