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偽善者とお祭り騒ぎ 二十六月目

偽善者と個人主催イベント

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 夢現空間 自室


「さて、今さらだが……暇になった」

《……定期ですね》

「いや、まったくもってその通り。アン、俺は定期的に忙しさと暇の波に呑まれないといけない呪いでも受けているのか?」

《あながち間違いと思えないところが、メルス様の不思議なところです。『神々の注目』もございますし、点数稼ぎにイベントを引き起こされているのでは?》


 自室でまったりとしながら呟くと、いつも返ってくるアンの返答。
 俺の脳内で生みだされ、そのうえで外部へ出張しているだけだからな。

 イベントは自分で見つけるモノなのか、誘導されるモノなのか……謎である。
 どうせなら自分での方が嬉しいのだが、俺の心はいつでも凡人仕様モブハートなのだ。


「クラーレたちといっしょに情報収集はしているけど、なんだか世間の情報に疎くなっている気がするし」

《もともとそういったことに向いていないメルス様ですので、なおのこと悪化しただけだと思われます》

「……言ってくれるな、アン。じゃあ、何か面白いことがあるのか?」

《そうですね──プレイヤー開催イベントを開くのはいかがでしょうか?》


 MMOなんかでは定番の、個人主催のアレか……勝手にやるだけじゃないか。
 そう思っていたのだが、どうやらアンの話には続きがあるようだ。


《幾度かの[アップデート]を経て、個人開催のイベントにも色が付きました。具体的には……クラウドファンディングですね》

「急にずいぶんな単語が出てきたな……要するに、誰かが支援してくれると?」

《祈念者だけでなく、運営や自由民、果てには神までもが支援を行います》

「……クソ運営神はともかく、リオンの友神はたしかに頼りになりそうなんだよな。ちなみにその神、それ以外の神は?」


 どうやら運営神の従属神も、含まっているようだ……神はだいたい眠っているが、彼らのやり方に逆らわなかった奴らは生かされているんだよな。

 あっ、まったく覚えていない奴らが大半だと思うが、召喚士の祈念者イアに邪縛を掛けたのもその従属神の一柱だぞ。

 さらに聞けば、投資させる対象を絞ることができるようだ……GMはともかく、運営神関係の奴らは却下にしておこうかな。


「となると、またイベントを考えないと……前にもこんなことやったよな?」

《GMたちの要請により、公式イベントを考えた際のことですね。当時のアイデアを読み込みしておきますか?》

「そうしておいてくれ。また眷属を呼んで、会議をしようか……今は?」

《…………。忙しいですね、わたしも含め。実はせっかくのチャンスにそちらへ伺わないのも、すべては体をフルスペックで稼働させているからなのです》


 魔術の研究も着々と進み、研究班もいろんなことをやっているからな。
 戦闘班も魔術のテストを手伝っているし、子供たちは普通に学校へ行っている。

 つまり、暇なのは俺だけ……リンカですら学校に行き始めたというのに、俺はどうしてここまで燻ってしまったのか。


「うん、【怠惰】のせいにしよう」

なすり付けはいけませんよ?》

「……ちゃ、ちゃうねん」

《不自然な関西弁を用いても、そこは変わりませんからね》


 ……ごもっともで。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 とはいえ、予めやっておかなければいけないことも多い。
 イベントの内容を決める前に、必要なことは済ませておくべきだろう。

 祈念者としての権能を剥奪された俺だが、神器である『挑む者プレイヤーの指輪』によって、今なお同じことができる。


「まずは[メニュー]から[イベント]を起動して、個人開催を設定っと」


 何々……有料なのかよ。
 まあ、嫌がらせのように大量のイベントを載せないようにするためにも、そういうやり方も必要なのか。

 そもそも一定の期間に一度しか開催できないようだし、無理なんだろうけども。
 ちなみに額は新人のことも考えてか、だいぶお安めになっています。


「先に“実力偽装”と“存在証明”でステータスを書き換えっと。そのままメルスで申請しても、ロクなことにならならそうだし」


 こういう部分も暴かない、心の広いAFOとしての設定に感謝しておこう。
 名前などの情報を偽装したうえで、ようやくイベント開催の詳細を設定する。


「とは言っても、内容はまだだけど……まずは優先して投資対象。自由民から金は取りたくないけど、そうしないと参加させてあげられないみたいだし。なら、最大投資額を減らしておけばいいか」


 神は別として、自由民と祈念者はお金を払わないとイベントに参加できないようだ。
 無料にはできないが、最低1ヤーンでも払えばいいみたいなので……そう設定しておく。


「エリアの設定か……イベントエリアにもいろいろあるんだな。うん、使い回しができる場所限定みたいだけど」


 もしここで、過去の王都があったら迷うことなく運営神に叛逆していたな。
 うちの国民を利用するような奴らを、生かしておくわけにはいかないのだ。

 そんなことを思いながらも、どんどん入力できる範囲で設定しておく。
 俺のスキルがあれば、最低限の環境さえ整えればあとからだいたい改変可能である。


「うんうん、だいだいこれでいいな。あとは内容を決めるだけだな……これがこれで、一番大変そうだけど」


 眷属を集めて、会議を開かねば。
 ……さて、どんなアイデアが出るのやら。


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