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偽善者と公害対策 二十五月目
偽善者と自己紹介 その45
しおりを挟む夢現空間 居間
「…………」
「あ、あのー」
「…………(プイッ)」
「あのー…………」
顔を背けられてしまい、俺は戸惑う。
何かしたという覚えが無いのもあるが、最初はこんな感じじゃなかったんだ。
途中までニコニコしていたのだが、俺が最近の出来事を話していくと、だんだん顔色が悪くなっていき……今に至る。
「なぁ、俺って何かしたかな?」
『何かした、ではなく何もしていない、ではないか?』
「……そうなのか?」
「…………そうですよ」
念話で尋ねた彼女の言うことが正しかったのか、俺の問いにコクリと頷く。
……そういえば、会うときは挨拶をしていたが、自分から会いに行くことは無かった。
「すまなかった。いろんなことがあった……というのは言い訳にしかならないか。それでも、俺から言えるのはこれだけだ。誤魔化そうとは思わないし、事情が知りたいならそれも全部言うつもりだ」
「……いえ、私の方も少し熱くなりました。ノゾム様にも、事情はございます」
『ふむぅ……しかしなんじゃ、妾たちを差し置いて別の女子たちと『いちゃこら』とは』
「……まあ、否定はしない。俺が望み、眷属が望んだことは可能な限り叶えたいからな」
この後当然、自分たちもと念話から伝わる声が言ってきたのは語るまでもない。
そして、それを咎めるように少女が叫んだこともである。
「それじゃあ、張り切って始めるとしましょうか! 第四十五回、クエスチョンタイムとなりました! 本日のゲストはこのお方──美しき月の姫──かぐや様です!」
「よろしくお願いします」
『うむ、くるしゅうないぞ』
「なお、今回はあくまでも『かぐや』様への質問を行います。なので、『輝夜』様のご回答はまた別の機会となります」
『なんじゃと!?』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「問01:あなたの名前は?」
「かぐやです。苗字はありません」
「まあ、大陸によっては無い人も多いから気にしなくていいぞ」
「問02:性別、出身地、生年月日は?」
「女性、井島、──年の七月七日生まれ、十七歳です(諸事情により隠蔽されました)」
「問03:自分の身体特徴を描写してください」
「えっと、長い黒髪と黒い瞳、あとは……少し注目される顔立ち、でしょうか?」
『妾の美貌をそのまま継いでいるのじゃ、当然であろう!』
「はいはい、外野はお静かに」
『うぐぐぐぐっ、おの──ッ!』
「問04:あなたの職業は?」
「【五宝月姫】というそうです。皆さまが持ち帰ってくださった五つの宝具、それらすべてを自在に操れます」
「問05:自分の性格をできるだけ客観的に描写してください」
「少し、内気なように思えます。『輝夜』様のことを見ていると、特に」
「問06:あなたの趣味、特技は?」
「趣味はそうですね……星を見ることです」
「問07:座右の銘は?」
「『敵は己の中にある』です」
『妾に恨みでもあるのか?』
「そ、そうではなく! 弱い自分を脱却するためには、活を入れねばということです」
「問08:自分の長所・短所は? 今回はそうですね、特別に『輝夜』様に関するご質問に代わりにお答えいただきます」
「『輝夜』様のですか? ……そうですね、長所はとてもサッパリとしている点、短所はえっと…………その、大切な時に相談をしてくれないことです」
「問09:好き・嫌いなもの/ことは?」
「好きなものも嫌いなものも、月です」
「その理由は?」
「…………その、いろいろな思い出がありますので」
「問10:ストレスの解消法は?」
「ストレスは感じたことが無いのですが、おそらくそうなる前に『輝夜』様とお話ししているからだと思います」
「問11:尊敬している人は?」
「『輝夜』様、それに眷属の皆さまのことを尊敬しております」
「問12:何かこだわりがあるもの/ことがあるならどうぞ」
「あまりこだわるものはありません。今では理由も定かですが……何かに固執しては後悔する、そう感じていましたので」
「なら、今度からは何か探してみよう。俺も手伝うからな」
「問13:この世で一番大切なものは?」
「家族との絆、ですね。皆さまだけでなく、お祖父様やお祖母様も」
「問14:あなたの信念は?」
「信念……お祖父様とお祖母様への孝行を忘れない、でしょうか?」
「それは俺もいいと思うな。今度、また挨拶に行かせてもらうよ」
「あ、挨拶ですか!? わ、分かりました、お待ちしております」
「問15:癖があったら教えてください。これもまた、『輝夜』様の癖をお願いします」
「『輝夜』様は……よく、宝具の中に入れた財を見ておられます。理由はよく分からないのですが」
「……ちなみに、その理由は?」
『うむ、特にない!』
「問16:ボケですか? ツッコミですか?」
「ボケもツッコミもしませんが、どちらかといえばツッコミです。『輝夜』様の言動に、ツッコミと言えるようなことをしているかもしれませんので」
「問17:一番嬉しかったことは?」
「私のことをすべて打ち明けてもなお、お祖父さまとお祖母様は私を受け入れてくれました。それはとても、心が温かくなりました」
「問18:一番困ったことは?」
「……いろんな話をしたい、そんな相手が全然来てくれなかったことです」
「…………えっと、後でお伺いします」
「はい、ぜひに!」
「問19:お酒、飲めますか? また、もし好きなお酒の銘柄があればそれもどうぞ」
「飲めますが……そういったときは、強引に『輝夜』様が出てきますので。特に好きな銘柄などはございません」
「問20:自分を動物に例えると?」
「パンダ、という動物でしょうか? 見世物にされ、いろいろとありましたので」
『う、うむ、急に辛辣じゃな』
「──なんて、冗談です♪」
「『……本当に?』」
「問21:あだ名、もしくは『陰で自分はこう呼ばれてるらしい』というのがあればどうぞ」
「なよ竹のかぐや姫と呼ばれていましたね」
「あっ、そこは古事通りなんだな」
「問22:自分の中で反省しなければならない行動があればどうぞ」
「……『輝夜』様に、すべてをお任せしてしまうことが多かったことです。自分でやらなければ後悔することもある、そのことを通じて学んだことです」
「問23:あなたの野望、もしくは夢について一言」
「いつか月へ向かい、『輝夜』様への謝罪をしてもらいます!」
『『かぐや』……』
「問24:自分の人生、どう思いますか?」
「たしかに、本来私は『輝夜』様が生き直すための器だったかもしれません。しかし、ノゾム様に救われた以上、私も生きて『輝夜』様と共に在りたいです!」
「問25:戻ってやり直したい過去があればどうぞ」
「いえ、ありません」
「問26:あと一週間で世界が無くなるとしたらどうしますか?」
「できるだけ抗います。それでもダメなら、家族と共に居たいです」
「問27:何か悩み事はありますか?」
「先ほど解決しましたよ」
「……本当に、すみませんでした」
「問28:死にたいと思ったことはありますか?」
「いえ、ございません」
「問29:生まれ変わるなら何に(どんな人に)なりたい?」
「『輝夜』様のお友達、でしょうか? 異なる体で、いろんなことをしたいです」
「問30:理想の死に方があればどうぞ」
「先ほどの世界が無くなる話のように、家族と共に居られればそれで充分です」
「問31:何でもいいし誰にでもいいので、何か言いたいことがあればどうぞ」
「お祖父様、お祖母様。私を育ててくれて、ありがとうございます!」
「問32:最後に何か一言」
「こ、今度、ノゾム様を連れて参ります! そのときは……お祝いをしましょう!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「はい、カット! ところで、お祝いって何に対するお祝いなんだ?」
「! そ、それはですね……」
『ふふん、決まっておろう。それは無論、この『かぐや』のむ……い、痛い! 己の体なのだから、大切にしろと何度言えば分かるのだ『かぐや』よ!』
そう思うのなら、そうしなければならないような言動を止めればいいのに。
顔を真っ赤にした彼女の意図を理解してしまい、自分も赤くなるのを自覚した。
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