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偽善者と公害対策 二十五月目

偽善者と旅での修行 その12

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「行きます──“蘇生リザレクト”!」


 洞窟の中、独りで魔法を唱えます。
 何度も“完全蘇生パーフェクトリザレクション”の練習をしていたお陰か、自分でもこれは成功するという感覚を掴めました。

 メルに確認し、霊体そのものがこの場に残留していることは確認済みです。
 そして、受肉用の体も……隠れていたその魔物は、置かれた死骸に入り込みました。


「さぁ、終わりです──『呪病鼠王《プレイグラットキング》』!」

『……Chu』

「何をしようとしても無駄ですよ。何重にも魔法で壁を作りましたし、蘇生したばかりであなたは弱体化しているのですから」


 それも、ただのネズミです。
 少々申し訳ない気持ちになりましたが、後でお墓を作ることにして、今はやらなければならないことに専念しました。


「メル、そっちはどうなりましたか?」

《とりあえず、蔓延は収まったよ。合わない体で蘇生したから、切り替えも今は・・できないみたいだし……このままなら・・・・・・、ますたーの望み通りの結果になるね》

「良かったです……あれ、今は?」


 当初の“完全蘇生”を使う計画は中断し、改めて作戦を練り直したのです。
 その結果、わたし独りでも倒せるように弱体化を重ねることにしました。

 蘇生体の変更や、戦闘フィールドを自分に有利なモノにするなどいろいろとやってみましたが……まだ問題があるのでしょうか?


《霊体は呪いを貯め込んでいた。たとえ肉体に引っ張られて弱体化しても、溜め込んでいたそれは減らない。逆に制御できない体に無理やり詰め込まれて、抑えられなくなったエネルギーはどうなると思う?》

「爆発……する?」

《というわけで──すぐに逃げて!》

「っ……!」


 メルに言われるがまま、全速力で洞窟の外へ走り抜けます。
 すぐに魔法が強引に破壊される感覚が、何度も確認できました。

 そして同時に、禍々しい教会で何度も感じた力の高まりに気づきます。
 アンデッドの放つ瘴気にも似た、しかし明確な敵意を覚えました。

 洞窟の外にどうにか出たら、今度は呪いが漏れ出ないようにしなければなりません。
 ポーションを口に含み、魔力を回復させたら魔法を発動させます。


「──“聖壁ホーリーウォール”!」


 聖なる力が洞窟の入り口を遮り、中から溢れ出る淀みを押さえました。
 しかし、すぐに罅が生まれ始めるので、何度も何度も掛け直します。

 そうしていると、少しずつ罅が生じる速度が下がっていきますので、新しい魔法を発動させました。


「──“聖浄パケーション”!」


 効果は浄化、対象は“聖壁”。
 より高性能な浄化能力が壁に付与されて、強引に突破しようとしてくる呪いの量が少しずつ減っていきました。


「……もう、使えませんか」


 魔法を解除したそのとき、呪いが出てくることはありません。
 しかしたしかに、まだ先ほど感じた禍々しい力が内部に籠っています。

 もう一度ポーションを飲んで、再度洞窟を囲うように壁を作りました。
 ただし、今度は自分が入れるように設定したうえで。


「──“聖光ホーリーライト”」


 武器としてメル謹製の伸びる棒を持ち、その先端に光を燈します。
 光にも破邪の力があるのですが……洞窟の中で、その機能がなぜか働きません。


《呪いの量が濃いね。けど、そろそろ奇麗になると思うよ》

「どうしてですか?」

《えっと、それはもちろん──》


 一気に薄れていく周囲の呪いの力。
 しかし、それで呪いが無くなったのかと聞かれると違和感を覚えます。

 まるで、漏洩していたモノを再び取り込んでいるような……。
 メルはそんな違和感を、ロクでもない事実へと変えてしまいました。


《パワーアップイベントって定番だよね? ふっふっふ、今まで集めていた力を今こそ一つに……って、なんだか正義側っぽい気もするけど──はい、防御》

「ッ──“光衣装甲ライトベール”、“光盾ライトシールド”!」


 危険感知スキルが告げる、物凄い勢いで突撃してくるナニカの反応。
 わたしを包む光の装甲、そして眼前に作った光の壁の魔法で対処します。

 ですが、先ほどまでとは違い、抵抗する間もなく砕かれてしまいました。
 幸い、たった一枚だけ“光衣装甲”、そして後ろの“聖壁”は残りましたが。


「きゃっ!」

《ますたー、可愛いよ!》

「ほ、放っといてください! それより、アレはいったい!?」

《さっきも言ったけど、パワーアップしたんだよ。肉体の崩壊を気にしないなら、呪いを爆発させるだけで強くなるからね。ますたーは、これから命を捨てる覚悟で戦うことになるよ……》


 目の前には、所々血のような黒いモノを噴き出すナニカが居ました。
 ネズミなのですが、黒いモノが歪に体の一部を伸ばしたり増やしたりしています。


《ますたー、アレは肉体を留まるために使っているだけの亡霊って感じだよ。だけど、今のますたーじゃ浄化はできない……頼れる力は限られている。さて、どうするのかな?》


 鑑定スキルは弾かれますし、先ほどの一撃だけで実力の差を感じました。
 ですが、メルの言う通りならば聖職者の職業を持つわたしに僅かな勝ち目があります。

 ……ただし、そこには代償が。
 今のわたしが求めるのは、どんな力か──それが確かめられています。


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