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偽善者と公害対策 二十五月目

偽善者と旅での修行 その11

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「クラーレ~、どうしたの~?」
「どうかしたのか?」

「少し、外に出ます」


 教会の外でポーションを作っていたプーチとディオンは、わたしの言に首を傾げます。
 ……普段のわたしなら、間違いなくずっと治療行為をしているはずですしね。


「……私たちは~必要~?」

「いいえ、プーチはポーションを。時間稼ぎはしていますし、これから根本を断つつもりですが……悪化を抑えられるだけで、今の患者さんを救うためにはポーションが必要になります。ディオンも護衛をお願いします」

「……そうか。ならば、ここの警備は任せておけ!」

「はい、行ってきます!」


 身体強化を魔力と精気力で行い、勢いよく駆けだします。
 目的地は町の外、シガンたちが残る個体を倒しに向かった──『グースン高山』。


「メル、聞こえていますか?」

《はいはーい、いつも頼れるますたーのメルでーす。ご用件はなんですかー?》

「メルは全部、知っていたんですか?」

《……知らないよ。だけど、今の私は生と死の聖職者だからね。後から知る方法は、いくらでもあったよ》


 たしか……今のメルの縛りは、あの服に見合った行動を取るというもの。
 初めは光系統と回復系統の魔法のみを使うのかと思えば、死霊系統も使えそうです。

 わたしが【万能克復】で知った情報を、すでにメルは知っています。
 それはこれまでの言動から、分かっていることです。


《ますたーはこれから、どうするの?》

「原因を断ちます。このままだと、また同じことが起きるんですよね?」

《魔物はまた生まれるからね。同じ個体じゃなくても、同じ能力を持った個体はいつか出てくるよ》


 すでに、『呪病鼠王プレイグラットキング』は死にました。
 そのお陰で彼らの呪いを受けた人以外に、同じ呪いが感染することはありません。

 ですが、そのせいで同じ患者の中で延々と状態異常が発生しています。
 ……そう、『呪病鼠王』は自身の生死で配下の呪いを変える能力を持っていました!


「そのための“完全蘇生パーフェクトリザレクション”ですね?」

《…………》

「死んだ状態で呪いが健在なのは、まだアンデッドとして残っているから。そのまま浄化しても、効果はそのまま……つまり、一度蘇生して効果を変えたうえで、封印をするべきと……違いますか?」


 わたしの推測に、メルは沈黙します。
 ふふんっ、我ながら素晴らしい洞察力。
 メルもわたしの推理の完璧さに、唖然としているように思えます。


《ますたー、いろいろ訊いていいかな?》

「どう暴いたか、聞きたいのですね」

《あー……うん、そうだよ。細かく聞くとますたーが可哀そうだから、単刀直入に訊くことにするよ──それって、完全な蘇生をする必要ないよね?》

「……あれ?」


 そ、そう考えると、その通りですね。
 むしろ、他の蘇生魔法ならば弱った状態で復活させることも可能ですし。


《事情だってね、最初から把握していたわけじゃないよ。この町に来て、教会で時間を潰している間に知っただけなんだから。あくまで“完全蘇生”は、ますたーの理解度を深めるための教材なんだよ》

「じゃ、じゃあ、わたしの推理は……」

《…………うん、後で美味しいジュースを用意するから──》

「うぅぅぅ……ひ、独りにしてください!」


 完璧だと思っていたモノには、無数の穴が開いていました。
 なぜでしょう、メルの慰めがよりいっそうわたしを惨めにします。


  ◆   □   ◆   □   ◆


「つ、着きました……」


 シガンたちが事前に情報を集めてくれた、『呪病鼠王』の討伐された場所。
 小さな洞穴の中で、祈念者の強力なスキルによって倒されたそうです。

 ……でも、討伐時にそこに浄化を行える者は死に戻りをしていました。
 その結果、解体スキル持ちの方が剥ぎ取り後に焼却処分をしたそうです。


《もし、解体スキルを誰も持っていなかったら、今回の事件はここまでひどくならなかったかもね。祈念者の自動解体機能は、全部を還元したうえでアイテム化するからね》

「どういうことですか?」

《解体スキルの仕組みは、自動還元アイテムドロップを停止させて自分で選べるようになるところなんだ。ますたーに分かりやすく説明すると……手に入る素材の量と経験値を調整できるんだ》

「そ、それは凄い……メルはいつも、何でも知っていますね」


 そんな情報、攻略サイトにも載っていないことです。
 情報屋なら売っているかもしれませんが、とても高くなっていそうですね。


《何でもは知らないよ、憶えているだけ。もし解体スキルが無かったら、親玉の魂は還元されていたんだよ。能力は機能できないから終わっていたわけ》

「……ですが、それでは──」

《うん。すでに起きていた分はどうしようも無かったし、ますたーの考えた方法で解決することもできなかったよね。ところで、このまま独りで行くの?》

「はい。シガンにも[メッセージ]で連絡をしましたし、少し試したいこともあります」


 ……シガンからの返事はありませんが、承諾してくれたことにします。


「今のわたしは……勝てますか?」

《霊体の状態なら、簡単だね。ある程度弱らせたうえで、そのまま劣化版の蘇生を使えばますたーだけでも倒せると思うよ……それで解決するなら、だけどね》

「……はい、分かっています」


 上手くいかなければ、それだけ患者の方々が苦しむ時間が増えてしまいます。
 なんとしても、成功したいです……そのためにできることは、やっておかなければ。


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