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偽善者と公害対策 二十五月目
偽善者と旅での修行 その02
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連続更新となります(06/12)
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フォーリス平野
本来、このエリアはレベルが100もあれば、それこそ鼻歌交じりに容易く通れる道。
自由民でもそれは成人になる過程で至るレベルなので、自由民も時折通る。
かつては何人たりとも侵入を拒んでいた迷いの森も、今では罪を犯していないのであれば、割と簡単に通れるようになった。
祈念者たちは自由民の依頼で街道を築き、都市と街を結んでいる。
最近だと、祈念者がよく通るということもあり、このエリアに町が作られたんだとか。
「うぅ……難しいです」
「ほらほら、ちゃんとやってね。ますたー、まだ全然成功していないんだから」
レベルが高いため、魔物もその力を恐れて近づいてこないので旅はかなり安全だ。
そのためクラーレは、俺の出した課題に集中して励んでいた。
「ますたーの持つ【慈愛】は、分け隔てない愛を捧げる能力。ますたーの優しさに呼応して、誰かを癒すためのモノなんだよ。あらゆる回復行為に補正が入るし、部位欠損を治すことも蘇生だってできる」
「……まだそういった能力は、何も載っていませんが?」
「みんな言ってたんだけど、私の使える能力が全部使えるわけじゃないんだよ。そこは個人の適性として、一度リセットされた状態で表示される……共有するなら話は別だけど」
だが残念ながら、協力的ではない意思を持つスキルを共有することはできない。
善い想いである<美徳>シリーズも、さすがに共有はさせてくれないのが現状である。
「ますたーにはこの旅の間で、適性を高めてもらうよ。親和性を上げて、一つぐらい能力の発現ができるようになることが目標。できたらご褒美、できなかったら罰があるから頑張ってね」
「ば、罰とはいったい……」
「ふふーん、なんとお菓子のクオリティが下がります! みんなは特製ケーキだけど、ますたーだけは生クリームとイチゴだけになっちゃうんだよ!」
「そ、そんな……!」
嗚呼、なんて残酷なことを告げてしまったのだろうか俺は……。
クラーレの絶望する表情が、俺の罪悪感を加速的に高める。
しかし、【慈愛】と向き合うためにこれは必要なことなのだ。
ティンスやオブリと異なり、クラーレは眷属になる際に武具っ娘と出会っていない。
まあ、【慈愛】の武具っ娘であるガ―がすでに目覚めていたのが理由かもしれないが。
それでどうというわけでもないが、お陰で彼女は【慈愛】を使いこなせていない。
「ますたー以外の<美徳>使いは、もう能力由来の専用武具を使えるようになってるし。それは時間を掛けてじっくりと慣らしたからだけど……ますたーには超特急で使えるようになってもらうよ」
「もう、なんでですかー!?」
「持っているだけでも、適性は上がるから。これも全部、ますたーのことを想ってのことだからね」
スキルを渡された眷属は聖・魔武具の創造はできないが、武具っ娘が代わりに自分の分体……つまり、本当の意味での眷属武具を創造した場合それを使うことができる。
ティンスとオブリが持つスキルに対応する武具っ娘であるニーとチーも、そんなこんなで創造済みだ……しかし、【慈愛】の武具っ娘であるガーはまだしていない。
理由はすでに聞いており、至ってシンプルに──彼女に創りたいと思っていないから。
ガーに認めてもらうためにも、今回の修業は必須事項なのだ。
「とりあえずますたーがやることは、二つの内どちらか。一つは、武具っ娘であるガーと接触する。直接会うことはできないから、意識を失ったうえで繋がってもらう必要があるけど……」
「ふ、二つ目はなんでしょうか!」
「二つ目はますたーの魔法に磨きを掛けて、能力を発現させる。いろいろとやっていれば条件を満たして、使えるようになる……なんてこともあるからね。まあ、完全な蘇生スキルか魔法ぐらいは使えないとダメだけど」
「あの、完全な蘇生魔法ってまだ使える人が居ないはずなんですけど……」
存在自体は確認されている。
ただし、消費する魔力が尋常ではないため使い手が居ないだけの話。
今のクラーレはレベルもだいぶ高いし、装備補正でかなり消費効率も良くなっている。
おまけに【慈愛】を手に入れたことで、使えさえすれば性能を向上できるだろう。
「私は煌魔法、冥魔法、生死魔法、聖魔法、死霊魔法で蘇生ができるよ。ますたーにはその中でも、これぐらいは使えるようになってもらいたいんだ──“完全蘇生”」
シスター服の効果もあって、制限された状態でも魔法は発動できた。
神々しい光がクラーレを包み込み……何事もなく、光は消え失せる。
「今ので感覚が掴める……なんてことは無いからね。できるならこれを息をするようにスキルとして使ってほしいけど、今はちゃんとした詠唱をしてでもいいから魔法として使えるようになろうね」
「全然できる気がしません……が、できるようになれば、固有スキルも使いやすくなるんですね?」
「ヒントにはつながると思うよ。ますたーがスキルを使って代償を支払うのは、スキルに回復の過程を委ねてしまっているから。認識外のことを、自動化させているから。そこを自分でやれば、きっと負担は軽くなる」
要するに、なぜ蘇生できるのかを彼女自身が理解する必要があるわけだ。
場数を踏めば、きっとそれも自分なりの解釈ができるはずだ……たぶんだが。
「とりあえず、ますたーにはあそこでも修行してもらうよ──宿場町『アンシス』で!」
平野の果てに見えてきた本日のお宿。
祈念者もそれなりに居るし……実験台を欠かすことはないな。
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フォーリス平野
本来、このエリアはレベルが100もあれば、それこそ鼻歌交じりに容易く通れる道。
自由民でもそれは成人になる過程で至るレベルなので、自由民も時折通る。
かつては何人たりとも侵入を拒んでいた迷いの森も、今では罪を犯していないのであれば、割と簡単に通れるようになった。
祈念者たちは自由民の依頼で街道を築き、都市と街を結んでいる。
最近だと、祈念者がよく通るということもあり、このエリアに町が作られたんだとか。
「うぅ……難しいです」
「ほらほら、ちゃんとやってね。ますたー、まだ全然成功していないんだから」
レベルが高いため、魔物もその力を恐れて近づいてこないので旅はかなり安全だ。
そのためクラーレは、俺の出した課題に集中して励んでいた。
「ますたーの持つ【慈愛】は、分け隔てない愛を捧げる能力。ますたーの優しさに呼応して、誰かを癒すためのモノなんだよ。あらゆる回復行為に補正が入るし、部位欠損を治すことも蘇生だってできる」
「……まだそういった能力は、何も載っていませんが?」
「みんな言ってたんだけど、私の使える能力が全部使えるわけじゃないんだよ。そこは個人の適性として、一度リセットされた状態で表示される……共有するなら話は別だけど」
だが残念ながら、協力的ではない意思を持つスキルを共有することはできない。
善い想いである<美徳>シリーズも、さすがに共有はさせてくれないのが現状である。
「ますたーにはこの旅の間で、適性を高めてもらうよ。親和性を上げて、一つぐらい能力の発現ができるようになることが目標。できたらご褒美、できなかったら罰があるから頑張ってね」
「ば、罰とはいったい……」
「ふふーん、なんとお菓子のクオリティが下がります! みんなは特製ケーキだけど、ますたーだけは生クリームとイチゴだけになっちゃうんだよ!」
「そ、そんな……!」
嗚呼、なんて残酷なことを告げてしまったのだろうか俺は……。
クラーレの絶望する表情が、俺の罪悪感を加速的に高める。
しかし、【慈愛】と向き合うためにこれは必要なことなのだ。
ティンスやオブリと異なり、クラーレは眷属になる際に武具っ娘と出会っていない。
まあ、【慈愛】の武具っ娘であるガ―がすでに目覚めていたのが理由かもしれないが。
それでどうというわけでもないが、お陰で彼女は【慈愛】を使いこなせていない。
「ますたー以外の<美徳>使いは、もう能力由来の専用武具を使えるようになってるし。それは時間を掛けてじっくりと慣らしたからだけど……ますたーには超特急で使えるようになってもらうよ」
「もう、なんでですかー!?」
「持っているだけでも、適性は上がるから。これも全部、ますたーのことを想ってのことだからね」
スキルを渡された眷属は聖・魔武具の創造はできないが、武具っ娘が代わりに自分の分体……つまり、本当の意味での眷属武具を創造した場合それを使うことができる。
ティンスとオブリが持つスキルに対応する武具っ娘であるニーとチーも、そんなこんなで創造済みだ……しかし、【慈愛】の武具っ娘であるガーはまだしていない。
理由はすでに聞いており、至ってシンプルに──彼女に創りたいと思っていないから。
ガーに認めてもらうためにも、今回の修業は必須事項なのだ。
「とりあえずますたーがやることは、二つの内どちらか。一つは、武具っ娘であるガーと接触する。直接会うことはできないから、意識を失ったうえで繋がってもらう必要があるけど……」
「ふ、二つ目はなんでしょうか!」
「二つ目はますたーの魔法に磨きを掛けて、能力を発現させる。いろいろとやっていれば条件を満たして、使えるようになる……なんてこともあるからね。まあ、完全な蘇生スキルか魔法ぐらいは使えないとダメだけど」
「あの、完全な蘇生魔法ってまだ使える人が居ないはずなんですけど……」
存在自体は確認されている。
ただし、消費する魔力が尋常ではないため使い手が居ないだけの話。
今のクラーレはレベルもだいぶ高いし、装備補正でかなり消費効率も良くなっている。
おまけに【慈愛】を手に入れたことで、使えさえすれば性能を向上できるだろう。
「私は煌魔法、冥魔法、生死魔法、聖魔法、死霊魔法で蘇生ができるよ。ますたーにはその中でも、これぐらいは使えるようになってもらいたいんだ──“完全蘇生”」
シスター服の効果もあって、制限された状態でも魔法は発動できた。
神々しい光がクラーレを包み込み……何事もなく、光は消え失せる。
「今ので感覚が掴める……なんてことは無いからね。できるならこれを息をするようにスキルとして使ってほしいけど、今はちゃんとした詠唱をしてでもいいから魔法として使えるようになろうね」
「全然できる気がしません……が、できるようになれば、固有スキルも使いやすくなるんですね?」
「ヒントにはつながると思うよ。ますたーがスキルを使って代償を支払うのは、スキルに回復の過程を委ねてしまっているから。認識外のことを、自動化させているから。そこを自分でやれば、きっと負担は軽くなる」
要するに、なぜ蘇生できるのかを彼女自身が理解する必要があるわけだ。
場数を踏めば、きっとそれも自分なりの解釈ができるはずだ……たぶんだが。
「とりあえず、ますたーにはあそこでも修行してもらうよ──宿場町『アンシス』で!」
平野の果てに見えてきた本日のお宿。
祈念者もそれなりに居るし……実験台を欠かすことはないな。
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