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偽善者と公害対策 二十五月目
偽善者と東の北奥 その18
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連続更新となります(04/12)
===============================
今回、俺の目的はネロに聖人としての格を上げさせること。
何もしないで帰るのでは、信仰心が貰えなくなるので……お別れもしっかりと行う。
「まず、ネロ様に感謝を……貴女様の御業が無ければ、我らは事を成し得ることはできませんでした」
「うむ、理解しておけ。吾とて無謀な輩を何度も救うほど、そう暇ではない。だが、貴様らは違うだろう?」
「はい! 我ら、必ずやネロ様のお眼鏡に適うだけの力を──」
「違う! 吾が貴様らに求めるモノは力に非ず! 貴様らが、その身に宿す光を絶やすことなく輝くことだ!」
なんて会話が繰り広げられている。
お礼を言いたい義勇軍だが、ネロはただただ魂魄のことだけを語っていた。
……ズレが生じているが、それに気づいているのは俺だけ。
ネロにはいちおう聖女っぽいことを言えと言ったので、表現は変えているようだが。
「死を賭して力を磨こうと、その覚悟は己を無為とする。生きるからこそ、そこに輝きが生まれる。死を賭けるのではない、縋れるモノならば何でも縋れ、生きていることに価値があるのだから!」
要するに、死んでアンデッドになっても魂魄は変わらないから生きておけ。
これで感動する奴っているのか……と思えば、そんな奇特な奴らが目の前に居た。
「ネロ様……」「なんて深い言葉だ」「俺、ネロ様に宗教変えしようっと」「俺も俺も」「主よ……」「ネロ様万歳! ネロ様に栄光あれ!」
『──栄光あれ!』
なんだかよく分からない流れなのだが、洗脳でもしていたのだろうか?
自分の世界で見たことのあるような光景を目にして、そんなことを思う。
だが実際、ネロの聖人としての格は着実に上がっている。
神眼でその現象を確認した俺は、成すべきことを成す。
「皆さん、落ち着いてください。ネロ様が望むのは、本当に貴方がたが成そうとしていることですか? よく考えてください……ネロ様は、なんと仰っていましたか?」
『…………』
「崇めよ、称えよなどと仰っていません。宗教とは個の死を意味し、それこそネロ様の意に反しています。ネロ様の意思は、皆さんが皆さんとして強くなること……決して、他者に未来を委ねる敗者ではありません」
このタイミングで試しておきたかった。
俺の世界の人々に、同じような説得ができるのか……宗教狂いになりかけた者たちを、留めることができるのか。
「だが……ならば、どうすれば……」
「深く考えることではありませんよ。宗教ではなく、ただ慕うのであればネロ様もお許しになるでしょう。今一度、何のために力を求めたのか……思い出してください」
「……吾が従者の申した通り。吾が見たいのは傀儡ではなく、己の意志で輝く光。努々忘れるな、吾に縋るのではなく追いつこうと励むが良い」
『はい!』
最後は信仰対象の助力が必要になるが、ある程度抑制はできた。
それが分かっただけでも結果は上々、うちの宗教団体でもやってみよう。
◆ □ ◆ □ ◆
前回の井島での旅とは異なり、今回はしっかり組合に報告しに帰ってくる。
お偉い様からのお褒めの言葉が入った依頼書を出し、組合のカードを出すだけでいい。
「こ、これは……! ネロさんは最上級の評価とされていますし、ノゾムさんは討伐数が凄まじいですね」
「ふっ、見誤ったであろう? 吾の従者は相応の力を持ち合わせているのだ」
「……申し訳ありません」
まあ、受付嬢は薬草でしか判断していないので当然なんだが。
採取のどこから、戦闘能力を判断すればいいというのだ。
組合のカードもギルドカードも、組織で情報を集めてある魔物の討伐数が把握できる。
今回はその機能を使って、俺が無双したことを暴いたようだ。
……ちなみに、偽装することはできないが隠蔽することは可能だ。
スキルを使って細工し、[コウジュコウ]はただの強い個体としておいた。
ユニーク種はその存在を報告しなければならないし、倒したら賞金が出る場合もある。
俺にお金は必要ないし、義勇軍も強い個体としか認識してないからギリギリセーフだ。
「では、今回の依頼達成で階級を上昇させていただきます。おめでとうございます!」
「ふむ……どれくらいだ?」
「ネロさん、そしてノゾムさんは初段から三段へ昇格しました! これは快挙です、当組合からそのような方が現れるとは……!」
詳しい話を聞くと、階級は初段から八段まで存在するらしい。
そこから『錬士』、『教士』、『範士』という称号もプラスされる。
分かりやすく言うと、称号持ちはAランクやSランクの冒険者ぐらいの扱いらしい。
特に三つ目の奴はSランクでも化け物級の強さを誇り……祈念者も太刀打ちできない。
俺の推測……というか暇潰しにシミュレートした結果、視たのがその差だ。
井島はなんだか戦闘力の高い自由民が多くいので、祈念者も軽く伸せそうなんだよな。
「もう少し上げられそうだがな……」
「ネロ様、地位とは責任と結びつくものですので。我らはこの地に安寧を生むため旅をする身、長いができない以上むやみやたらに責任を背負い込むことができないのです。彼女はそれを理解して、三段で抑えたのです」
「そうであったか……すまぬな」
「いえ、こちらも仕事ですので、もし階級を上げるような機会がありましたら、ぜひこちらの組合をご利用ください……そちらの方がいろいろと助かりますので」
後日確認したのだが、自分たちの組合から上位の段持ちが現れると特別報酬が支払われるんだとか……ボーナスのため、人材の確保も頑張っているらしい。
「うむ、機会があればな」
「お世話になりました、またの機会があればぜひとも」
「ええ、お待ちしております」
それぞれが打算を持ち合わせ、そんな別れの言葉を告げる。
……しばらく旅はお休みするので、彼女の願いが叶うのはいつになるのやら。
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今回、俺の目的はネロに聖人としての格を上げさせること。
何もしないで帰るのでは、信仰心が貰えなくなるので……お別れもしっかりと行う。
「まず、ネロ様に感謝を……貴女様の御業が無ければ、我らは事を成し得ることはできませんでした」
「うむ、理解しておけ。吾とて無謀な輩を何度も救うほど、そう暇ではない。だが、貴様らは違うだろう?」
「はい! 我ら、必ずやネロ様のお眼鏡に適うだけの力を──」
「違う! 吾が貴様らに求めるモノは力に非ず! 貴様らが、その身に宿す光を絶やすことなく輝くことだ!」
なんて会話が繰り広げられている。
お礼を言いたい義勇軍だが、ネロはただただ魂魄のことだけを語っていた。
……ズレが生じているが、それに気づいているのは俺だけ。
ネロにはいちおう聖女っぽいことを言えと言ったので、表現は変えているようだが。
「死を賭して力を磨こうと、その覚悟は己を無為とする。生きるからこそ、そこに輝きが生まれる。死を賭けるのではない、縋れるモノならば何でも縋れ、生きていることに価値があるのだから!」
要するに、死んでアンデッドになっても魂魄は変わらないから生きておけ。
これで感動する奴っているのか……と思えば、そんな奇特な奴らが目の前に居た。
「ネロ様……」「なんて深い言葉だ」「俺、ネロ様に宗教変えしようっと」「俺も俺も」「主よ……」「ネロ様万歳! ネロ様に栄光あれ!」
『──栄光あれ!』
なんだかよく分からない流れなのだが、洗脳でもしていたのだろうか?
自分の世界で見たことのあるような光景を目にして、そんなことを思う。
だが実際、ネロの聖人としての格は着実に上がっている。
神眼でその現象を確認した俺は、成すべきことを成す。
「皆さん、落ち着いてください。ネロ様が望むのは、本当に貴方がたが成そうとしていることですか? よく考えてください……ネロ様は、なんと仰っていましたか?」
『…………』
「崇めよ、称えよなどと仰っていません。宗教とは個の死を意味し、それこそネロ様の意に反しています。ネロ様の意思は、皆さんが皆さんとして強くなること……決して、他者に未来を委ねる敗者ではありません」
このタイミングで試しておきたかった。
俺の世界の人々に、同じような説得ができるのか……宗教狂いになりかけた者たちを、留めることができるのか。
「だが……ならば、どうすれば……」
「深く考えることではありませんよ。宗教ではなく、ただ慕うのであればネロ様もお許しになるでしょう。今一度、何のために力を求めたのか……思い出してください」
「……吾が従者の申した通り。吾が見たいのは傀儡ではなく、己の意志で輝く光。努々忘れるな、吾に縋るのではなく追いつこうと励むが良い」
『はい!』
最後は信仰対象の助力が必要になるが、ある程度抑制はできた。
それが分かっただけでも結果は上々、うちの宗教団体でもやってみよう。
◆ □ ◆ □ ◆
前回の井島での旅とは異なり、今回はしっかり組合に報告しに帰ってくる。
お偉い様からのお褒めの言葉が入った依頼書を出し、組合のカードを出すだけでいい。
「こ、これは……! ネロさんは最上級の評価とされていますし、ノゾムさんは討伐数が凄まじいですね」
「ふっ、見誤ったであろう? 吾の従者は相応の力を持ち合わせているのだ」
「……申し訳ありません」
まあ、受付嬢は薬草でしか判断していないので当然なんだが。
採取のどこから、戦闘能力を判断すればいいというのだ。
組合のカードもギルドカードも、組織で情報を集めてある魔物の討伐数が把握できる。
今回はその機能を使って、俺が無双したことを暴いたようだ。
……ちなみに、偽装することはできないが隠蔽することは可能だ。
スキルを使って細工し、[コウジュコウ]はただの強い個体としておいた。
ユニーク種はその存在を報告しなければならないし、倒したら賞金が出る場合もある。
俺にお金は必要ないし、義勇軍も強い個体としか認識してないからギリギリセーフだ。
「では、今回の依頼達成で階級を上昇させていただきます。おめでとうございます!」
「ふむ……どれくらいだ?」
「ネロさん、そしてノゾムさんは初段から三段へ昇格しました! これは快挙です、当組合からそのような方が現れるとは……!」
詳しい話を聞くと、階級は初段から八段まで存在するらしい。
そこから『錬士』、『教士』、『範士』という称号もプラスされる。
分かりやすく言うと、称号持ちはAランクやSランクの冒険者ぐらいの扱いらしい。
特に三つ目の奴はSランクでも化け物級の強さを誇り……祈念者も太刀打ちできない。
俺の推測……というか暇潰しにシミュレートした結果、視たのがその差だ。
井島はなんだか戦闘力の高い自由民が多くいので、祈念者も軽く伸せそうなんだよな。
「もう少し上げられそうだがな……」
「ネロ様、地位とは責任と結びつくものですので。我らはこの地に安寧を生むため旅をする身、長いができない以上むやみやたらに責任を背負い込むことができないのです。彼女はそれを理解して、三段で抑えたのです」
「そうであったか……すまぬな」
「いえ、こちらも仕事ですので、もし階級を上げるような機会がありましたら、ぜひこちらの組合をご利用ください……そちらの方がいろいろと助かりますので」
後日確認したのだが、自分たちの組合から上位の段持ちが現れると特別報酬が支払われるんだとか……ボーナスのため、人材の確保も頑張っているらしい。
「うむ、機会があればな」
「お世話になりました、またの機会があればぜひとも」
「ええ、お待ちしております」
それぞれが打算を持ち合わせ、そんな別れの言葉を告げる。
……しばらく旅はお休みするので、彼女の願いが叶うのはいつになるのやら。
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