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偽善者と公害対策 二十五月目

偽善者と東の北奥 その10

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 報酬金を用意するということで、俺とネロは待機させられている。
 ……まあ、ネロの持ってきた『聖草ホーリーリーフ』の希少度で揉めているんだろうけど。


「しかし、なんと言っていたか……うろ覚えであるな」

「俺は従者としてしっかりと聞いておいたけど、たしか病を運ぶ害虫だったな。しかも無尽蔵に出てくるらしく、その処理に問題が生じているらしい」

「ふむ、虫か……アンデッドにしてもあまり旨味のない奴らではないか」

「魂魄的にはな。けど、聖女的には出番のあることだ。なんせ疫病だしな、魔力的なものか疾病的なものかは分からないが、医術も勉強したんだから治せるだろう?」


 ネロは人体実験を行う過程で、ある程度医学を齧っている。
 そして、祈念者が持ち込んだ現代医術にネロは大変興味を持った……持ってしまった。

 死体を改造するにも、検分するにも知識が必要ということで俺が(ナックルに頼んで)現実から持ってきたんだよな。


「できぬとは言わぬが、完治できるとも約束できぬぞ。人体に関する学は得たが、病などの知識はあくまでも副次的なもの。正体の分からぬ虫の疫病まで、対応はしておらぬ」

「まあ、それもそうか……俺も魔法を解禁すれば解決できるだろうけど、それは避けたいからな。水で癒す……できそうだが、今回はネロに任せたいな」


 かつて眷属が創った毒魔法、それが進化して薬魔法となっているからな。
 サンプルの採取に成功さえすれば、どんな症状でも治せる薬が創れるのだ。

 俺は縛り中なので使えないが、ネロはこれも習得している。
 毒や薬を何に使うのか……うん、まあ察しが付くだろう。


「それもこれも、実物を見てからだな。依頼は貼られているし、緊急だ。あとでこれを受けて、依頼の場所に行こう」

「むぅ……ずっとこのままなのか?」


 ネロは聖女モードに入っており、当然アンデッドを使わせるつもりはまったくない。
 聖骸ならばと諦めないが……いずれにせよアンデッドなので、却下しておいた。


「いろいろと考えられるんじゃないか? 聖職者の身になっていろいろと試してみれば、必要なことが分かるかもしれないぞ」

「むむむっ、たしかにそれもそうだな……考えてみれば、吾が従者も縛りと称して女共を拾ってきているわけだからな」

「傍から聞かれるとアウトだから。名前だけ隠しても、不味いから止めてくれないか?」

「……装備は改めればよいか。仕方ない、今回は乗っておこうではないか」


 ただの白いローブでは、そこまで満足できないみたいだ。
 クラーレやセイラ用の試作品があるので、聖女っぽい格好もできないわけではないが。


「装備、変えるのか? いやまあ、セット装備の効果で聖属性の効果は高まるし、回復量は上がって消費効率も良くなったりするけどさぁ……それでも着るのか?」

「聞いているだけで、ずいぶんと効果があると自慢しているように思えたな」

「いやいや、あの修道服があまりに凄かったから対抗意識がな……なぜか個人の専用装備化されていたから、他の人には回せない代物になっていたけどさ」


 他者の着れないユニーク装備。
 それを使わず無駄にしないために、参考資料として使っていくつかの修道服を編んでみた結果作られたのが先に挙げた服だ。

 説明した能力以上の性能を誇る修道服。
 神様関係のクエストの報酬だったので、さすがと素直に感嘆できてしまう性能でもおかしくはないだろう。


「そこまでのモノなのか? 従者の作ったモノはとても良いと感じていたのだが……」

「ドロップ系のアイテムとか、人の手が加えられていないアイテムはランダム性がある代わりに能力が強力だからな……その頂点が武具っ娘たちだ。俺が自負している通り、誰にも超えさせる気はない」

「親バカ……いや、主バカだな、従者は。だがたしかに、超えることは難しいか。普段からその例外や最高位の加護持ちが創る武具を見ているからこそ、判断を見誤ったということなのだろう」

「そういうことだな。生産なら、ある程度装備に付くスキルの効果なんかを調整することができる。俺も加護のお陰で望んだ効果を付けやすいが、それでもドロップアイテムで付けられるモノよりは数が少ないんだぞ?」


 装備固有の能力などは、レアな魔物の素材や装備そのものが無ければ付けられない。
 どれだけ腕のいい職人が居ても、材料が無ければ作れないのと同じ理由だ。

 ちなみに神鉄鉱は石系の素材で最上位、それでも付かないことの方が多い。
 ……ギーやリーが聖・魔の武具っ娘たちと同格なのは、創り方が異常だったからだな。

 ただの素材の品質を上げても、普通に付くことがあるスキルの位が上がる方が多い。
 分かりやすいたとえだと、(○○強化・微)が(○○強化・小)になったりする感じだ。


「──ネロさん、お待たせしました!」


 さて、そんな風に話をしていると、受付嬢が報酬金を持って戻ってくる。
 だいぶ手間取っていた理由などを聞き、その手続きなどを済ませた。


「受付嬢よ、例の緊急依頼には今からでも参加することができるのか?」

「あっ……はい! もしかして、受けていただけるのですか?」

「うむ。見ての通りの者だが、それなりに癒しの術を使うことができる。微力ながら、手伝いができるだろう」

「ええ、もちろんです。安全な環境は整えておりますので、どうかそのお力を存分にお振るいください……ただし、ネロさんの位はまだ最下級。回復はお任せできても、戦闘への参加は認められませんのでご注意を」


 だがまあ、受付嬢の話には裏技がある。
 襲い掛かってきたのだから、仕方ない……そんな正当防衛ならセーフなのだ。


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