1,633 / 2,518
偽善者と公害対策 二十五月目
偽善者と東の北奥 その10
しおりを挟む報酬金を用意するということで、俺とネロは待機させられている。
……まあ、ネロの持ってきた『聖草』の希少度で揉めているんだろうけど。
「しかし、なんと言っていたか……うろ覚えであるな」
「俺は従者としてしっかりと聞いておいたけど、たしか病を運ぶ害虫だったな。しかも無尽蔵に出てくるらしく、その処理に問題が生じているらしい」
「ふむ、虫か……アンデッドにしてもあまり旨味のない奴らではないか」
「魂魄的にはな。けど、聖女的には出番のあることだ。なんせ疫病だしな、魔力的なものか疾病的なものかは分からないが、医術も勉強したんだから治せるだろう?」
ネロは人体実験を行う過程で、ある程度医学を齧っている。
そして、祈念者が持ち込んだ現代医術にネロは大変興味を持った……持ってしまった。
死体を改造するにも、検分するにも知識が必要ということで俺が(ナックルに頼んで)現実から持ってきたんだよな。
「できぬとは言わぬが、完治できるとも約束できぬぞ。人体に関する学は得たが、病などの知識はあくまでも副次的なもの。正体の分からぬ虫の疫病まで、対応はしておらぬ」
「まあ、それもそうか……俺も魔法を解禁すれば解決できるだろうけど、それは避けたいからな。水で癒す……できそうだが、今回はネロに任せたいな」
かつて眷属が創った毒魔法、それが進化して薬魔法となっているからな。
サンプルの採取に成功さえすれば、どんな症状でも治せる薬が創れるのだ。
俺は縛り中なので使えないが、ネロはこれも習得している。
毒や薬を何に使うのか……うん、まあ察しが付くだろう。
「それもこれも、実物を見てからだな。依頼は貼られているし、緊急だ。あとでこれを受けて、依頼の場所に行こう」
「むぅ……ずっとこのままなのか?」
ネロは聖女モードに入っており、当然アンデッドを使わせるつもりはまったくない。
聖骸ならばと諦めないが……いずれにせよアンデッドなので、却下しておいた。
「いろいろと考えられるんじゃないか? 聖職者の身になっていろいろと試してみれば、必要なことが分かるかもしれないぞ」
「むむむっ、たしかにそれもそうだな……考えてみれば、吾が従者も縛りと称して女共を拾ってきているわけだからな」
「傍から聞かれるとアウトだから。名前だけ隠しても、不味いから止めてくれないか?」
「……装備は改めればよいか。仕方ない、今回は乗っておこうではないか」
ただの白いローブでは、そこまで満足できないみたいだ。
クラーレやセイラ用の試作品があるので、聖女っぽい格好もできないわけではないが。
「装備、変えるのか? いやまあ、セット装備の効果で聖属性の効果は高まるし、回復量は上がって消費効率も良くなったりするけどさぁ……それでも着るのか?」
「聞いているだけで、ずいぶんと効果があると自慢しているように思えたな」
「いやいや、あの修道服があまりに凄かったから対抗意識がな……なぜか個人の専用装備化されていたから、他の人には回せない代物になっていたけどさ」
他者の着れない装備。
それを使わず無駄にしないために、参考資料として使っていくつかの修道服を編んでみた結果作られたのが先に挙げた服だ。
説明した能力以上の性能を誇る修道服。
神様関係のクエストの報酬だったので、さすがと素直に感嘆できてしまう性能でもおかしくはないだろう。
「そこまでのモノなのか? 従者の作ったモノはとても良いと感じていたのだが……」
「ドロップ系のアイテムとか、人の手が加えられていないアイテムはランダム性がある代わりに能力が強力だからな……その頂点が武具っ娘たちだ。俺が自負している通り、誰にも超えさせる気はない」
「親バカ……いや、主バカだな、従者は。だがたしかに、超えることは難しいか。普段からその例外や最高位の加護持ちが創る武具を見ているからこそ、判断を見誤ったということなのだろう」
「そういうことだな。生産なら、ある程度装備に付くスキルの効果なんかを調整することができる。俺も加護のお陰で望んだ効果を付けやすいが、それでもドロップアイテムで付けられるモノよりは数が少ないんだぞ?」
装備固有の能力などは、レアな魔物の素材や装備そのものが無ければ付けられない。
どれだけ腕のいい職人が居ても、材料が無ければ作れないのと同じ理由だ。
ちなみに神鉄鉱は石系の素材で最上位、それでも付かないことの方が多い。
……ギーやリーが聖・魔の武具っ娘たちと同格なのは、創り方が異常だったからだな。
ただの素材の品質を上げても、普通に付くことがあるスキルの位が上がる方が多い。
分かりやすいたとえだと、(○○強化・微)が(○○強化・小)になったりする感じだ。
「──ネロさん、お待たせしました!」
さて、そんな風に話をしていると、受付嬢が報酬金を持って戻ってくる。
だいぶ手間取っていた理由などを聞き、その手続きなどを済ませた。
「受付嬢よ、例の緊急依頼には今からでも参加することができるのか?」
「あっ……はい! もしかして、受けていただけるのですか?」
「うむ。見ての通りの者だが、それなりに癒しの術を使うことができる。微力ながら、手伝いができるだろう」
「ええ、もちろんです。安全な環境は整えておりますので、どうかそのお力を存分にお振るいください……ただし、ネロさんの位はまだ最下級。回復はお任せできても、戦闘への参加は認められませんのでご注意を」
だがまあ、受付嬢の話には裏技がある。
襲い掛かってきたのだから、仕方ない……そんな正当防衛ならセーフなのだ。
0
お気に入りに追加
510
あなたにおすすめの小説
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
DPO~拳士は不遇職だけど武術の心得があれば問題ないよね?
破滅
ファンタジー
2180年1月14日DPOドリームポッシビリティーオンラインという完全没入型VRMMORPGが発売された。
そのゲームは五感を完全に再現し広大なフィールドと高度なグラフィック現実としか思えないほどリアルを追求したゲームであった。
無限に存在する職業やスキルそれはキャラクター1人1人が自分に合ったものを選んで始めることができる
そんな中、神崎翔は不遇職と言われる拳士を選んでDPOを始めた…
表紙のイラストを書いてくれたそらはさんと
イラストのurlになります
作品へのリンク(https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=43088028)
虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる