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偽善者と貯蓄期間 二十四月目

偽善者と戦力集め その06

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 支店長に案内され、俺はZ商会の中へ入っていく。
 奇麗に並べられたアイテムの数々、そしてそれらの品質はとてもよい。

 生産神の加護を持っていた影響で、ある程度審美眼も磨かれている。
 ここの商店、赤色の世界のルーカスさん並みに品を厳選しているのかもしれない。


「本日はどういった物をお求めで?」

「えっと、魔本と面白い魔物を探していて。あっ、ここって売っていない物の情報だけを買うこともできませんか?」

「できますよ。どうしても用意できない品などは、そうして情報のみを売買していますので。魔本と魔物ですが、いくつか取り揃えております。見てみますか?」

「はい、お願いします!」


 空間属性のスキルか魔法の影響だろう。
 外から見た店は二階建ての建物だったのだが、内部はかなり広く感じる。

 帝城も似たような感じだったので、技術的に導入されているのだろうか?
 というか、支店長が向かう先にある扉も魔道具になっている。


「まずは……魔物からですね。こちらの扉の先には、Z商会が集めた魔物たちが生息しています。人に慣れている個体が多く、スキルが無くとも従魔にしやすくなっています」

「生息……ですか?」

「ええ。方法は企業秘密ですが、我々の商会はあらゆる物事を商いに反映させます。その貪欲さでここまで来ましたので……ああ、魔物ですが、決して意に反するような方法で飼育しているわけではありませんからね」

「いえ、そちらはあまり……ただ、それが可能なほど広い場所があるんだなって……」


 思い浮かぶのは、俺も夢現空間に作り上げた従魔用の部屋だ。
 しかしあれは、眷属たちの助力が無ければ決して生みだせなかった場所。

 それを一商会が作り出した。
 どういった技術なのか、ぜひとも学んで俺も創ってみたくなってきたよ。


「では、こちらへ。少し空間の歪みで酔う方が居ますので、何かありましたらすぐにお申し付けください」

「はい……大丈夫です。ですが、これは凄いですね……別の世界があるみたいです」


 今は雑魚だが、いちおう空間転移の経験は豊富である。
 扉を潜った際に感じる違和感もあまり気にならず、すぐに目に映る光景を楽しむ。

 広がるのはどこまでも続く草原。
 そこには多様な魔物たちが生息しており、俺たちを見るとこちらへ近づいてくる。

 本当に敵意を感じない。
 生まれた頃から慣らしていたのか、そうでなくとも少しずつ人への敵意というモノを削いでいったのだろう。


「ここは初心者向けの場所ですね。ここで魔物と触れ合い、就職条件を満たす……という目的でここを訪れる方もいますよ」


 従魔師系の職業や、魔物を乗りこなす系の職業ならそういう条件もあるかもしれない。
 しかし、今の俺にはそれをやっても意味など……いや、諦めるのは早いか。


「──そうだ。ついでに訊きたいんですが、呪いで職業に就けなくなった人に、職業を与えることってできますか?」

「それは……難しそうですね。過去に職業を変更できない呪いを受けた方が居て、そのご相談を受けたのですが……結局、商会の力を総動員しても、根本的な解決法を見つけ出すことはできませんでした」

「その方は、どうなりましたか?」

「ご職業はそのままでしたが、我々にも意地がありますので。全力でサポートをさせていただき、今ではSランク冒険者として大成なされましたよ。もちろん、当人の努力があってこその結果です」


 有名人なのだろう。
 たとえ金で買ったSランクでも、人々に知られているのだし。

 俺も偽装カードでランクを上げて、いずれSランクに辿り着くかもしれない。
 ……というか、冒険者をやっていれば効率よくレベルも上げられるのか。


「では、そろそろ魔物を見てもらいましょうか。お客様、ご希望の種族などは?」

「特にありません……ただ、最初に言った通り面白い魔物がいいです」

「面白い、ですか……ご確認しておきたいのですが、そこに人懐っこいなどの条件は必要でしょうか?」

「いえ、本当に何でも。どのような魔物であろうと、それが誰かのためになるのであればぜひとも。ですが、楽しみは最後にしておいてください。ひとまず、一通り見せていただけないでしょうか?」


 考える時間も必要だろう。
 自分がどれだけ無茶な要求をしているのかぐらい、察しているつもりだ。

 それでも、俺は【傲慢わがまま】で【強欲ほしがり】な、ごくごくありふれた一般人。
 人とは違うナニカを求め、今回は従魔にもその唯一性を要求していた。

 ここが何でも揃えられる商会だというのであれば、ぜひとも用意してもらいたい。


「……分かりました。では、まずはお客様のご要望通りご案内から行いましょう。そのうえで、当商会でも秘蔵の魔物をご紹介することにしましょう」

「あ、ありがとうございます!」

「いえいえ、ここまで興味を引く要求をしてくるお客様も久しいですので。支店長としての権限が揮える限り、お客様のご要望に沿った魔物を用意してみせましょう」


 そうして、俺はZ商会が集めた魔物たちを見ることになった。
 もしかしたら、普通に育てている場所にも面白い奴がいるかもしれない。

 目を凝らし、しっかりと調べてみないと。
 ……その方が、スキルが獲得できるかもしれないしな。


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