1,579 / 2,518
偽善者と貯蓄期間 二十四月目
偽善者と戦力集め その05
しおりを挟むヴァナキシュ帝国
自分が指名手配されている国に来る……というのも結構アレである。
しかし、この国は金さえあれば大抵のモノが手に入る場所でもあった。
「古本屋、ここにもあればいいけど……その前に、狙われるだろうなぁ」
現在進行形で、掏摸の被害にあっているからこそそう思える。
守ろうとする行動、そして魔力で収納系の魔道具を包んで対策はしていた。
これを繰り返すことで、保護スキルを手に入れることができる。
なお、必要な物は魔術で仕舞っており、デバイスぐらいしか価値のある物はない。
だからこそ真剣に守っている。
お陰様で俺にしては珍しく、順調に保護スキルを獲得することができた。
「他にもいいスキルが無いかな? たしか、防犯スキルとかがあった気もするけど……全部の犯罪行為が対象のせいで、習得難易度も高めなんだよね」
PKの攻撃なら威力を軽減させる、とかそういう効果も付くらしいし。
ニィナならまだしも、俺だとすぐには習得できなさそうなので諦める。
「うーん、そもそも死なないから問題ないかな? 奴隷にされるのは危ないけど、とっくに組織ごと壊滅させておいたし」
前に『一家』と奴隷を解放したとき、ついでと言わんばかりにやっておいた。
祈念者の未来を守るのも、俺なりの偽善として……なっ?
それでも、不安の種がまだまだあるのがこの帝国という場所。
最悪、また金を払って吸血鬼狩りに守ってもらえばいいんだが……。
「ニィナが居なくても頑張れるように。そう考えて独りで来たのに、戦力を増やす方法がお金じゃダメだよね。あっ、そういえばアレがあったっけ?」
一時的に空間魔法を解放し、“空間収納”からとあるアイテムを取り出す。
それはかつて、レイド(ラリー)イベントで最後に獲得できた──『試役の腕輪』。
効果はその名の通り、『付随枠』を無視して魔物を使役することができる。
……ちなみに『付随枠』とは、パーティーメンバーとは別に魔物を使役できる枠だ。
魔物使い──従魔師系の職業は、その大半が枠を拡張する能力を持っている。
それを補える魔道具、それこそが報酬として出たこの腕輪なのだ。
「まあ、それでも使役するための能力かスキルが無いと、全然使役できないんだけどね。そしてこの街は……ちょうど、裏で魔物を販売している場所がある」
奴隷は解放したが、魔物の販売は基本的に合法となっていた。
……なので奴隷解放をした際も、魔物などは解放していなかったりする。
金で戦力を買う、別に罪悪感が湧くわけでもないので実行しよう。
俺の目的は魔本探し、そしていちおう有名になること……それっぽいのを探さないと。
◆ □ ◆ □ ◆
まずは貴族たちが行くような表側──白栄街の方から探ってみた。
かなり広い国なので、探せばいくつか店を見つけられる。
本は国にとって都合のいいものばかり、魔本も生活魔法程度のものしかなかった。
……今の俺にはそれでも貴重なので、高い金を払ってそれでも購入したわけだが。
魔物の方は……全然ダメ。
俺というヤツは『色物』を好み、何かしらの面白みに欠ける魔物を従魔にはしたくないなぁと思っている。
仮にではあるが、一番最初に使役したのが『魔小鬼王《デミゴブリンキング》』のリョクだったからだろう。
最初で優秀過ぎる奴だったからこそ、後続にも期待してしまう……的な。
「──というわけで、結局黒没街のお世話になることが決まりました。なお、姿は魔術で隠しています」
魔本には隠蔽系のモノが無かったので、こちらとスキルで隠れている。
区画によっては容赦なく身包みを剥いでくるので、用心が必要なのだ。
「ちなみに白栄街は国の一割、それ以外は全部黒没街なのでかなり広いです。『一家』が見回りをしている場所は安全なんですが……それ以外は、あまりよろしくありません」
光あるところに影があり、影にも陰が生まれている……要するに、ブラックにも濃淡の差があるというわけだ。
俺が目指しているのは、『一家』の目が届かない場所にある施設。
彼らから話は聞いていたので、どういう店なのかは先んじて覚えている。
「あった。『Z商会 帝国支店』……なんでこんな名前なんだろう?」
理由はともかく、黒没街の中にひっそりと建つ小さなお店。
この場所こそ、俺が探していた何でも売っていそうな店である。
「というわけでさっそく……って、その前に魔術を──」
「おや、お客さんが。いらっしゃいませ」
「! ……い、いろいろと欲しいモノがあって。見せてもらっても、いいよね?」
「ええ、もちろんです。当店は、何者も拒まず受け入れておりますよ」
俺はまだ、魔術を解除していない。
だというのに、店員と思われるコイツは俺の存在に気付いた。
……性別、どっちなんだろう?
祭りに並んでいそうな不思議なお面を付けているのだが、それの影響か性別に違和感を覚えてしまう。
「あなたは……初めての方ですね。では、ご説明を──『Z商店』では、あらゆる商品を取り揃えております。また、存在しないものであっても、お客様の要望に応え、可能な限り用意させていただく所存です」
「あの、あなたはいったい……」
「申し遅れました。私、当店の支店長を任されております『Z』と申します。気安くゼット、とお呼びください」
「ゼット、さん。よろしくお願いします」
不思議な支店長に挨拶をし、俺は店の中に入るのだった。
うん、ここなら面白いものがたくさん見つかりそうだな。
0
お気に入りに追加
510
あなたにおすすめの小説
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
DPO~拳士は不遇職だけど武術の心得があれば問題ないよね?
破滅
ファンタジー
2180年1月14日DPOドリームポッシビリティーオンラインという完全没入型VRMMORPGが発売された。
そのゲームは五感を完全に再現し広大なフィールドと高度なグラフィック現実としか思えないほどリアルを追求したゲームであった。
無限に存在する職業やスキルそれはキャラクター1人1人が自分に合ったものを選んで始めることができる
そんな中、神崎翔は不遇職と言われる拳士を選んでDPOを始めた…
表紙のイラストを書いてくれたそらはさんと
イラストのurlになります
作品へのリンク(https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=43088028)
虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる