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偽善者と貯蓄期間 二十四月目
偽善者と戦力集め その04
しおりを挟む大量の本と多額の硬貨が交換される。
俺の世界では金をあまり使わなくなったものの、未だにこっちの世界から少しずつ金銭が持ち込まれていた。
経済的な問題から、それらはできるだけ消費しておくことが好ましい。
基本的に、こちらへ来る国民が消費するのだが……一部は俺のお小遣いとなっている。
「今日はよく売れたね。あんたも、よくぞこれだけ稼いでいるもんだよ」
「僕にもいろいろな事情がありますので。しかし、本当によろしいのですか?」
「買っていった奴がそれを今さら聞くのも新鮮だね。困るような物は全部あっち、それは全部安全な物さ」
魔本だけでなく、かなり古書なども今回は購入しておいた。
リュシルが古い本は大量に持っているが、あくまで魔人族が集められる範囲内である。
それより何より、この古本屋に並べられている本は貴重な物ばかりだった。
金はあるのだし、今の俺には記憶系のスキルも無いので買えるだけ買っておいたのだ。
「……いちおう訊いておきますけど、この店はずっとここにありますか?」
「ははっ、あるわけないだろう! また来たきゃ、また見つけるんだね!」
「普通の店は動かないはずですけど……今度は、妹といっしょに来ます」
「そうかい。何度も来て、何度も買ってくれれば場所が分かる魔道具を渡しているよ。そうできるような奴になるんだね」
生活魔法の“目印”は刻んでおいたが、どうせ解除されるだろう。
それに期待する気はないので、また別の仕掛けがバレないことを祈る。
「お世話になりました。あの、ここ以外に魔本が手に入りやすい場所を知りませんか?」
「そうだね……西の方にある学芸都市なんかには、魔本が手に入りやすい迷宮があるんだがね。今のあんたじゃ、そこに入ることもできないだろうね」
「……では、他の場所で」
「となるとそうだね──」
金払いがよかったからか、情報をいくつか教えてくれる老人。
俺はそれらをすべて聞き終えてから──古本屋から出るのだった。
◆ □ ◆ □ ◆
始まりの草原
魔本を揃えたことで、俺の戦力はそれなりに増した。
それらは本を仕舞う専用の魔道具に収めており、触るだけで取り出せる。
イベントを経て俺のレベルは、それなりに上がっていた。
だが、職業の補正が無いので能力値が低いため、そこまで無茶な戦闘は難しいだろう。
「迷宮になった魔本か……うん、どんな物か見てみたいや。目標の中に入れておいても、問題ないよね」
老人が話してくれた情報の中に、そんなモノがあった。
場所が不特定なので見つかるか分からないが、誰かに見つかる前に行ってみたい。
「さて、魔本開読──“魔力感知”」
魔力感知スキルが封じられた魔本を、一時的に体へ付与する。
もともと持っていたスキルだし、無くとも使えていたので使いこなすことが可能だ。
「感覚さえ掴めば……よし、取れた!」
ある意味、これこそが強くてニューゲームというヤツなのだろう。
体は覚えておらずとも、魂魄が経験を覚えているので、習得速度が少し速まっていた。
「まあ、読むだけで習得できなかったから、才能が無いことに変わりはないけどね」
辺りの魔物がどこにいるのか、獲得できたスキルで探ってみる。
前に来た時同様、初心者や俺と同じ目的の奴らが大量にいた。
魔物、そのせいで少ないんだよ。
数に合わせて魔物の数は多めだし、強くなればどんどん遠くに行くんだけどな。
「あとは──“呼群”」
彼らと違い、俺は魔術が使える。
使用した“呼群”は、魔力を調整して魔物たちを誘き寄せやすい波動を生むことで、釣り上げることができるというもの。
……まあ、トレインだよな。
自分の姿はスキルで隠しているので、周りは突如動き出した魔物にビックリだ。
俺は周りに迷惑を及ぼさない場所に移動を始め、魔物はそれについていく。
彼らは五感ではなく、魔力を感じているからこそ追いかけてくる。
「──“魔力精製”、“追尾魔弾”」
俺は魔力を精錬し、その濃縮されたエネルギーを弾丸として撃ち放つ。
体内魔力操作スキルだけでは精錬できないので、そこま魔術で強制的に行った。
それを行うだけの価値がある。
魔弾が命中した魔物は、その瞬間に体が炸裂していく。
その光景を見て逃げようとする魔物も現れる……が、名が示す通り追尾機能がある。
逃げ惑う魔物たちは、一体一体的確に飛んでいく魔弾の餌食になっていった。
「経験値は……うん、増えてる増えてる。結構新鮮な気分だよね」
本体のレベルは四桁を突破したため、全然上がる気がしない。
だが、今の俺はまだ二桁なので、それなりに魔物を倒せばレベルを上げられる。
ちなみに、1上がると身力と能力値がそれぞれ10と1ずつ増えていく。
周りは職業に就いて、それ以上の補正を受けているのだし……それぐらいいいよな?
「って、魔本を全然使わなかったか。よくよく考えると、魔術でも似たようなことができちゃうし……やっぱり、学習型以外の魔本も集めないと」
もう少し戦えることも分かった。
多生の無茶は許すことにして──俺は魔術“異空ノ扉”を使い、こことは違う場所へ一気にショートカットする。
──いざ、帝国へ!
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