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偽善者と攻城戦イベント 二十三月目

偽善者と攻城戦終篇 その19

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 祈念者の特徴──自由民よりも、この世界に関する常識が足りないということ。
 普通彼らは、魔王城の近くに拠点を作ろうとは思わないだろう。


「ポーションが飛ぶように売れたね。タダだし、効果も高いからかな? 貰える経験値は減るだろうけど、死ぬよりはマシだよね」

「兄さん、これからどうするの?」

「無限に出していると怪しまれるし、少し休憩しよう。ニィナは魔王を観たい?」

「……直接は、いいかな?」


 そう言ってニィナが見上げるのは、空に投影されたスクリーンに映る魔王城の内部。
 祈念者の精鋭たちが、今まさに魔王との戦闘を繰り広げていた。

 瘴気を撒き散らし、そこから魔物を生み出すとそれを操る。
 動物型の魔物を自律的に動かすことが主なのだが、時折武器型の魔物を出して使う。

 魔法を使える魔物なんかも用意して、一人であらゆるポジションでの戦い方を再現している──まさに孤軍奮闘ワンマンアーミーだな。


「兄さん、あの瘴気って……」

「邪神の加護持ちなんだろうね。ただ、これはリオンじゃなくて偽物の方だけど」

「うん、ルーレクト……様だよ」

「別に様を付けてもいいよ、そこまで制限する気はないし……運営神だからって、全員が悪いわけでもないから」


 運営神の中には、同じ運営神でありながらこき使われていた邪神のリオンを案じてくれていた者もいた。

 なので、全員が悪いわけじゃない。
 ……ただまあ、これまで眷属が関わってきた運営神の大半が、何かしらの害を成してきたので報復対象だとは思うけど。


「まあ、その邪神(偽)の加護を介して瘴気が生みだされているみたいだね。ニィナ、鑑定は効くのかな?」

「さすがに画面越しだと……テレビゲームの中に声は掛けられないんだよ」

「アイリスならできそうだけどね」


 雑談をする余裕があった。
 集まった祈念者の数は相当なもので、あまりに多すぎて収まりきらず、再び外の魔物を狩りに行く祈念者が現れるほどだ。

 彼らはボス狩りまおうを諦めた。
 しかしこのイベントの上位になることは諦めておらず、ポイントを分配したときに相当少なくなりそうな魔王戦を切り捨てたのだ。

 これもまた、立派な戦略であろう。。
 夢はでっかくホームランよりも、人生コツコツ送りバント主義が性に合う奴もいる。


「ニィナはどっち? ポイントを稼ぐ時、大物狙いなのか小物で地道にやるか」

「兄さんは……大物だよね、間違いなく。ぼくも大物かな? というか、ぼくは兄さんと戦うために創られたんじゃないか」

「僕は大物扱いなのかな? まあでも、同じタイミングで偽善が起きたなら、どちらかというと大きな偽善をやりたいかな? 当然、小さい方もやるけどさ」


 ニィナは全祈念者から情報を抜き出すために、解析しながら戦うこともあった。
 その経緯を考えれば、雑魚狩りを淡々とこなすこともできるだろう。

 対する俺も、膨大な量のスキルを保有しているため、底が尽きるまでは検証できる。
 一つひとつ、異なるスキルで……とやっていれば、雑魚狩りも楽しめそうだな。

 ポイントが多い少ないなど、俺にはあんまり関係ない……GMたちとのコンタクトは、いつでも取れるのだから。

 報酬だって、アイテムはほぼすべて自分で作れるし、運営側が用意した物も完全ではなくとも擬似的に再現することができる。

 ……まったく、これっぽっちもやる必要がないのだ。
 しいて言うなら、運営神の邪縛を外して無職から解放されたい。


「そういえば兄さん、スペシャルロールの人たちを兄さんは知っているの?」

「『賢者』は始まってすぐに話した通り、あのアルカって金髪……じゃなくて、今は赤髪の子だよ。正直、僕からすれば賢いのかたまに分からなくなるけど」

「そ、そうなんだ……じゃ、じゃあ、あっちの『勇者』の人は?」


 映像の中で活躍する、特別な役割スペシャルロールに選ばれた者たち。
 勇者、聖女、賢者、聖騎士の四人組、彼らがメインとなって魔王と戦っている。


「まあ、当然と言えば当然だね。もう一人の赤髪の男の人は、フレイって言って誰かと知り合うだけで強くなれるチート能力者だよ」

「えっ、それって凄すぎなんじゃ……?」

「うん、正確には縁を結んだ相手。それが正でも負でも、強く結ばれてさえいれば、それは炎になってあの男の力になるんだよ」

「ってことは兄さんも……」

「たぶんね。それがどっちなのかは分からないけど、それなりに燃えていると思うよ」


 俺にはそれを判別する方法が無いので、残念ながらニィナの質問には答えられない。
 なので『勇者』を知れたことで、どうにか満足してもらう。


「あとは『聖女』と『聖騎士』だけど……あの二人は、直接の面識がないんだ」

「青髪と金髪のお姉さんだよね? あの人たちももしかして、今回のモノとは違う選ばれし者たちなの?」

「そうだね。いずれは直接顔を合わせて、あそこの『勇者』が使っているみたいに、縁を結んでおきたいかな? ニィナ、戦いはあとどれくらい続くかな?」

「うん、いつの間にか行動予測スキルが手に入ったけど。それから考えて、もう少しで終わると思う」


 となると、そろそろ出番か。
 縛りは少し止めて、ついでに縁も結んでおけばいいのかな?


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