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偽善者と攻城戦イベント 二十三月目

偽善者と攻城戦終篇 その11

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 ちなみに、現在は俺とニィナ以外にもこの場所を守る祈念者が混ざっている。
 どうやら普段守っていなかったギリギリの場所から、転送で飛んできたようだな。

 高レベルの魔物すら屠れる兵器やユニットが配置され、殺意マックスなところが丸見えになってしまった。

 そんな彼らが百人ほど。
 祈念者の参加人数が云百万だとすると、ごくわずかと言えよう。

 というか、俺としてはよくもまあ百人も侵入したよと賞賛したくなる。
 転送範囲と防衛用のギミックの仕掛け、確認してみたら紙一重の距離だったし。


「兄さん、どうするの?」

「魔王はクリスタルを狙っている以上、必ず攻めてくる。あそこの祈念者たちは、ここの兵器を使って勝手に防衛してくれると思う。なら、わざわざ僕たちが本気を出す必要はないと思うんだ」

「えっと……じゃあ、どうするの?」

「幸い、ここには必要な設備がある。だから僕たちは、僕たちにできることをやろう」


 俺はニィナを殺させたくない。
 ニィナも俺を死なせたくないし、どちらかが死ねばイベントは眷属たちの全力全開の一撃を以って幕を閉じてしまう。

 ならば、俺がすべきこととは?
 現状、ニィナを死なせないための選択ができるのは俺一人のみ。

 だからと言って、俺が戦場に赴いて死んでしまえば同じことだろう。
 つまりすべきことは、互いに死なないように警戒しながら安全な場所に居ることだ。


「──というわけで、僕たちは調合と錬金で回復アイテムを作ることにしました」

「ええっと……戦わないの、兄さん?」

「ニィナが戦いたいなら、別にいいよ。僕は意思を尊重して止めないよ。ただ、後方支援でもいいかなって……死にたくないし、他の人を死なせないのにもちょうどいいかなって思って。あと、今なら材料費がタダ!」

「うん、兄さんのそれは犯罪だよ」


 現在、俺たちが居るのは生産ギルド。
 さまざまな設備が用意されており、そこには当然素材なども。

 始まりの町には祈念者のギルド員が待機していたが、これまでほぼ鎖国状態だったこの都市にそのような人材が居るはずもなく……野晒しにされていたアイテムを無事獲得。

 なお、これは俺がクリスタルの主だからこそできることであり、今回やってきた祈念者がやろうとしても、システム的に弾かれるように設定しておきました。


「それじゃあ、生産を始めよう。スキルが無くても、やり方は体に染みついているからとりあえず反復行動に徹するよ。一番簡単な、傷薬と魔力水をひたすら作るんだ」

「はーい」

「作り方は……うん、ちょうどギルドの方でレシピを用意してくれてあったね。ニィナはそれと、僕の作り方を見ながらスキルを得られるまで試してみて?」


 生産神の加護を授かっている以上、ありとあらゆる生産活動に絶大な補正が入る俺。
 今回はニィナに完璧な作り方を見せるために、加護に体を委ねて半自動的に作り出す。

 魔法陣が仕込まれた窯に水を注ぎ、魔力を籠めるだけで完成する魔力水。
 すり鉢に薬草を入れて、ペースト状になるまですり潰すだけの簡単なお仕事な傷薬。

 非常に簡単な作業工程……だが、それらを求められる動きで実行しなければ、最高品質のアイテムを作ることはできない。

 水の温度や流す速度、籠める魔力の質や量などで変化する魔力水の品質。
 薬草の質や量、すり潰す強さやペーストの度合いで変化する傷薬の品質。

 まずはこれらを作ってもらうことに。
 俺の方は最初から最高品質で作れたからだろうか、それぞれ三つを作ったらスキルを獲得していた……一回じゃないんだよな。

 そして、ニィナは──


「さすがにニィナでも、すぐにスキルを取れるわけじゃないのか」

「……もしかしたら、理由が分かったかも」

「おおっ、さすがニィナ! で、どういう理由なんだと思う?」


 まだ五回目ではあるが、普段のニィナと比べると習得までに時間が掛かっている。
 彼女に適性が無いスキルは存在しない、それはすでに判明していることだ。

 さすがはニィナ、そこからもう答えを導き出しているとはな。


「戦闘で生産をしている人はいなかったし、完全にやったことが無いことを試したのは初めてだけど……そうか、ぼくは何度か見たことの方がすぐにコツを掴めるのかも」

「なるほど、たしかにそうかもね。じゃあ、僕ももう少し作ってみようか。どっちもより効果のあるアイテムを作るためには、欠かせない必需品なわけだし」

「兄さんをばっちり見ていればいいんだね。うん、ジッと見ているよ」

「生産をする人はいないよね……けど、やったらやったで面白そうだ。ニィナのお陰で、縛りのアイデアも膨らんだ気がするよ」


 そんなこんなで、俺は観察されながら生産活動に勤しむことに。
 俺の様子をニィナが眺め、それに俺がほっこりしてモチベーションが上がる。

 まさに永久機関!
 模倣していたスキルは擬似的なものだったが、こちらはまさしく本物に違いない。

 やがてやりすぎて中級に進化する頃、そろそろニィナに試させてみることに。
 すると、一発で錬金スキルと調合スキルを獲得するのだった。


「やったぁ、おめでとうニィナ!」

「えへへ……ありがとう、兄さん」


 ──外では激しい攻防が繰り広げられているのだが、ここではまったりとした時間が流れていく。

 俺もニィナも、今はそんな時間を満喫するのだった。


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