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偽善者と攻城戦イベント 二十三月目
偽善者と攻城戦終篇 その09
しおりを挟むとりあえず、俺の方が才能のある犯罪スレスレ系のスキル習得は済ませた。
ニィナにも魔術で経験値や熟練度を共有したので、同じく習得が終わっている。
それが必要になるかどうかは分からない。
だが、持っているだけでも使うことができるという安心感がある。
「兄さん、そろそろだね」
「うん、何をやるんだろう」
「兄さんも知らないんだね」
「ネタバレはちょっと。それに……ニィナと新鮮な気持ちで楽しみたいから」
大量のスキルを得たニィナだが、それらはまだゼロか一度の進化しか遂げずにいる。
一流の祈念者たちはレベル上限がだいぶ高いし、スキルの進化も欠かしてしていない。
自由民は祈念者と違い、スキルポイントを消費しなくてもスキルを進化させられる。
俺の場合、膨大なスキルポイントが溜まっているしスキル共有で借りることも可能だ。
なのでしっかりと成長させることさえできれば、祈念者以上に強くなれる。
……そこからが難しいのが、自由民の問題ではあるが。
「兄さん、どうかしたの?」
「ん? ちょっと、祈念者と自由民の違いについてな。ニィナは何だと思う?」
「うーん……死なないところ、かな?」
「たぶんね。僕はそこじゃなくて、在り方の差だと思うよ。死んでもいいや、当たって砕けろって考えている人が多いから、自由民よりも豊富な経験を積めるんだ。それが祈念者の方が強くなる理由だろうね」
祈念者の肉体は運営神が創ったモノ。
スキルポイント制にすることで、一部のスキルを除いてあらゆるスキルへの適性が与えられた高スペックな代物だ。
死んでも死なないその体で、何かをすればするほどポイントは増える。
あとはそれを自身のやりたいことに合わせて使えば、すぐに強くなれるのだ。
それはかなり歪なので、自由民の中に居る達人などには勝てないだろう。
しかしそれ以外の、レベルをカンストさせていない自由民が相手ならかなり有利だ。
「僕とニィナ、いちおうは自由民のスペックだからね。死んでもいいって祈念者よりも、自分の命を顧みないといけない……本当は、それが普通なんだけどね」
「兄さんが死んじゃったら、間違いなくこの世界が滅んじゃうよ。僕が死んでも、もしかしたら半壊ぐらいにはなっちゃうし……絶対に死なないようにしないと」
どちらが居なくなっても、ゲームオーバーな無理ゲーみたいなもの。
もちろん、死んでも死なないように予め細工はしてあるけども。
「大丈夫だよ、ニィナ──そうなったら僕が世界を破壊し尽くすから」
「……全然安心できないよ」
「それぐらい僕、そして眷属はニィナのことが大切で大好きなんだよ。ふっふっふ、肝に銘じておくんだな!」
「……うん、分かった」
ツッコミを入れるも、そこはかとなく嬉しそうなニィナに思わずほっこり。
そうして時間を潰していると──アナウンスが鳴り響く。
□ ◆ □ ◆ □
ただいまより、こうじょうせんさいしゅうイベントであるだいこうじょうせんをかいしいたします。
みなさまにはいまいるばしょとはことなるばしょにあるエリアにむかってもらい、そのちでこうじょうせんをおこなってもらうことになります。
ただし、こんかいはぜんいんがしょきはみかたというかたちです。
たいするはかこにそんざいしたまおうとまものたち、みなさまはそれにいどむせいえいというやくどころです。
しょきちてんは、クリスタルのせっちされているここのつのばしょのうちどこかです。
ぼうえいせいこうりつのたかかったここのつのばしょが、みなさまのきょてんです。
なので、みなさまにはそれらどれかにちかしいばしょへいどうしてもらいます。
ごふんかん、てんいをしようかのうにしますのですきなばしょでたいきしてください。
ただし、ちゅうおうであるはじまりのまちやそのきんぺんだけはしようふかのうです。
おなじく、ダンジョンもふうさしますのでそのつもりで。
しょうりじょうけんはちゅうおうにはいちされる、まおうのきょじょうのせんりょう。
もしくは、すべてのきょてんをまもりぬくことです。
はいぼくじょうけんは、みなさまのすべてのきょてんがはかいされること。
もしくは、これからせつめいするスペシャルロールにえらばれたかたがぜんめつすることとなります。
なお、ひとつはかいされるごとにほうしゅうがへることになります。
スペシャルロールのかたは、ぜんめつするまではほうしゅうにへんどうはありません。
スペシャルロールとは、みなさまのなかからイベントちゅうのこうどうによってせんこうされたかたがたのことです。
ゆうしゃ、せいじょ、けんじゃ、せいきしのよにんがえらばれ、イベントげんていのとくしゅなバフがはいります。
かれらがいるいないで、イベントせいこうりつはおおきくかわります。
みなさまはそれをよくかんがえて、これからイベントにいどんでください。
──いじょうでせつめいをしゅうりょういたします。
ではごふんご、てんそうをおこないます。
□ ◆ □ ◆ □
俺とニィナはすぐにトレモロ都市に帰還して、準備を始めた。
スペシャルロールとやらは関係ない、気になるのは初期地点の方だ。
「兄さん、ここって……」
「間違いなく初期地点になるよね。クリスタルは絶対守れるだろうけど、誰かが来たら防衛用の設備を変更できなくなる。その前に、できる分は仕掛けておかないと」
「うん、手伝うよ」
俺とニィナが設置するのは、アルカが掛けてくれた魔法が籠められた罠だ。
踏むと彼女の魔法が発動する……そういえば、アルカは──
「アルカ、賢者に選ばれそうだよね」
「兄さんとあれだけやりあえるんだから、間違いないよ。他の人に心当たりとかって、あるの?」
「勇者がユウかシャイン。聖女がセイラかクラーレ、聖騎士は……分からないな。他にも選ばれし者がいるから、そっちの方から選考されるかもしれない」
「イベントのバフで強くなるんだよね? 誰が選ばれるんだろう?」
少なくとも俺とニィナでないことはたしかなので、そこは本当にどうでもいい。
間もなく五分となる……準備もできたし、スキルの確認でもやって待つとしますか。
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