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偽善者と攻城戦イベント 二十三月目

偽善者と攻城戦後篇 その19

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まだの方は、ぜひそちらからお読みください
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「夢現流武具術闘之型──“移転闘法”」


 剣を構え、魔力の維持を意識しておく。
 その状態で相対する者──カナを視た。
 カナは物理反射と魔力反射、それぞれの能力を使える従魔を従えている。

 なので同時にそれを叩き込めば、どうにか反射されることを防げるかもしれない。
 そのため近づく必要がある……魔物の能力があるからか、感知能力が高いんだよな。

 だが、策は無数に存在する。
 それらを複合した闘い方こそ、今回使用した夢現流武具術のオリジナル武技だ。


「この攻撃を受けられるか?」

「消えた!? 後ろに……“物理反射”!」

「いや、正面だ──“四肢連斬リンブズスラスト”」


 やり方はシンプル。
 転移系のスキルを連続して使い、相手が対応できなくなったところで攻撃するだけ。

 今回の場合は“満天広がる眸子の夜空”で浮かべた魔眼、そして潜ませた“影分身シャドウアバター”たちの視界を用いて転移眼を起動している。

 そして、間に合わなくなったところで腕と脚を切断……しようとしたが、高められた感覚のせいか、緊急回避をされてしまった。

 翼が小刻みに震え、躱されてしまう。
 まあ、間に合わなかったのでそれぞれにダメージが入っているけど。


「痛ッ……セリー、お願い」


 ケイコクの翼より小さめの翼が生えると、そこから回復魔法がカナに施される。
 鑑定眼に表示される回復魔法のレベルが高いからか、傷つけた部分もすぐに治ったな。

 物理反射も行われなかったし、攻撃が命中した場所にスライムが居なければ、どうやらカウンターは成立しないようだ。


「いつまで耐えられるか──“剣舞ソードダンス”」


 剣を振りながら、さまざまな剣系の武技を発動していく。
 舞っている間は再発動時間リキャストタイムが短縮化されるため、その間隔は極めて短い。


「夢現流武具術剣之型──“斬々舞キリキリマイ”」


 切って斬って伐りまくる。
 無数の視界を介した転移による奇襲は、たとえ仕掛けが分かっても防ぎがたい。

 現に、カナは転移そのものに反応するようにはなっているものの、俺が移動するまではそれに気づけていないからな。

 何度も何度も剣を振るえば、少しずつ体そのものは追いつかなくなっていた。
 ダメージを負っては回復魔法で治す、それが続いていく。

 俺の精気力は無尽蔵なので、先に力尽きるのはカナの方だ。
 それを理解しているのか、彼女も切り札を出すようだ。


「みんな、お願い──“魔獣身化”!」


 彼女の姿が一瞬、光り輝く。
 すると体の部分部分に、これまで以上に魔物のパーツがくっついていった。

 瞳も黒と白が逆転しているし、翼も悪魔や龍のモノなどが追加されている。
 何より、魂魄眼が映す輝きに変化が生じていた……交ざり合っていた。

 完全に混ざっているのではなく、従魔たちがカナを汚染しないように支えている。
 本来は精神汚染から暴走する能力のはずだが……うん、さすがは【友愛調教姫】だな。


「い、行きます!」

「時間制限は……五分と言ったところか。まあよい、ならばこちらも少しばかり見せようではないか──“神霊召喚サモンオラクル契約神霊『ナース』”!」

《けーやくしゃー!》

「力を貸せ──“神霊憑依ポセッションオラクル”」


 あのときを思い返すように、ナースを召喚してその身に宿す。
 虚無のエネルギーを虚空より生み出すナースの力によって、俺もその恩恵を受ける。

 無数の魔物たちの力を使うカナと、虚無の力と模倣の力を使う俺。
 互いに強大な力を宿し、もう一方を倒すために戦うことを決める。










 そして、すべてを終えたとき。
 俺は地に伏していた……壮絶な戦いの結末は、心地よい満足感を俺にもたらした。


「はっはは、よかった……実によかったよ」

「えっと……魔王、さん?」

「戦闘の中で知ったとは思うが、貴様の能力に制限時間など無かった。我が魔導は時を止め、その力とやらも永続的に使い戦えるようにしていたのだからな」

「え、ええと……そのその、ありがとうございます?」


 五分などと言わず、何時間でも本気の力を見たかったのだ。
 だからこそ、俺は最初に魔導を使って望まない時間経過のみを停めていた。

 その結果、生命力は一割を切っている。
 対してカナのものは──すでにゼロだ。

 今なお動いているのは、魔物の中に死んでも一定時間活動できる能力を持つ者が居て、それが魔導で延々と引き延ばされるから。

 勝敗が決していることに納得しているからこそ、何もせずに倒れている。
 まあ、体が動かないで死に戻りの処理待ちみたいな感じだしな。


「カナよ、俺との戦いはどうだった?」

「はい、とても楽しかったです。ハークさんやケイコクさん、それにみんなとも一つのことに一丸となって挑む……実はみんな、時々喧嘩をしちゃうんですよ?」

「貴様とて万能ではあるまい。貴様との絆が紡がれる、それゆえに繋がらぬ縁もまた存在するのだ。諍いであろうとも、仲間同士で縁があることを誇るがよい」

「やっぱり、魔王さんは悪い人じゃなかったですね」


 もともとは召喚士な俺だからこそ、そんなことを言ってみせる。
 まあ、普通の従魔なんて一人としていないから言葉に力強さはないんだけど。


「ふっ、ならば貴様に俺が悪人だというところを見せつけてやろう」

「──えっ?」

「俺は理解している、自身が大罪人だと。己が業を理解するからこそ、このように振る舞い貴様にも害を及ぼした……その一端に、すでに貴様は巻き込まれている」


 時間は……うん、外はもうイベント終了間際ってところかな?
 それではカナも楽しめないだろうし、せっかくだから使おうじゃないか。

 すべての存在に等しく与えられた、そんなものを独占した大逆的な魔導を以って。


「魔導解放──“星刻鳴らす大鐘楼”」


 大量の魔力を生成し、それを使うことで発動する魔導。
 それによって、仮初の世界は大きく変化を起こし──


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