上 下
1,546 / 2,519
偽善者と攻城戦イベント 二十三月目

偽善者と攻城戦後篇 その18

しおりを挟む
連続更新となります(12/12)
……ほんの一瞬ですが、なろうに追いつきました
===============================


「魔導解放──“満天広がる眸子の夜空”」


 隕石が降り注ぐ中、魔導を起動する。
 空に広がる無数の星、それらは眼球のように蠢きカナと俺を補足していく。

 その情報はすべて俺にフィードバックし、情報として取り入れられた。
 脳の処理が追い付かないほどだが……そこはスキルでカバーして戦闘を続行する。


「焼き切れろ──“煌明刃ビームブレード”!」

「っ……! ふ、“乱旋打フルーリーウィップ”!」


 剣が光熱を帯びてカナを襲うが、彼女もまた武技を使ってそれを防ぐ。
 効果はたしか、打った相手を一定確率で混乱させるんだっけ?


「なら受けよう。そして──」


 武技を受けつつ思考詠唱で“夢現反転”を起動する。
 混乱するはずだった思考は、逆に正常となり処理能力も増大した。

 今の俺はとあるスキルでバフ・デバフも自在なのだが、こうして相手から受けた状態異常を反転させた方が燃費がいいのだ。

 そんな増えた処理能力で、“空間断絶ティア”を無数に発動。
 触れたら切断ということで、カナの動きを制限して剣を振るう。


「きゃっ!」

「ちょうどよい──“目印マーク常駐レジデント極大マキシム”」

「ハークさん! ケイコクさんも!」

「むっ……面妖だな」


 剣で押し飛ばしたところでマーキングを済ませ、さらに畳みかけようとしたが、さすがに冷静さを取り戻したみたいで。

 ハークが魔法陣で隕石と俺を迎撃。
 その間に十二枚の翼が背中から生えて、カナの体をより遠くへ向かわせた。



 カナと従魔は一方的な主従の関係というものを持たず、それぞれが好意や厚意によって結ばれた縁で繋がれている。

 その結果が、表面的に現われていた。
 具体的にはハークが魔法陣を代理で起動、ケイコクが翼の操作をするなど……本人は本人で、先ほどのように従魔の力を扱える。

 同じことをできる者が二人いるのだ。
 単純な計算でも二倍の戦力、希少かつ強力な能力ともなればそれ以上だろう。


「は、“幅叩はばたき”!“火炎渦フレイムスロー”!」

「翼闘術、それに炎魔法か……“水鉄砲ウォーターガン”、加えて“封熱尖塔ペニテンテ”」


 十二枚の羽の内、十枚を使って発動させてきた武技。
 広範囲に翼を打ち付け、打撃ダメージを与えるというものだ。

 おまけに炎で焼き払おうとしてくるものだから、羽の風に煽られてよりいっそう範囲が広がってさあ大変。

 なので俺は圧縮した水を放出し、先にカナ本体を空高く押し返す。
 その後熱を吸収する、煙突のような形をしたオブジェを生み出す魔法で炎を封印した。

 氷魔法なので、魔力を込めればそれなりに頑丈となる。
 はばたきの風は魔法ではなく物理現象、そう簡単に崩れることはなかった。


「──“天駆”、“統率”、“影分身シャドウアバター”」


 空を自在に渡れるようにした状態で、自らの分身を影から生み出す。
 それらは統率スキルをアクティブ化させることで、指令通りに動いていく。

 先ほど向上した処理能力分を注ぎ、影分身たちを操らせる。
 ついでに<千思万考>も使って、思考詠唱で大量の魔法を降り注いでおく。


「ッ!? は、ハークさん!」


 当然、魔法への対応はハークが担う。
 一つや二つならまだしも、今回は相殺できる数を狙って五百だ。

 低威力だが魔力感知には高威力だと思わせる、そんな詐欺みたいな魔法ばかりセットしておいたので、避けるという選択肢を選ばずに対処してくれる。

 その間、影分身たちは俺が指示した通りの場所へ向かう。
 そこでさまざまな方法で、『術』を起動する影分身たち。

 印、符、妖気など……魔法と違ってさほどイメージを必要としない、まさに分身でもできるような攻撃が可能──それが『術』だ。


「スラ君、お願い!」


 しかし、カナが従えているのは蛇龍と天魔と狐だけではない。
 彼女が掌を前に突き出したかと思えば、それがドロリと粘液のように動き出した。

 そして、それは『術』に命中し──何事もなかったかのようにすべてを呑み込む。
 名前と能力からして、魔粘体系の従魔を配下にしていたようだ。

 彼女の魔力量が回復し、魔法陣が二枚展開される。
 一枚は彼女の足元、もう一つは──俺のすぐ近く!


「──“後宙返脚サマーソルト”!」

「スラ君──“物理反射”!」

「なっ……ぐっ!」


 現れたカナに向けて、蹴りを叩き込みながら後退をする……そこまではよかった。
 しかし、カナのスライムはただの魔力を喰えるだけのスライムではなかったらしい。

 蹴りがスライムに命中すると、その衝撃が俺に逆流してきた。
 どれだけ押し込んでも跳ね返ってきそうなので、即座に空歩スキルで宙を蹴って離脱。

 改めて魔力を弾丸にして飛ばすが、それは吸収するだけで何もしてこない。
 ブラフかもしれないが、おそらくは物理攻撃のみをカウンターできる能力なんだろう。


「物理だけではダメ、か……ならば、魔法も付けさせてもらおう──“疑聖装備ホーリーウェポン”」


 煌魔法に存在する、一時的に装備に聖性を与えるこの魔法。
 これなら魔力もセットで付いてくるので、確かめるのにちょうどいい。

 ついでに、空に浮かべている大量の魔眼。
 そちらにも少々細工を加えておく……一つぐらい色が変わっても、気づける者はそうはおるまいよ。


「スラ君、それにミロちゃんも頑張って」

「悪いが、俺は聴覚も良いぞ。物語のように都合の悪い部分が聞こえないとは思うな」


 流れからして、魔法反射もできるのか。
 先ほど使わなかったのは……威力が弱いとか、向こうなりに事情があるのだろう。

 さて、まだまだ楽しめる。
 邪魔者は誰もいない……ふっふっふ、さっきのアレでやる気スイッチが点いたな。


しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

World of Fantasia

神代 コウ
ファンタジー
ゲームでファンタジーをするのではなく、人がファンタジーできる世界、それがWorld of Fantasia(ワールド オブ ファンタジア)通称WoF。 世界のアクティブユーザー数が3000万人を超える人気VR MMO RPG。 圧倒的な自由度と多彩なクラス、そして成長し続けるNPC達のAI技術。 そこにはまるでファンタジーの世界で、新たな人生を送っているかのような感覚にすらなる魅力がある。 現実の世界で迷い・躓き・無駄な時間を過ごしてきた慎(しん)はゲーム中、あるバグに遭遇し気絶してしまう。彼はゲームの世界と現実の世界を行き来できるようになっていた。 2つの世界を行き来できる人物を狙う者。現実の世界に現れるゲームのモンスター。 世界的人気作WoFに起きている問題を探る、ユーザー達のファンタジア、ここに開演。

パーティ追放が進化の条件?! チートジョブ『道化師』からの成り上がり。

荒井竜馬
ファンタジー
『第16回ファンタジー小説大賞』奨励賞受賞作品 あらすじ  勢いが凄いと話題のS級パーティ『黒龍の牙』。そのパーティに所属していた『道化師見習い』のアイクは突然パーティを追放されてしまう。  しかし、『道化師見習い』の進化条件がパーティから独立をすることだったアイクは、『道化師見習い』から『道化師』に進化する。  道化師としてのジョブを手に入れたアイクは、高いステータスと新たなスキルも手に入れた。  そして、見習いから独立したアイクの元には助手という女の子が現れたり、使い魔と契約をしたりして多くのクエストをこなしていくことに。  追放されて良かった。思わずそう思ってしまうような世界がアイクを待っていた。  成り上がりとざまぁ、後は異世界で少しゆっくりと。そんなファンタジー小説。  ヒロインは6話から登場します。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。 Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。 最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!? ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。 はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切) 1話約1000文字です 01章――バトル無し・下準備回 02章――冒険の始まり・死に続ける 03章――『超越者』・騎士の国へ 04章――森の守護獣・イベント参加 05章――ダンジョン・未知との遭遇 06章──仙人の街・帝国の進撃 07章──強さを求めて・錬金の王 08章──魔族の侵略・魔王との邂逅 09章──匠天の証明・眠る機械龍 10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女 11章──アンヤク・封じられし人形 12章──獣人の都・蔓延る闘争 13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者 14章──天の集い・北の果て 15章──刀の王様・眠れる妖精 16章──腕輪祭り・悪鬼騒動 17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕 18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王 19章──剋服の試練・ギルド問題 20章──五州騒動・迷宮イベント 21章──VS戦乙女・就職活動 22章──休日開放・家族冒険 23章──千■万■・■■の主(予定) タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

処理中です...