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偽善者と攻城戦イベント 二十三月目

偽善者と攻城戦後篇 その17

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 俺の言葉を真に受けたカナは、まずケイコクの蘇生を行う。
 渡した葉っぱ型のアイテムの使い方を教えると、その通りに実行した。


「──ここは?」

「ケイコクさん! よかった、本当に……よかったです」

「カナか……そうか、我は負けたのか」

『そうです。ケイコク、あなたでも負けるのですね、この者には……』


 いやー、まさか本当に蘇生するとは。
 自分に使うこともできず、今までテキスト情報でしか効果を知らなかったんだが……成功して何よりだ。

 彼女たちに教えるつもりはないが、自分のアイテムで喜んでもらえるのは偽善者冥利に尽きるな。

 だがしかし、これから行われるのはそんな喜んでくれているカナとの真剣な闘い。
 眷属たちも俺の縛りを解除する形で、応援してくれている。


「──ハークさん、ケイコクさん。そして、みんな……わたしに力を貸してください」

『私は反対です……が、たとえそう言ってもカナさんは諦めないでしょうし、予め魔法は施させてもらいますよ』

「我から事前にできることは何もないが、のちに力となろう」

「ありがとうございます」


 職業に関する情報は集めており、調教師系の職業に関するモノもある程度知っている。
 シンプルに言えば、自分の従魔の力を引き継ぐ……それが調教師系職業の共通能力だ。

 それをカナは使用する。
 ただし、彼女が就いているのは調教師系最上位とされている固有職。

 本来の頂点である極職ではないものの、導士の力で変質した高みに近き職業。
 シュリュの<武芸覇者>同様、本来は存在しえぬ職業。

 ──【友愛調教姫】、それこそが祈念者最強の調教師の就く職業名だ。


「みんな、お願い──“従魔合身”!」

『ええ!』「おう!」

『『『『『『『『はい!!』』』』』』』』


 発動した一つのスキル。
 本来それは、自身の配下である従魔の一体と合体し、身体的能力や能力値の一部、そしてスキルなどを共有するというもの。

 まあ、彼女レベルの調教師ともなれば、ほぼすべてを引き継ぐことになるだろうが……少なくともカナだけは、さらにもう一段階上の能力へ昇華していた。

 彼女の声に呼応したのは、一や二ではなく数えきれない何十もの従魔たち。
 彼らはその身を光と化すと、主たるカナの胸の中へ吸い込まれていった。

 その影響は彼女本人にも。
 地味だったローブに色が付き、瞳は虹色に輝きだす……あとは、彼女の中から無数の生命反応が感知できるようになった。


「これが……わたしたちの本気です。準備はいいですか、魔王さん?」

「では、一つだけ。これが発動したとき、それを戦いの幕開けとしよう」


 このまま暴れては、いったい誰が乱入してくるか分からない。
 なので俺は紡ぐ、大いなる魔力のうねりを己の思うがままに操り。


「魔導解放──“果てなき虚構の夢幻郷”」


 辺り一帯を飲み込む領域を展開する。
 カナは一瞬警戒したようだが、ハークを取り込んだことで得たであろう何かでその効果に気づき、そのまま効果を受け入れた。

 ──今は鑑定眼も使えるので、その末恐ろしさが理解できてしまうよ。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 俺が生みだした虚構の世界。
 そこには何も存在せず、ただ俺とカナだけが存在する仮想の空間。

 ここでなら、俺の魔導に籠めた魔力以上の干渉が無ければ誰も入ってこない。


「では、始めようか」

「はい……ハークさん!」

「魔法陣か。ならば──“千剣弾幕ソードスクリーン”」


 いきなり現れた千の魔法陣に対抗するように、俺が生み出したのは千の剣たち。
 一本一本を魔力に干渉できる性質を持たせると、それらを並べて壁とする。

 一斉掃射された魔法の数々は、その剣たちによって破壊されていく。
 互いにこれは前哨戦、すぐさま別の手段を用いて戦いを続ける。


「魔導解放──“閉ざされし終末”」

「──ッ!? 何も……起きない?」

「ただの余興に過ぎぬ。特に気にするな、本命はこっちだ──“剣器創造クリエイトソード吸収剣アブソーブソード”」

「なら……“虹色狐火”!」


 ぴょこん尻尾が生えたと思えば、瞳と同じ色に燃え盛る炎が生み出される。
 ナースと戦った狐のスキルなのであれば、基本属性すべてに対応した炎なんだろう。

 それを掌から無数に投げ飛ばすので、創造した“吸収剣”で斬り裂いてみる。


「むっ、消えぬか──“鎮火エクスィングイッシュ”」


 魔力そのものを燃やす効果があるのか、身力を吸収できるはずの剣をも燃やしてきた。
 ならばと火を消すことに特化した魔法を使うと、どうにか消すことに成功する。

 かなりの魔力を消費したので、おそらく籠めた魔力以下のものすべてを燃やす……とかそういう代物なんだろう。


「くははっ、やるではないか! まだまだタネは隠しているんだろうな? 魔力だけの戦いはもういいだろう、そろそろ己の技を魅せ合おうではないか!」

「どんなことでも、わたしは負けません!」

「いいだろう、ならば俺にすべてを曝け出してみせよ──“災害喚起ディザスター流星雨メテオール”!」


 大量の流星が降り注いでいく。
 次元魔法すらも解放された今ならばこそ使える、最大級の囮。

 ……もっともっと楽しませてほしい。
 魔法で剣を追加で生み出してから、俺はカナの下へ一気に迫っていく。


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