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偽善者と攻城戦イベント 二十三月目
偽善者と攻城戦後篇 その11
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連続更新となります(05/12)
===============================
「自分が凶運だって忘れていたな……」
「さすがは主様、初めて二度目で当たりを引くとはのう」
「──見つけたわよ!」
空を飛び、龍の翼を使って逃げる俺たち。
それを追いかけるのは、瞳を赤色に輝かせる金髪ツインテールの少女。
今なお無数の魔法を放ち、俺たちを撃墜しようと接近してくる。
「今ほどソウの恩恵にあやかれて良かったと思ったことはない。龍の鱗って、それだけで便利なんだな」
「主様の役に立てたのであれば、何よりじゃのう……じゃが、なかなかの使い手じゃな。魔導に至らぬ魔法でありながら、創意工夫だけであの域にまで達するとは」
「祈念者の中だと、俺も含めて最強の魔法使いだからな。おまけに、武具を前にあげたから無限に成長する」
卵だった武具も立派に杖となり、多種多様な形で彼女を支えていた。
……そういえば、自我はどうなっているんだろうか?
人化させたら、からかえそうな気がする。
「なんと……主様、よければ娘の相手は儂にやらせてはくれないかのう? 終われば帰還する故、迷惑はかけぬよ」
一考する余地はありそうな提案だ。
今のソウは能力値を縛られているので、圧倒的差があることは分かっているが、それでもごく僅かながら敗北する可能性がある。
別に、ソウに負けてほしいというわけではないのだが、苦戦する相手の一人や二人、外部で経験してもらいたいのだ。
「分かった。ソウに任せよう」
「うむ、それでこそ主様じゃ。これからも、眷属を頼ってくれてよいのじゃぞ?」
「……それが狙いか。まあいいや、それは事実なんだし。あとのことは頼んだ、俺は先に行かせてもらう」
「フラグ……なんじゃろうか?」
さあ、分かりませんよ。
◆ □ ◆ □ ◆
ソウとアルカの闘いは、かなり激しいものとなっている。
それはどこに行っても空が輝くことから、把握できてしまう……壮絶だよな。
世界最強の古龍と魔法最強の祈念者。
二人も、勝敗そのものはすでに分かっているだろう……それでも共に、経験を得るために闘争を続けている。
「ん? 傭兵しか居ない場所もあるのか……ちょっとお耳で拝借」
外で動かず待機している姿から、あまり期待されていないことがよく分かる。
しかし、何やら巨大な魔法陣を描いているので……耳を澄ませて情報を集めていく。
『くそがっ、ふざけんなよ! いくら二つ名持ちだからって、人の足元を見やがって!』『だから見返してやるんだろう?』『自由行動はさせてもらっているんだ、何をするのもこっちの自由だろう?』『凶悪な魔物を呼び出して破滅に導くってな……最高だな』
人は集まったものの、質が良くなかった。
一部分を切り取ってみたが、それだけはすぐに理解できる。
それでも数百人も集まっているのは、ひとえにこの世界に膨大な数の祈念者が集っている証拠でもあるのだろう。
「──雑魚しかいないから、眷属も来てくれなかったわけか?」
「だ、誰だ!」
「俺自身が戦ってもいいんだが、どうやら召喚をしていたんだよな? なら、テメェらの相手はこいつにしてもらおうか」
そう言って取り出すのは、黒色の魔本。
勝手にページが捲れていき、とあるページで止まり……描かれた魔法陣が光り輝く。
「来い──『狂邪真竜』!」
「んな、なんじゃこりゃあ!」「おいおい、ふざけんなよマジで!」「レベル250……チートじゃねぇか!」
「ふはははっ、悪いが貴様らの企みをかなえさせるわけにはいかなかったからな! その希望を抱いたまま、絶望に沈むがよい!」
ソウが半殺しにしたこのドラゴンも、ネロによる魂魄の実験後は従順な個体となった。
俺たちからすると、レベル250の魔物と言えばあんまり強くないが……普通は強い。
彼らの反応からもそれは見て取れる。
たとえ人族がレベル250になろうと、地力が違うため、職業の枠を全部埋めてカンストさせないと勝てないんだよなー。
例外は何かしらの固有能力持ち。
しかし、それっぽい奴はここにはいないだろう……選別したうえで、彼らはこの場に居るわけだし。
「はい、というわけで蹂躙でーす」
「くそがっ、こんなに相手に──」
「できないってか? 逃げたヤツから殺す、徹底的に殺す。まさか、俺が使えるのがコイツだけだと思うか? おいおい、勘弁してくれよ。俺はそこまで自惚れちゃいねぇよ」
「チッ……全員、殺るしかねぇぞ!」
逸れ者たちは武具を手に取り、一斉にドラゴンに攻撃を始め──
「おいおい、術者を攻撃するなんて王道の風上にもおけねぇ奴らだな!」
「……真面目に戦えなんて、いったいどこの誰が決めたんだよ」
「ははっ、違ぇねぇな! なら、こっちも少しばかり小細工ってヤツをしてやらねぇといけねぇな──“龍乃逆鱗”!」
龍魔法の一つ“龍乃逆鱗”。
名前からなんとなく察せると思うが、効果は意図的に暴走状態を引き出すというもの。
もともと凶悪なドラゴンが、さらに凶悪性が上がったうえで彼らを襲う。
悪いとは思わない、彼らが真面目に戦わなくていいと言ってくれたのだから。
「ここはすぐに片付きそうだな……って、この反応は? おいおい、眷属同士で戦ってくれていると思ったら……まさかのゲストまで登場かよ!」
食客として招いていたのかもしれない。
ドラゴンと戦っている[傭兵]と違い、補正を受けられる[騎士]は有能だからな。
──まだまだ楽しめそうだ、この戦いも。
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「自分が凶運だって忘れていたな……」
「さすがは主様、初めて二度目で当たりを引くとはのう」
「──見つけたわよ!」
空を飛び、龍の翼を使って逃げる俺たち。
それを追いかけるのは、瞳を赤色に輝かせる金髪ツインテールの少女。
今なお無数の魔法を放ち、俺たちを撃墜しようと接近してくる。
「今ほどソウの恩恵にあやかれて良かったと思ったことはない。龍の鱗って、それだけで便利なんだな」
「主様の役に立てたのであれば、何よりじゃのう……じゃが、なかなかの使い手じゃな。魔導に至らぬ魔法でありながら、創意工夫だけであの域にまで達するとは」
「祈念者の中だと、俺も含めて最強の魔法使いだからな。おまけに、武具を前にあげたから無限に成長する」
卵だった武具も立派に杖となり、多種多様な形で彼女を支えていた。
……そういえば、自我はどうなっているんだろうか?
人化させたら、からかえそうな気がする。
「なんと……主様、よければ娘の相手は儂にやらせてはくれないかのう? 終われば帰還する故、迷惑はかけぬよ」
一考する余地はありそうな提案だ。
今のソウは能力値を縛られているので、圧倒的差があることは分かっているが、それでもごく僅かながら敗北する可能性がある。
別に、ソウに負けてほしいというわけではないのだが、苦戦する相手の一人や二人、外部で経験してもらいたいのだ。
「分かった。ソウに任せよう」
「うむ、それでこそ主様じゃ。これからも、眷属を頼ってくれてよいのじゃぞ?」
「……それが狙いか。まあいいや、それは事実なんだし。あとのことは頼んだ、俺は先に行かせてもらう」
「フラグ……なんじゃろうか?」
さあ、分かりませんよ。
◆ □ ◆ □ ◆
ソウとアルカの闘いは、かなり激しいものとなっている。
それはどこに行っても空が輝くことから、把握できてしまう……壮絶だよな。
世界最強の古龍と魔法最強の祈念者。
二人も、勝敗そのものはすでに分かっているだろう……それでも共に、経験を得るために闘争を続けている。
「ん? 傭兵しか居ない場所もあるのか……ちょっとお耳で拝借」
外で動かず待機している姿から、あまり期待されていないことがよく分かる。
しかし、何やら巨大な魔法陣を描いているので……耳を澄ませて情報を集めていく。
『くそがっ、ふざけんなよ! いくら二つ名持ちだからって、人の足元を見やがって!』『だから見返してやるんだろう?』『自由行動はさせてもらっているんだ、何をするのもこっちの自由だろう?』『凶悪な魔物を呼び出して破滅に導くってな……最高だな』
人は集まったものの、質が良くなかった。
一部分を切り取ってみたが、それだけはすぐに理解できる。
それでも数百人も集まっているのは、ひとえにこの世界に膨大な数の祈念者が集っている証拠でもあるのだろう。
「──雑魚しかいないから、眷属も来てくれなかったわけか?」
「だ、誰だ!」
「俺自身が戦ってもいいんだが、どうやら召喚をしていたんだよな? なら、テメェらの相手はこいつにしてもらおうか」
そう言って取り出すのは、黒色の魔本。
勝手にページが捲れていき、とあるページで止まり……描かれた魔法陣が光り輝く。
「来い──『狂邪真竜』!」
「んな、なんじゃこりゃあ!」「おいおい、ふざけんなよマジで!」「レベル250……チートじゃねぇか!」
「ふはははっ、悪いが貴様らの企みをかなえさせるわけにはいかなかったからな! その希望を抱いたまま、絶望に沈むがよい!」
ソウが半殺しにしたこのドラゴンも、ネロによる魂魄の実験後は従順な個体となった。
俺たちからすると、レベル250の魔物と言えばあんまり強くないが……普通は強い。
彼らの反応からもそれは見て取れる。
たとえ人族がレベル250になろうと、地力が違うため、職業の枠を全部埋めてカンストさせないと勝てないんだよなー。
例外は何かしらの固有能力持ち。
しかし、それっぽい奴はここにはいないだろう……選別したうえで、彼らはこの場に居るわけだし。
「はい、というわけで蹂躙でーす」
「くそがっ、こんなに相手に──」
「できないってか? 逃げたヤツから殺す、徹底的に殺す。まさか、俺が使えるのがコイツだけだと思うか? おいおい、勘弁してくれよ。俺はそこまで自惚れちゃいねぇよ」
「チッ……全員、殺るしかねぇぞ!」
逸れ者たちは武具を手に取り、一斉にドラゴンに攻撃を始め──
「おいおい、術者を攻撃するなんて王道の風上にもおけねぇ奴らだな!」
「……真面目に戦えなんて、いったいどこの誰が決めたんだよ」
「ははっ、違ぇねぇな! なら、こっちも少しばかり小細工ってヤツをしてやらねぇといけねぇな──“龍乃逆鱗”!」
龍魔法の一つ“龍乃逆鱗”。
名前からなんとなく察せると思うが、効果は意図的に暴走状態を引き出すというもの。
もともと凶悪なドラゴンが、さらに凶悪性が上がったうえで彼らを襲う。
悪いとは思わない、彼らが真面目に戦わなくていいと言ってくれたのだから。
「ここはすぐに片付きそうだな……って、この反応は? おいおい、眷属同士で戦ってくれていると思ったら……まさかのゲストまで登場かよ!」
食客として招いていたのかもしれない。
ドラゴンと戦っている[傭兵]と違い、補正を受けられる[騎士]は有能だからな。
──まだまだ楽しめそうだ、この戦いも。
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