1,538 / 2,518
偽善者と攻城戦イベント 二十三月目
偽善者と攻城戦後篇 その10
しおりを挟む
連続更新となります(04/12)
===============================
対人戦(一方的殲滅)が終わり、再び時間が空いてしまった。
先ほどの火力には驚いたが、まあ開戦の狼煙にはよかったのかと自分を納得させる。
眷属たちも、隠密行動から戦闘を始めたと念話で連絡が入った。
それと同じくらい、クレームも来ているのだが……そっちは無視している。
「ついでに言うと、念話で座標を特定しようとしているな」
「じゃが、無視はしても妨害はしていないのじゃろう?」
「眷属を活躍させたいから、俺の居場所は分かるようにしておきたかったんだよ。居もしない存在に警戒してもらうよりは、堂々と待機していた方がいいだろう?」
「なるほどのう、主様なりに考えての行動であったか。てっきり儂は、主様が儂との逢瀬に邪魔が入らぬよう配慮してくれているじゃと思っておったわ」
そもそもが監視目的なので、あまり眷属の祈念者たちと戦わせるつもりはなかった。
たとえるならソウは、徘徊するラスボスのようなものだし……投入する気はない。
「縛り中の俺はともかく、お前は完全にアウトだ。どれだけ力を抑制しても、まったく抑え切れないからな……魔物は魔法陣ごと木っ端微塵だし、外部の侵入者もしばらくは来ない。本当にやることが無くなったな」
「では、どうするのかのう?」
「なあソウ、自衛以外で暴れないって誓えるか? それなら考えがあるんだが」
「ひどいのう、主様。何度も言っておるではないか、儂の目的は主様との逢瀬。闘争など最初から望んでおらぬ……むしろ、この指輪のように、愛の鞭さえあれば……」
ソウの指輪には強制的な人化、それに加えて人並みの感覚をもたらすスキルが刻まれている……要するに、縛りプレイだな。
力そのものは束縛できなかったものの、身体能力などは人の範疇に抑え込めている。
素の状態では、ということであって、少しでも身力を使えば上限突破するけど。
「じゃあ、とりあえずOKってことでいいんだな? はいはい、じゃあそういうことで」
「うぅっ、やはり主様はどのような態度であろうとも、儂に甘美な感覚を……」
「眷属の場所、あと向こう側の戦力がぶつかる場所はっと……ここか──“空間移動”」
長距離の転移は禁止されているが、この魔法はあくまで視界内に移動先を限定した単距離転移用の魔法。
ただし、工夫すれば距離を伸ばせる。
ちょうど身体系スキルが使えるので、今回の場合は視覚を強化しただけだな。
ソウの力も礼装を使って借りられている以上、映し出される光景もより鮮明となる。
竜族の瞳がすべてを把握し、短距離転移は疑似的に長距離転移を可能とした。
──ギリギリ、ズルじゃないんですよ?
◆ □ ◆ □ ◆
「見て思ったが、ここにはちゃんと傭兵が居るんだよな。やっぱり、美少女だらけってだけでも価値を見出せるんだよな」
「主様も儂らの存在を公表すれば、その程度容易いと思うぞ」
「……まあ、さらっと自分を含んだことに異論はないけど。別に祈念者の助力が必要というわけじゃないし、何よりお前らを見世物にしたくはない。それに……手を出したとき、間違いなく相手が死ぬから」
一番の理由は【強欲】ではあるが、俺にもいちおう<美徳>の精神が宿っているのだ。
ちゃんと相手のことを考えて、思いやることぐらいできる。
「さて、眼下では戦いが始まっている。やっぱりというかなんというか、一方的な感じになっているな」
「眷属となっている者であればともかく、ただの人に主様の寵愛を受けた者を止めることなど不可能じゃろうに」
「寵愛って……まあ、礼装がそうだし諦めるか。けど、相手が相手だしな。これぐらいの差は当然なわけで」
龍の翼をはためかせ、上空から戦況を把握する俺とソウ。
その下で機人の二人組が大量の祈念者を相手に、一歩も引かず逆に押し通っている。
「チャルとアン、結構相性もよくやってくれているみたいだな」
「一通り、眷属同士で何ができるかは確かめておるからのう。あの二人の場合、機人としての機構が上手く働いておる」
「燃費もよく、いろんな情報を共有できる。それだけでも有利になるのか。たった二人、それど上位種だからなー」
魔導の機人と神性を持った機人。
前者は拳で目の前に現れたすべてを打ち砕き、後者は魔術を振るい周囲を翻弄する。
おまけに、隙は機構が作動して補ってくれるので最低限のフォローだけで充分。
ひたすらクリスタルを目指し、まっすぐ進むだけでイイときた。
「まあ、コンビネーションとかそういうものより……単純に、戦闘狂を抑えられる人材が送り込まれたみたいだ」
「儂も昔は、何度も挑まれたのう。拳術をモノにした以上、今は主様から悦楽を頂くことに注力しておるが」
「……そんなことに力を注ぐなよ。でも、超近接戦闘なら、チャルが一番だよな」
俺はフーこと『反理の籠手』の補正で、相手を殺さないという条件を呑めば拳だけでかなり無双することができる。
それでも、スキルをなぞって再現しているだけの俺だとなかなか勝てない。
チャルは機人、性格が戦闘狂であろうと冷静沈着に戦うことができる。
「ここには……あっちの眷属は来ないみたいだな。視界に納めないといけない以上、特定が難しいな」
「慌てずとも、一つひとつ巡っていけばよいではないか」
「それもそうだけどな……よし、また一つ捕捉した。行くぞ、ソウ」
再び“空間移動”を起動して、俺たちは居場所を変更するのだった。
……アルカに見つかる前に、全部巡り終えなければ。
===============================
対人戦(一方的殲滅)が終わり、再び時間が空いてしまった。
先ほどの火力には驚いたが、まあ開戦の狼煙にはよかったのかと自分を納得させる。
眷属たちも、隠密行動から戦闘を始めたと念話で連絡が入った。
それと同じくらい、クレームも来ているのだが……そっちは無視している。
「ついでに言うと、念話で座標を特定しようとしているな」
「じゃが、無視はしても妨害はしていないのじゃろう?」
「眷属を活躍させたいから、俺の居場所は分かるようにしておきたかったんだよ。居もしない存在に警戒してもらうよりは、堂々と待機していた方がいいだろう?」
「なるほどのう、主様なりに考えての行動であったか。てっきり儂は、主様が儂との逢瀬に邪魔が入らぬよう配慮してくれているじゃと思っておったわ」
そもそもが監視目的なので、あまり眷属の祈念者たちと戦わせるつもりはなかった。
たとえるならソウは、徘徊するラスボスのようなものだし……投入する気はない。
「縛り中の俺はともかく、お前は完全にアウトだ。どれだけ力を抑制しても、まったく抑え切れないからな……魔物は魔法陣ごと木っ端微塵だし、外部の侵入者もしばらくは来ない。本当にやることが無くなったな」
「では、どうするのかのう?」
「なあソウ、自衛以外で暴れないって誓えるか? それなら考えがあるんだが」
「ひどいのう、主様。何度も言っておるではないか、儂の目的は主様との逢瀬。闘争など最初から望んでおらぬ……むしろ、この指輪のように、愛の鞭さえあれば……」
ソウの指輪には強制的な人化、それに加えて人並みの感覚をもたらすスキルが刻まれている……要するに、縛りプレイだな。
力そのものは束縛できなかったものの、身体能力などは人の範疇に抑え込めている。
素の状態では、ということであって、少しでも身力を使えば上限突破するけど。
「じゃあ、とりあえずOKってことでいいんだな? はいはい、じゃあそういうことで」
「うぅっ、やはり主様はどのような態度であろうとも、儂に甘美な感覚を……」
「眷属の場所、あと向こう側の戦力がぶつかる場所はっと……ここか──“空間移動”」
長距離の転移は禁止されているが、この魔法はあくまで視界内に移動先を限定した単距離転移用の魔法。
ただし、工夫すれば距離を伸ばせる。
ちょうど身体系スキルが使えるので、今回の場合は視覚を強化しただけだな。
ソウの力も礼装を使って借りられている以上、映し出される光景もより鮮明となる。
竜族の瞳がすべてを把握し、短距離転移は疑似的に長距離転移を可能とした。
──ギリギリ、ズルじゃないんですよ?
◆ □ ◆ □ ◆
「見て思ったが、ここにはちゃんと傭兵が居るんだよな。やっぱり、美少女だらけってだけでも価値を見出せるんだよな」
「主様も儂らの存在を公表すれば、その程度容易いと思うぞ」
「……まあ、さらっと自分を含んだことに異論はないけど。別に祈念者の助力が必要というわけじゃないし、何よりお前らを見世物にしたくはない。それに……手を出したとき、間違いなく相手が死ぬから」
一番の理由は【強欲】ではあるが、俺にもいちおう<美徳>の精神が宿っているのだ。
ちゃんと相手のことを考えて、思いやることぐらいできる。
「さて、眼下では戦いが始まっている。やっぱりというかなんというか、一方的な感じになっているな」
「眷属となっている者であればともかく、ただの人に主様の寵愛を受けた者を止めることなど不可能じゃろうに」
「寵愛って……まあ、礼装がそうだし諦めるか。けど、相手が相手だしな。これぐらいの差は当然なわけで」
龍の翼をはためかせ、上空から戦況を把握する俺とソウ。
その下で機人の二人組が大量の祈念者を相手に、一歩も引かず逆に押し通っている。
「チャルとアン、結構相性もよくやってくれているみたいだな」
「一通り、眷属同士で何ができるかは確かめておるからのう。あの二人の場合、機人としての機構が上手く働いておる」
「燃費もよく、いろんな情報を共有できる。それだけでも有利になるのか。たった二人、それど上位種だからなー」
魔導の機人と神性を持った機人。
前者は拳で目の前に現れたすべてを打ち砕き、後者は魔術を振るい周囲を翻弄する。
おまけに、隙は機構が作動して補ってくれるので最低限のフォローだけで充分。
ひたすらクリスタルを目指し、まっすぐ進むだけでイイときた。
「まあ、コンビネーションとかそういうものより……単純に、戦闘狂を抑えられる人材が送り込まれたみたいだ」
「儂も昔は、何度も挑まれたのう。拳術をモノにした以上、今は主様から悦楽を頂くことに注力しておるが」
「……そんなことに力を注ぐなよ。でも、超近接戦闘なら、チャルが一番だよな」
俺はフーこと『反理の籠手』の補正で、相手を殺さないという条件を呑めば拳だけでかなり無双することができる。
それでも、スキルをなぞって再現しているだけの俺だとなかなか勝てない。
チャルは機人、性格が戦闘狂であろうと冷静沈着に戦うことができる。
「ここには……あっちの眷属は来ないみたいだな。視界に納めないといけない以上、特定が難しいな」
「慌てずとも、一つひとつ巡っていけばよいではないか」
「それもそうだけどな……よし、また一つ捕捉した。行くぞ、ソウ」
再び“空間移動”を起動して、俺たちは居場所を変更するのだった。
……アルカに見つかる前に、全部巡り終えなければ。
0
お気に入りに追加
510
あなたにおすすめの小説
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
DPO~拳士は不遇職だけど武術の心得があれば問題ないよね?
破滅
ファンタジー
2180年1月14日DPOドリームポッシビリティーオンラインという完全没入型VRMMORPGが発売された。
そのゲームは五感を完全に再現し広大なフィールドと高度なグラフィック現実としか思えないほどリアルを追求したゲームであった。
無限に存在する職業やスキルそれはキャラクター1人1人が自分に合ったものを選んで始めることができる
そんな中、神崎翔は不遇職と言われる拳士を選んでDPOを始めた…
表紙のイラストを書いてくれたそらはさんと
イラストのurlになります
作品へのリンク(https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=43088028)
虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる