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偽善者と攻城戦イベント 二十三月目
偽善者と攻城戦後篇 その09
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連続更新となります(03/12)
===============================
大きく息を吸い、全身を巡らせるようにして三つの身力を操作する。
礼装から送り込まれる竜族の力──竜丹は凄まじく、本来人族で扱えない。
俺は今回それを無理やり引きだし、使用した……その代償を支払った場合、俺の体は大幅な弱体化を受けてしまう。
なので、それを踏み倒すべく行動する。
集めた身力を今度は自身の心臓へ送ると、脈動と共に束ねていく。
それが本来人族が扱う『人丹』を生み、体中に浸透する。
こちらは比較的安全なもので……正直効果は薄いのだが、安定していると言えよう。
あとは人丹の量を竜丹よりも高め、それを以って礼装から送り返されてきたエネルギーの塊を押し返す。
代わりにそれは掌に集めて、外に放出……しようとしたのだが──
「主様、それを頂けないかのう?」
「まあ、お前の礼装から集めた力だから別にいいけど……なんで?」
「なぜと問われても……欲しているから、という理由ではダメかのう?」
「ん、それならいいぞ」
欲しいと言われて、俺にあげられるモノならば渡したい。
そう思わせるぐらいに、この世界で眷属たちと共にいる。
いろいろとやらかしてはいるが、ソウもまた眷属……別に拒む理由もない。
というわけで、さっそく実行する──単純に手を繋いでそこから流し込むだけだ。
「んっ……ぅっ……!」
「──“風力操作”」
なんだか変な声を出し始めたので、風を操作して俺とソウの間に壁を作る。
音漏れが無くなり、俺が認識するのはやけに淫靡な顔をしたソウだけ……アウトだな。
俺は目を閉じ、別の作業に集中する。
ちょうど発動した風力操作スキルを使い、周囲に風を当てていくだけの単純な作業。
脳裏には風を当てた場所が浮かび上がり、それが何なのかすら認識できる。
ただひたすらそんな作業を繰り返すと……生命体との接触を確認した。
「解除っと。ソウ、次に行くぞ」
「ほ、ほぉちぷれぇ……」
「…………はあ、仕方ないか」
またまた出番な風力操作さん。
ソウを包み込むように風を作り上げると、そのまま俺に移動に合わせて動かしておく。
燃費の悪いソウの礼装、そして竜丹とその相殺まで実行しているが……上位の身体系スキルで回復を行えば、帳尻が合うぐらいには戻せている。
「ソウ、そろそろ気は済んだか?」
「……ふぅ。主様の気は、未だに儂の体中を巡っておるがのう」
「そこじゃないだろう。次の相手、そんな状態で充分に戦えるのか?」
「それであったか。主様をここで感じているのじゃ、負けるはずがなかろう」
ここ、というのがどこなのか……は知る気にはならなかったので目を向けない。
代わりに視界に移すのは、遠くで発見してやっと目で捉えられるようになった者たち。
風を当てることで速度を読み取り、体の向きで行き先はなんとなく当てられた。
まもなく到着するお客様、目的はこの領域の何なのか……という点はどうでもいい。
今回の眷属は攻城を行なう者──つまりは襲撃者だ。
もし、その情報を外部に漏れすような外因があるのであれば、それは消して当然。
「どうやって倒すんだ?」
「儂と主様の愛に満ちたコンビネーションをするのもまたよいが──」
「そんな事実あったか?」
「うむ、合ったぞ。とはいえ、それでは先ほどまでとは変わらん。相手は死なぬ人形、正面から向かい合う必要などなかろう。主様、今しばらく儂を固定しておいてくれ」
言われるがままソウを支える……が、この先の展開がなんとなく分かってしまった。
その後始末……というか、処理ができるぐらいに被害に留めるべく準備を行う。
いかに祈念者が蘇える存在とはいえ、ソウの攻撃が綺麗に祈念者だけを穿てるわけではない……うん、つまりはそういうことだ。
「やるなら一瞬で済ませてくれ。俺はお前が撃ったらすぐに止めて、被害が出ないように抑え込むから」
「なるほどのう、それならば儂も安心して放つことができる。主様の世界で言うところの『背中は任せた』というところかのう?」
「いや、全然意味が違うからな」
単独でも世界を滅ぼせるヤツの背中を任されて、俺は何をすればいいのだろうか。
まあ、今回のような場合なら、滅ぼされないように四苦八苦するだけだな。
「行くぞ、主様」
「──“魂魄強化”、“並速思考”」
「スゥウウウ……ガァ──ッ!」
「──“緊急脱出”」
ソウが行ったのは竜族の定番である息吹。
ただし威力がデカすぎるため、そのまま撃てば核兵器以上の惨劇を生み出す。
ということで、俺は口から少しだけ息吹が出たら緊急脱出スキルを使い、自分たちの向きを傾けたうえでその場から転移する。
飛び出るのはほんの僅かなエネルギーのみとなり、あとは移動先から上空に向けて放たれるという、誤魔化し方であった。
移動したソウは。空へ向けて息吹を吹き切る……そして、何事もなく口を閉じる。
つまりは成功、見事俺は人々の平和を守ることができた──(ドォオオオオオンッ!)
「……なあなあ、ソウさんや」
「どうしたんじゃ、主様よ」
「お前、力は自分の方でも押さえておいてくれたんだろうな?」
「いや、主様に言われた通り一瞬で済ませるための火力にしておいたぞ」
つまり、何はどうあれ結果は変わらなかったというわけか……先ほど響いた天地を揺るがすような震動は、つまりほんの僅かな息吹が引き起こしたものということだ。
どんだけ凄いんだよ、コイツ。
創作物のチート系主人公とタメを張れる銀髪美女を眺め、ただただ呆れしか浮かばない俺なのだった。
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大きく息を吸い、全身を巡らせるようにして三つの身力を操作する。
礼装から送り込まれる竜族の力──竜丹は凄まじく、本来人族で扱えない。
俺は今回それを無理やり引きだし、使用した……その代償を支払った場合、俺の体は大幅な弱体化を受けてしまう。
なので、それを踏み倒すべく行動する。
集めた身力を今度は自身の心臓へ送ると、脈動と共に束ねていく。
それが本来人族が扱う『人丹』を生み、体中に浸透する。
こちらは比較的安全なもので……正直効果は薄いのだが、安定していると言えよう。
あとは人丹の量を竜丹よりも高め、それを以って礼装から送り返されてきたエネルギーの塊を押し返す。
代わりにそれは掌に集めて、外に放出……しようとしたのだが──
「主様、それを頂けないかのう?」
「まあ、お前の礼装から集めた力だから別にいいけど……なんで?」
「なぜと問われても……欲しているから、という理由ではダメかのう?」
「ん、それならいいぞ」
欲しいと言われて、俺にあげられるモノならば渡したい。
そう思わせるぐらいに、この世界で眷属たちと共にいる。
いろいろとやらかしてはいるが、ソウもまた眷属……別に拒む理由もない。
というわけで、さっそく実行する──単純に手を繋いでそこから流し込むだけだ。
「んっ……ぅっ……!」
「──“風力操作”」
なんだか変な声を出し始めたので、風を操作して俺とソウの間に壁を作る。
音漏れが無くなり、俺が認識するのはやけに淫靡な顔をしたソウだけ……アウトだな。
俺は目を閉じ、別の作業に集中する。
ちょうど発動した風力操作スキルを使い、周囲に風を当てていくだけの単純な作業。
脳裏には風を当てた場所が浮かび上がり、それが何なのかすら認識できる。
ただひたすらそんな作業を繰り返すと……生命体との接触を確認した。
「解除っと。ソウ、次に行くぞ」
「ほ、ほぉちぷれぇ……」
「…………はあ、仕方ないか」
またまた出番な風力操作さん。
ソウを包み込むように風を作り上げると、そのまま俺に移動に合わせて動かしておく。
燃費の悪いソウの礼装、そして竜丹とその相殺まで実行しているが……上位の身体系スキルで回復を行えば、帳尻が合うぐらいには戻せている。
「ソウ、そろそろ気は済んだか?」
「……ふぅ。主様の気は、未だに儂の体中を巡っておるがのう」
「そこじゃないだろう。次の相手、そんな状態で充分に戦えるのか?」
「それであったか。主様をここで感じているのじゃ、負けるはずがなかろう」
ここ、というのがどこなのか……は知る気にはならなかったので目を向けない。
代わりに視界に移すのは、遠くで発見してやっと目で捉えられるようになった者たち。
風を当てることで速度を読み取り、体の向きで行き先はなんとなく当てられた。
まもなく到着するお客様、目的はこの領域の何なのか……という点はどうでもいい。
今回の眷属は攻城を行なう者──つまりは襲撃者だ。
もし、その情報を外部に漏れすような外因があるのであれば、それは消して当然。
「どうやって倒すんだ?」
「儂と主様の愛に満ちたコンビネーションをするのもまたよいが──」
「そんな事実あったか?」
「うむ、合ったぞ。とはいえ、それでは先ほどまでとは変わらん。相手は死なぬ人形、正面から向かい合う必要などなかろう。主様、今しばらく儂を固定しておいてくれ」
言われるがままソウを支える……が、この先の展開がなんとなく分かってしまった。
その後始末……というか、処理ができるぐらいに被害に留めるべく準備を行う。
いかに祈念者が蘇える存在とはいえ、ソウの攻撃が綺麗に祈念者だけを穿てるわけではない……うん、つまりはそういうことだ。
「やるなら一瞬で済ませてくれ。俺はお前が撃ったらすぐに止めて、被害が出ないように抑え込むから」
「なるほどのう、それならば儂も安心して放つことができる。主様の世界で言うところの『背中は任せた』というところかのう?」
「いや、全然意味が違うからな」
単独でも世界を滅ぼせるヤツの背中を任されて、俺は何をすればいいのだろうか。
まあ、今回のような場合なら、滅ぼされないように四苦八苦するだけだな。
「行くぞ、主様」
「──“魂魄強化”、“並速思考”」
「スゥウウウ……ガァ──ッ!」
「──“緊急脱出”」
ソウが行ったのは竜族の定番である息吹。
ただし威力がデカすぎるため、そのまま撃てば核兵器以上の惨劇を生み出す。
ということで、俺は口から少しだけ息吹が出たら緊急脱出スキルを使い、自分たちの向きを傾けたうえでその場から転移する。
飛び出るのはほんの僅かなエネルギーのみとなり、あとは移動先から上空に向けて放たれるという、誤魔化し方であった。
移動したソウは。空へ向けて息吹を吹き切る……そして、何事もなく口を閉じる。
つまりは成功、見事俺は人々の平和を守ることができた──(ドォオオオオオンッ!)
「……なあなあ、ソウさんや」
「どうしたんじゃ、主様よ」
「お前、力は自分の方でも押さえておいてくれたんだろうな?」
「いや、主様に言われた通り一瞬で済ませるための火力にしておいたぞ」
つまり、何はどうあれ結果は変わらなかったというわけか……先ほど響いた天地を揺るがすような震動は、つまりほんの僅かな息吹が引き起こしたものということだ。
どんだけ凄いんだよ、コイツ。
創作物のチート系主人公とタメを張れる銀髪美女を眺め、ただただ呆れしか浮かばない俺なのだった。
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