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偽善者と攻城戦イベント 二十三月目
偽善者と攻城戦後篇 その01
しおりを挟む「──じゅっかいめのこうじょうせんがしゅうりょうしました。みなさん、おつかれさまでした。ふたたびすべてのばしょがせんゆうされました。こんどはシステムをゆうこうてきにりようできていますね」
「むいかめとなりましたので、ぜんちいきのなんいどをいちだんかいひきあげ、レアモンスターをしゅつげんさせます。しょうさいはそれぞれごかくにんください」
ちょうど俺の目の前で、リウが祈念者向けのアナウンスを行っている。
今は確認のしようがないが、難易度の引き上げとはまた厳しいことを。
「ふぅ……メルスおにいさまのりょういきはすでにさいだいちまでたっしていますので、とくにへんかはございませんよ?」
「あっ、やっぱりバレてる?」
「スペークさまいがいにはおつたえしていませんが。リオンさまのしんゆうであらせられるというスペークさま、あのおかたがこっそりさいくをなされているおかたですので」
「助かるよ。考えなしに動いているけど、本当はバレた時点で戦争ものな立場だし」
話を聞くと、リオンの情報偽装がかなり効果を発揮しているらしく、隠すのも簡単だと言っていたらしい……もともと分からないモノをもっと分かりづらくしただけとのこと。
「──君はいったい、いつまでここに居るつもりなのかな?」
「チナおねえさまは、メルスおにいさまといるのはおきらいですか?」
「ああ、ごめんだね。それに、きみたちはイベントをやっている真っ最中だろう? 他にやることがあるはずじゃないか」
「なんだ……心配してくれたのか。やっぱりお前ら姉妹っていいヤツばっかりだよな」
なななっ、と驚く姉とまあ、と喜ぶ妹。
一日ほど滞在しているのだが、チナがシンクとは別ベクトルでツンデレだということも把握している。
要は、シスコンが自分たち以外の者を警戒していると同じ……とリウに言われた。
この娘は本当に賢くて、話しているだけでもかなりのことを知っていると分かる。
──どうやら長女のレイよりも、一部のことに限ればよく知っているようだし。
「じゃあ、チナもそう言っているしそろそろ帰るよ。七日目はいろいろあるだろう?」
「あまりくわしいことはいえませんが、そのなにかはありますね。もちろん、これはいっぱんてきないけんでしかありませんが」
「それで充分。ありがとうな、リウ。それにチナも……今度はお前ら姉妹について、いろいろと聞かせてくれよ」
「そ、それぐらいなら……って、チナと呼ぶな君は!」
怒らせたかと思ったが、リウはニコニコとしているし問題ないんだろう。
……うーん、女心というのはまだまだ分からないことだらけだな。
◆ □ ◆ □ ◆
《GMハーレム、おめでとうございます》
「……なんのことやら。それより、先んじて受けていた報告通りなんだな?」
《もちろん。メルス様亡きその頃、わたしたち眷属は一丸となって最期を過ごした地を必死に防衛しましたよ》
「俺、死んでないんだがなー。まあいいや、それよりも今は急がないと」
うちの眷属の中には、よく死ぬ奴とかすでに死んでいる奴とかも居るので少々死生観が狂っているんだよな。
何よりこの世界、蘇生魔法があるし。
だがそれは非常に希少で、ゆえにクラーレの固有スキルが貴重なはずなんだけど。
「誰が配置についているんだ? 十回目が終わったってことは……召喚前だし、五人居るはずだろう?」
《いいえ、一人だけです。……あっ、説明不足でしたね。用事が重なった結果、一度も出ていない眷属の中で向かえる者が居らず……そのため、あのお方にご依頼しました》
「あのお方? アンがそういうヤツって……なるほど、そりゃあ頼もしい」
ちょうど“次元渡航”から帰ってきたところなので、さっそく合流する。
魔力反応を探って向かった先……そこにはたしかに一人、少女が立っていた。
赤と黒が交じり、炎のように揺らめく髪。
いつもは赤色が多いその比率も、今回は黒が多めとなっている。
「ふむ、帰ってきたようだね。この場合、おかえりと言うべきなのかな?」
「なら俺も、ただいまだ。ところで、どうしてカカが参加してくれたんだ?」
「カグたってのお願いでね。君にはあのトービスーイと出会わせてもらった、その恩がある。『降ろし』で力は抑えられているが、あの程度の魔物なら充分だからね」
カグは神子、もともとカカという邪神の転生体として用意された器だ。
なので本人が協力すれば、神がその身を借りて力を振るうことが可能になる。
本来は準備が非常に手間取るのだが、カカに限ればそういった問題はいっさいない。
何故なら二人の魂魄は双子のようなもの、元から共存しているのだから。
「とはいえ……カグの体にあまり負担は掛けたくない。君に一言言っておいてくれと頼まれたからこそ維持していたが、そろそろ眠ることにしよう」
「悪かったな、かなり遅れて」
「もともとカグの才なら、二、三日は問題はなかったけどね。それでも心配になるのが、親心というのもさ」
「兄心も似たようなものだよ」
そんな話で一笑いすると、彼女の髪色はいつものように赤の比率が高いモノになる。
そしてパチパチと瞬きをして、俺を視認すると……勢いよく抱き着くのだった。
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